皮膚炎と食物アレルギーの関係について

本日も、アレルギーについて。

食べ物のアレルギー物質は、
皮膚から影響すれば悪化し口(消化管)から影響すれば改善する
という内容です。

アトピー性皮膚炎は皮膚に炎症をおこす病気の中で最も多く、乳児期に多い疾患です。
乳児期にアトピー性皮膚炎に罹患すると、気管支喘息(2.14-3.2倍)アレルギー性鼻炎(2.3-2.63倍)食物アレルギー(6.18倍)のリスクが高くなることが報告されています1,2)

アレルギー素因のあるお子さんが、アレルギー疾患に次々と罹患することをアレルギーマーチといいます。
このアレルギー疾患の中で1番発症率が高いのがアトピー性皮膚炎といわれており、アレルギーの原因の起点になりやすいと考えられています。
日々の診療で、湿疹の相談で受診される方に食物アレルギーがあることはよくあります。
アレルギー疾患の家族歴がある方は、お子さんの皮膚を保護することが特に重要だということ認識してください。

今まで食物アレルギーは経口摂取(口からの摂取)により、口または腸の粘膜から免疫に作用し、いろいろなアレルギーが発症すると考えられていました。
実際に2012年の報告で、日本の食物アレルギーの有病率は乳児で約5-10%、幼児で約5%、学童期以降で1.5-3%であり乳幼児期に多いデータがあります。
発症の要因は、年齢が低いことにより消化管が未熟であるため、アレルギーがおこるものと考えられていたのでした。

そのため、妊娠中や授乳をしているお母さんにアレルギーになりそうな食べ物を除去することで、子どものアトピー性皮膚炎の発症を予防出来るかという研究がされました。しかし、予防は出来ないという結果でした。口からアレルギー物質を除去しても効果はなさそうだということがわかってきたのです3)

そんな中、イギリスのLack医師が提唱した二重抗原暴露仮説というものがこの概念を変化させました。この仮説は 皮膚から食べ物等が接触した場合はアレルギーの症状が悪化し経口摂取したものに関してはむしろ免疫寛容(アレルギーが改善、または予防される)を誘導するという概念です4)

イギリスでは新生児の入浴後にオイルを塗る習慣があり、ピーナッツオイルを配合したスキンケア製品を使用すると乳児期のピーナッツアレルギーの発症が8倍増加したという報告があります5)

日本国内でも、小麦の成分が入った「茶のしずく石けん」を使用し小麦アレルギーの症状がでたことも話題になりました6)

その他いろいろな論文からLack医師の仮説を支持する内容が報告されています。

アトピー性皮膚炎などで、皮膚に湿疹があり、そこにたまたま付着した卵やミルク、ナッツなどが皮膚からアレルギーとしての影響をうけ、体の免疫に作用することを経皮感作といいます。

これに対し、口から卵やミルク、ナッツを食べ、消化管からアレルギーとしての影響をうけ体の免疫に作用すること経口暴露といいます。口からの摂取はアレルギーによる症状がない量で摂取すると、アレルギーの改善に働くことがわかってきました。これを経口免疫寛容といいます。

そのため、経皮感作を減らし、経口免疫寛容をすすめていくというのが今のアレルギー疾患の流れです。

前回お話しした成育医療研究センターの研究で新生児期から保湿剤を使用することで、アトピー性皮膚炎の発症を予防することが実証されました。

次は皮膚を保護することでアトピー性皮膚炎の発症を予防し、その先にある気管支喘息、食物アレルギーを予防することが出来るのではないかという新しい仮説がたてられました。

そこで成育医療研究センターのPETIT sturdyという研究がはじまります。アトピー性皮膚炎のお子さんを積極的に治療し、そのうえで生後6か月から卵を食べ始め、卵アレルギーの発症が低下したかという研究です。 次回に詳しく説明します 。

写真は、先日娘の補助輪自転車デビューを公園でしてきた時に撮ったものです。
初めての自転車であるにも関わらず上手に乗れている娘の姿を見て、またひとつ感動しました。

子どもの成長を感じることが出来るのはとても幸せなことです。よい休日でした。

1) Tsakok T, et al. Does atopic dermatitis cause food allergy? A systematic reviw. J Allergy Clin Immunol 2016 ; 137 : 1071-8
2) Lowe AJ, et al. Age at onset and persistence of eczema are related to subsequent risk of asthma and hay fever from birth to 18 years of age. pediatr Allerg Immunol 2017 ; 28 : 384-90
3) Kramer MS, et al. Maternal dietary antigen avoidance during pregnancy or lactation, or both, for preventing or treating atopic disease in the child. Evid Base Child Health 2014 ; 9 : 447-83
4) Lach G. Epidermiologic risks for food allergy. J Allergy Clin Immunol 2008 ; 121 : 1331-6
5) du Toit G,et al. Early consumption of peanuts in infancy is associated with a low prevalence of peanut allergy. J Allergy Clin immunol 2008 ; 122 : 984-91
6) Fukutomi Y, et al. Rhinoconjunctival sensitization to hydrolyzed wheat protein in facial soap can induce wheat-dependent exercise-induced anaphylaxis. J Allergy Clin Immunol 2010 ; 127 : 531-3

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