ヨーロッパ小児科学会に短頭症の研究がアクセプトされました!

2026年9月にギリシャ・アテネで開催される国際学会「European Academy of Paediatric Societies (EAPS 2026)」へ投稿した演題がアクセプトされました!

今回もポスター発表ではありますが、EAPSはアメリカ小児科学会に次ぐ2番目に大きな学会なのでとても嬉しいです。

発表のテーマは「純粋短頭症に対するヘルメット治療の効果と、新しい評価指標「FOVR」の提案について」です。
短頭症の治療効果に関する論文はまだ出していませんでしたので、短頭症でお困りの親御さんへ向けてやっとご報告出来るというところまできました。

演題の内容を説明していきましょう。

そもそも「短頭症」とは?

短頭症(通称:絶壁頭)とは、赤ちゃんの頭が前後に短く、左右に広い形になった状態です。

上記の画像はベビーバンドのサイト1)からの引用です。わかりやすく説明されています。

「CI(頭蓋指数)」だけで大丈夫?――治療効果の評価に疑問

ヘルメット治療の効果を測る際、これまで最も広く使われてきた指標がCI(頭蓋指数:Cephalic Index)です。

CIは「頭の横幅 ÷ 頭の前後幅 × 100(%)」で計算され、日本では94〜100%が軽症、101%以上が重症とされています。


詳細は下記のブログ記事内の「頭蓋の対角線の差でみるCAとCVAI」の部分で詳細に説明していますで確認ください。

しかし我々は、ヘルメット治療を行っていく上でこのような疑問を感じていました。

「CIの数値はあまり変わっていないのに、頭のかたちが明らかによくなっている赤ちゃんがいる。逆もある。CIだけで本当に治療効果を判断してよいのだろうか?」

実はCIは、頭を10層に分けたときの下から3番目の断面だけを測定しています。

その1断面だけでは、頭全体のかたちの変化を正確に捉えられない可能性があるわけです。

新しい指標「FOVR」を考案しました

そこで私たちが新たに考案したのがFOVR(Frontal-Occipital Volume Ratio:前頭後頭体積比)です。

計算式はシンプルです:

FOVR = 前頭部の体積(左右合計) ÷ 後頭部の体積(左右合計)

短頭症では後頭部が扁平になり、その体積分が前方(前頭部)に押し出される形になります。
つまり前頭部が大きくなるほどFOVRの値が上がり、短頭症が重度であることを示します。CIと同じ方向で数値が動くため、臨床現場でも直感的に理解しやすい指標です。

3Dスキャナー(VECTRA Handy H2)で頭全体を立体的に計測することで、CIでは捉えきれない頭のかたちの変化を「体積」という形で評価できます。
CIでは3番目だけの評価でしたが、体積評価のFOVRでは2-8番目までの体積で評価しますからより詳細に頭全体を評価することが可能です。

今回題名に純粋短頭症と記載していますが、斜頭症が合併すると数値が変化します。
そのため、斜頭症が正常-軽症の児のみを対象としました。

研究の概要

対象: 2025年4月〜2026年1月にヘルメット治療(ベビーバンド3)を卒業した純粋短頭症の赤ちゃん111名 (軽症84名・重症27名、10施設共同研究、倫理委員会承認番号:RK-260512-7)

方法: 治療開始前・終了後にCIとFOVRをそれぞれ計測し、治療効果を比較しました。

研究でわかったこと 結果

① ヘルメット治療の効果は明確でした

111例全体で、CIもFOVRもともに治療前後で有意に改善しました

指標治療前治療後
CI98.8±3.0%93.9±2.1%
FOVR1.061±0.1580.983±0.145

軽症・重症ともに有意な改善が得られました。抄録の表に記載していますが、重症例ではより大きな改善幅が確認されています。

② CIとFOVRは「別のことを測っている」

CIとFOVRの変化量の相関を調べると、r=0.31(弱い相関)という結果でした。

上の図でみると分布がバラバラなのがわかります。

これは、CIが改善していてもFOVRはあまり改善していない症例や、その逆の症例が存在することを意味します。
2つの指標は頭のかたちの異なる側面を評価しているのです。

③ CIではわからなかった改善をFOVRが捉えた症例がありました

CIの改善がほとんど見られなかった7症例でFOVRを確認したところ、明らかな改善が認められました。さらにその症例で頭の複数の断面(3番目より上の層)のCIも調べると、上の層ではしっかり改善していることが確認されました。

つまり、従来のCI(下から3番目の断面)だけでは見逃していた改善が、頭の上の部分では起きていたことがこの7症例では明らかになりました。

この研究が伝えたいこと

ヘルメット治療は確かに効果がある治療法です。しかし、その効果を正しく評価するためには、CIだけでなくFOVRや多断面評価を組み合わせることが重要だと考えています。

特に「CIの数値はあまり変わっていないけれど、見た目はよくなっている」と感じているご家族の感覚は、決して気のせいではありません。
頭の上の部分でしっかりと改善が起きている可能性が高いです。
その改善度合いをFOVRを併用することでより詳細に評価できると考えています。

おわりに

今回の研究は、日本大学医学部附属板橋病院をはじめとする10施設の先生方との共同研究です。多くの患者さんとご家族、そして各施設の先生方のご協力のおかげで実現しました。心より感謝申し上げます。

短頭症でお困りの方でベビーバンドの治療効果指標が今までありませんでしたので、短頭症のお子さんも安心して治療を検討することができるデータをまずは出せたかなと思っています。

国際学会での発表を経て、論文としてまとめる予定です。
学会発表が終わりましたら発表の様子や学会会場、スライド等もブログで共有できたらよいなと思っています。我々の研究で日本で頭の形で悩まれている親御さんへ少しでもお役に立てるよう頑張っていきたいと思っています。

最後に抄録の原本を添付して終了とします。
引き続きよろしくお願い致します。

1) https://www.babyband.jp/deform

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ABOUT US
能登 孝昇
2023年8月まで氷川台のと小児科クリニック院長を務めました。 2024年4月から赤塚にてサンスカイのと小児科クリニックを開業しました。 今後もこどもに関しての情報と、私の今後について発信していけたらと思います。