健診でよく質問されるものに「頭を壁、床にぶつけるのですが大丈夫でしょうか」
というものがあります。あまりネットで調べてもよく出てきませんので、説明していきましょう。
この記事の目次
はじめに
豹変したように頭を上下、前後、左右に動かして床や壁、ベッドの柵などに打ちつ
けたり、反り返って後頭部をぶつけることもあります。
家族は「頭がおかしくなってしまったのではないか」と心配し相談に来られます。
この行動は叩頭(頭打ち)、ヘッドバンギングと表現されます。
その他、回頭(あたまを回す)、体揺らし(体ゆすり)なども含まれ、このような行動を「運動性習癖」と医学的には表現されます。
体調が悪い時(突発性発疹の児はけっこう頭を打ちつけている)、いわゆるイヤイヤ期(1歳から2歳)のお子さんは1度は自分の思い通りにいかなくて壁や床に頭をうちつけているのではないかと思います。表現を変えて健診でよく質問されます。
ヘッドバンギングについて
生後6ヵ月頃から始まり、遅くても4歳頃には治るといわれています。
持続時間は2-3分くらいが多く、長くても1時間以内です。
男児に多く、女児の3倍といわれています。
また、第1子よりもそれ以降の児に多いとも言われています。
1歳半ころまではよくある行動で、寝入りばなにもっとも多くみられます。
基本的には治療を要するほどの外傷は生じません。
なぜヘッドバンギングをするのか
大きく3つにわけられます。
1:気持ちを落ち着かせるため
(頭をぶつける、叩くことが心地よい音になりリラックスすると言われています。)
2:欲求不満や癇癪を和らげるため
(言葉で表現できないため体で表現している)
3:親に注意を払ってもらうため
(親に注意してもらいたいからわざとやっている、親の反応を見ている)
であると言われています。
私はほとんどが2番である印象があります。
どのように対応するか
ヘッドバンギングは自分で度を超えないように調整しています。
頭を打ちつけすぎて青あざになることはありますが、脳出血や骨折などの重症な外傷に及ぶことはありません。
そのため親としてはやめさせたいところですが、欲求不満のためにヘッドバンギングをおこなっているのであるならば、叱ることは逆効果です。
やめさせようと干渉しすぎず、親がやさしく声をかけて遊び相手になることで自然と消失するよう促します。
少し親が冷静になり、お子さんを観察してみてください。(これが難しいんですけどね。。。)
なぜ今頭を打ちつけているのか、その前になにがあったかを必ず振り返ってみてください。
これはイヤイヤ期のお子さんと接する時期全般に言えることです。
特に言葉の発達が少し遅いお子さんは顕著だと思います。
自分の言いたいこと、思っていることが伝わらずギャン泣きしたり、寝そべって暴れてみたり、頭をうちつけてみたり、、、。
時期がくればおさまります。
お子さんの思っていることを親が受け取れる余裕を持ちたいですね。
そして環境調整がとても重要です。頭をぶつける場所をタオル、スポンジなどで覆うことで頭への衝撃をやわらげます。
1歳以下の乳児の場合は、窒息や乳幼児突然死症候群の原因になるような柔らかい毛布やマットは必ず避けるようにしてください。またベビーベットからの転落も注意が必要です。ベット柵がきちんと上がっているか、ネジが緩んでいないかを再確認しておきましょう。
ヘッドバンギングでの自傷行為があまりにも激しい場合
ヘッドバンギングをするお子さんの中には少数ですが発達障害や自閉症のお子さんが含まれることがあります。
注意する点としては、激しい頭打ちのため頭蓋内出血や網膜剥離などの重度の外傷にいたる場合、そして4歳を超えても全く改善がない場合です。
これらの場合は小児神経専門医の受診が推奨されます。
ただし、ヘッドバンギングのみで発達障害や自閉症の診断をすることは絶対にありません。
基本的には見守ってあげることがとても大切であり、成長とともに消失していくものであると考えましょう。
以上になります。
写真は息子が公園のオブジェに頭をうつちつけているところです笑
この写真は親の気をひくためにやるパターンですね(本人は少しにやにやしている)
イヤイヤ期の付き合い方は、本人の不満を「笑い」に変えて意識を少しそらすのがいいのかなと個人的には思っています。
1歳5ヶ月で頭打ちをします!愚図った時(他児とのトラブル等)や構ってほしいときに多く見られます。平均でどのくらいの期間で頭打ちは消失しますか?
海様
コメントありがとうございます。
こればかりはヘッドバンキングの研究や論文がたくさんあるわけではありませんので、平均としてどのくらいとお話しするのは難しいです。
ブログ記事に記載したとおり、遅くとも4歳くらいまでは続きますので気長にお待ちいただくことになります。
ちなみにですが、息子は4歳くらいまで続きました。現在5歳(もうすぐ6歳)ですが、あまりにも自分の思い通りに行かないときは時々自分のことを叩くことはあります。
ですが、やはり骨折するほど叩くということはありません。
参考になれば幸いです。
今後ともよろしくお願い致します。
能登
コメント失礼いたします。
とても参考になりました!
生後9ヶ月男児ですが、生後7ヶ月ごろから
寝る前にうつ伏せで頭ゴンゴン→寝入るを繰り返すようになりました。
そのため眠りが浅くなってもゴンゴンします。
これはリラックスするためでしょうか?
