現在虫刺されの相談をかなりうけています。
「刺されたところがかなり赤くなり腫れています」
「朝起きたら子どもの顔が腫れています、大丈夫でしょうか」
というような相談が多いです。
虫刺されというとかなり広範囲は知識(ハチ、ムカデ、毛虫、ダニ、ノミ、頭ジラミ等)が必要なのですが、今回はカ(蚊)に絞って説明していきます。
この記事の目次
虫刺されの一般的な知識の確認
まずは一般的な説明から。
小児でもっともよくみられるのはカによる虫刺されになります。
屋内では主にアカイエカ,屋外では主にヒトスジシマカによる被害が多いことがわかっています。
皮疹は顔や手足などの服から出ている部分にみられます。逆にいうと服で覆われている箇所は少ない傾向があります。
図はカに刺された手になります1)。
症状はカに刺される頻度や体質によって変わりますが、一般的には小児では大きな紅斑(赤い発疹)や水疱(みずぶくれ)を生じやすく,時には強い腫脹(はれ)を伴うこともあります。そして当たり前ですが、虫に刺された箇所があります。
カが血を吸う原理
カが血を吸う原理を軽く確認しておきましょう。
カが血を吸うのは、産卵のためにタンパク質を必要とするからになります。
そのため、血を吸いに来るのはすべてメスで、オスが血を吸うことはありません。
カが血を吸う際に皮膚に刺さる針は合計で6本です。
そのうち2本には、小さな刃がついており、これをノコギリのように使って肌を切り開きます。
別の2本は、肌を切り開いた状態で体を支える役割になります。
本丸の太い針で毛細血管から血を吸います。
最後の1本の針は吸血の補助のために、唾液を流し込みます。
この唾液は血液が固まりにくくする成分が含まれておりスムースに血が吸えるということになります。
そして肌を切り開くときの痛みで気付かれないように、麻酔成分が含まれています。
この唾液がアレルギー反応を引き起こすため、蚊に刺されると症状がでるという原理になります。
虫刺されのアレルギー症状について
虫刺されが原因で起きる皮膚炎は、先ほど説明したカが血を吸う際に皮膚に注入する唾液に対するアレルギー反応によるものと、実際に皮膚を刺されたことや、接触したことによる刺激症状の2つがあります。
刺激症状としては,刺咬や接触の直後に生じる痛みが特徴的で、発赤や腫脹を伴います。
アレルギー症状としては刺されたの直後から痒み、膨疹(じんま疹)、紅斑(赤い発疹)がみられます。
これは即時型反応といい、刺された後1-2 時間でおさまります。
しかし、刺された後1~2 日後に紅斑や水疱(水ぶくれ)、腫脹などを生じる遅延型反応があります。
翌朝お子さんの眼がすごく腫れてしまったといって受診される方が多いのがこのタイプになります。
この症状はアレルギーの遅延型反応だったのです。
このようなアレルギー反応は、虫刺されの頻度や年齢、体質によってかなり個人差があります。ステージ分けされていますので紹介します2)。
ステージ1:カに初めて刺されたときは,唾液に対してのアレルギー反応が成立していないため無反応となります。
ステージ2:何度か刺されると遅延型反応が出現するようになってきます。
ステージ3:何度もカに刺されるうちに即時型反応が出現するようになります。
ステージ4:さらに刺され続けると遅延型反応は弱くなり即時型反応のみとなります。
ステージ5:最終的にはカに刺されても無反応となります。
小児の場合はステージ2-3を呈することが多いといわれています。
治療法について
治療の基本はstrongレベルのステロイドの軟膏です。
(ステロイドの説明も今後しないといけませんね。。。)
strongレベルのステロイド、つまりリンデロン軟膏になります。(同じものではボアラ、メサデルム、フルコートなど)
顔であればmildレベルのステロイドでも効果がある場合があります。(リドメックス、ロコイド、キンダベート、アルメタなど)
先生によって軟膏の種類や塗布の使用方法が異なるとは思いますが、大切なのは刺された初期にしっかりと炎症を抑えることです。
先生によっては、刺されてすぐであれば最初の1時間に何度も軟膏を塗布するよう指導したり、少し時間がたってからであれば1日3-4回塗布するように指導する先生もいます。
一般には、1日数回塗布となっていますので朝と晩の2回に加え、日中に軟膏がとれてしまったら再度塗布してあげるのでよいと思います。アレルギー症状が強い場合は抗アレルギー薬の内服を併用します。
予防について
予防法は基本的な事の確認となりますが、肌の露出を避けること。結局これが1番大事です。
そして、虫除け剤(ディート、イカリジン、天然のハーブ剤)や携帯式虫除け剤を活用することになります。
ディートとかイカリジンってなんだ?ってなると思います。
アース、フマキラー、キンチョー等の企業が虫除けとして商品が販売されていますが、昔ながらのスプレータイプやミストタイプはディートになります。
イカリジンは2015年から販売されているため少し新しいデザインであればこちらです。天使のスキンベープ、プレシャワーなどがあります。詳細はそれぞれの商品の成分表を確認ください。
ディートは 6 か月未満の乳児には使用してはいけません。6 か月以上、2 歳未満では 1 日 1 回の使用にとどめる必要があります。
イカリジンはその制限はありません。
天然のハーブを使用したものは皮膚が弱い方や新生児から使用できるのが特徴ですが、ディート、イカリジンより効能は下がるといわれています。
個人的にはハッカ油と天使のスキンベープが効いている印象があります。
まとめ
カによる虫刺されについて説明しました。
氷川台は石神井川があるためか、虫刺されによるアレルギー反応が強いお子さんが多い印象があります。
やはり予防が大事で、可能な限りまず刺されない対策をとりたいです。刺されてしまっても、早い段階でステロイドの軟膏を使用し炎症を抑えることが大事です。
虫刺されにより掻くことで二次的にとびひ(伝染性膿痂疹)を併発するお子さんも多いです。
また鑑別疾患として、手足口病や水痘(みずぼうそう)、帯状疱疹なども考えます。
お困りの際はスマホで現時点の写真を撮影しておき受診を検討してください。
写真は伊豆アニマルキングダムでキリンにエサをあげているところです。
近くで見るとキリンの目がつぶらでとてもかわいいです。
早く連れて行ってあげたいものです。
1)夏秋 優:小児内科 (0385-6305)51巻10号 Page1477-1480(2019.10)
2)大滝倫子:蚊刺症の症状と治療.節足動物と皮膚疾患(加納六郎編),東海大学出版会,東京,1999,p.23-31.
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