仰向けにすると寝られなさそうなのでうつ伏せのままゴンゴンしてるのを見守ってますが、、
はととん様
コメントありがとうございます。
実際にその様子をみていないためはっきりとしたことはお伝えすることは出来ませんが、親御さんが行うトントンと同じ効果で、お子さんが頭をゴンゴンすることでリラックスしたり安心することが予想されます。
ただ、小児科医の立場上、うつ伏せ寝は推奨されませんのでご注意ください。(我が子たちもうつぶせ寝でしたので現実的にあおむけにして眠らせるのは難しいことは重々承知しています)
そのため、窒息しないよう寝具を含めた環境調整は十分注意をお願い致します。
引き続きよろしくお願いいたします。
能登
参考になりました。
現在4歳8ヶ月の娘、1歳8ヶ月の息子がおり、ここ半年くらい息子のママに対する独占欲が尋常じゃなく、娘が近づいただけで頭を振りかぶって壁に頭突きします。その他癇癪でも頭突きします。今日は児童館で床にかなり激しく打ちつけて初めて血が滲んでいました。嫌な事があっても誰も頭突きする子なんかいなくて、全員ドン引きしていて、即帰って泣きました。とにかく息子が手が掛かり娘と関われず娘は娘でストレス溜まっているし、もう限界です
わたなべ様
コメントありがとうございました。
まず、精神的に大丈夫でしょうか。
当院は育児相談もおこなっていますので、自宅近くであれば対面診療、遠方であればオンラインで対応します。
お話をするだけでも気が楽になるかもしれません。
頼ってくださいね。
引き続きよろしくお願い致します。
能登
コメント失礼します。
現在小学校3年生になる息子は、一歳頃から2歳半くらいまで、癇癪を起こしたり、私の注意を引くために1日に何度もおでこを床に(時にはアスファルトに)ぶつけていました。私がすぐ相手にしないとどんどんエスカレートしていき、おでこから血が滲むこともありました。出来るだけ止めるようにしていましたが、やるべきことが進まず、半ば諦めて放置することもありました。
息子は早生まれということもあり、何事もゆっくりですし、注意散漫なところがあって、学校のテストでも読み間違いなどのミスが多いのが気になっています。夫から、幼少の頃の頭ゴンゴンが発育に影響しているのでは、と言われて強いショックと責任を感じています。頭ゴンゴンと発達障害には関係があるのでしょうか。アドバイスをいただけると幸いです。
ちゆ様
コメントありがとうございます。
直接診察をしていませんからどの程度なのかを判断することは難しいです。
ただ、ブログ記事にもありますが、骨折をする、網膜剥離をおこす等の強い衝撃をおこすレベルでなければ関係ないと考えてよいと考えます。
以下私の考えを少し記載します。
注意散漫な点については私もそうであり、息子も同じです。
恥ずかしながら、スーパーで妻にお願いされた物の購入も、注意散漫で必ず1つは私は忘れてしまいます。
全員がそうとは言いませんが、父と息子の特性がリンクすることをよく経験します。(あくまで私の個人的な意見です)
ご両親が普通に社会生活が送れているのであれば、お子さんの注意散漫はあまり気にしなくてよいのではないと考えます。
そのため、私の場合、スーパーの購入時は非常に注意が散漫ですが、医療ではそのようなことなく仕事が出来ています。
次ですが、我が息子も癇癪はとても激しかったです。あきらめたくなる気持ちもよくわかります。(直接受診されれば内容をお話しますよ笑)
そのため、母の管理が原因で発達障害になるということはないと私は考えています。
そもそも、テストで読み間違えをすることや、ミスをすることが悪いこととは私は思いません。
我が家においては、むしろミスをすることを歓迎します。
ミスをすることを恐れトライしないほうが我が家ではよくない行動であること、そしてなんの振り返りもせず、何回も同じミスをすることがよくないことであると教えています。
あくまで、この上記の例は我が家の育児方針です。
夫婦でお子さんに言うことが変わるのは問題だと思いますので、ご家庭毎の育児方針をご両親がしっかり共有されているのかは確認すべきポイントです。
「育児方針をよく議論された上で、ご両親が同じ方向を向いて、お子さんのサポートしてあげること」が重要で、乳児健診等で同じような質問を受けた際はそのようにお答えさせていただいています。(偉そうなこと書いてますが、私もうまくできていません。お互い頑張りましょう!)
また、過去を振り返ってショックを受けたり責任を感じたりすることもおすすめしません。
今が1番大事であり、お子さんをよく観察し、お子さんが考えていることを共有し、時には担任の先生を含めて介入し、時には逆に少し離れて、でもしっかり見守ってあげてほしいなと思います。
育児はその年齢毎の悩みがあり、とても大変ですが、とても楽しいです。
常にポジティブに、家族が幸せになるためのサポートができるよう我々小児科医も頑張ります!
私の出来る限りになってしまいますが、お役にたてることがあればぜひ相談させてくださいね。
引き続きよろしくお願い致します。
能登
能登先生
早速のご回答誠にありがとうございます。
先生からアドバイスをいただけて、心が落ち着きました。
息子は、明らかに何か発達障害がある、という感じではないと私は思っています。ただ、興味がある事以外には、理解したり記憶の定着にとても時間がかかるように感じています。学校の宿題以外にドリルなどにも一緒に取り組んでいるのに、その努力が成績に伴っていないことを歯痒く感じてしまいます。私たちのやり方に問題があるのかもしれません。
両親が育児方針を共有することが大切なんですね。私自身、心の根底に育児の責任は母親にあると思っているところがあり、思うように進まないと夫に負い目を感じてしまいます。
今が1番大事、本当にそうですね。息子は私が失敗した時などに励ましの言葉をかけてくれる心の優しい子です。また、好きなことには驚くほどの集中力と記憶力を発揮する面もあります。そういった良い面を大切にして、学校の先生等のお力も借りながら、息子のサポートを今後もしていきたいと思います。