ヘルメット療法終了後の頭の形のリバウンドについて

このブログ記事は斜頭症で悩まれている方の補足情報記事になりますので専門用語が説明なしに記載されます。
頭の形でお悩みの方は下記ブログ記事で最初から丁寧に説明していますので確認いただければ幸いです。

この論文1)は私の上司の日大板橋病院 小児科 加藤先生が論文を投稿されアクセプトされた論文の紹介です。2025年の1月にアクセプトされていましたがこの記事もブログの更新が出来ずにいました。この英語論文の内容を日本語で要点をまとめていきたいと思います。

論文の本サイトを下記に添付しておきますので詳細を確認したい方は下記サイトから確認お願いします。

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11765566

さていつものように結論から。

ヘルメット終了後の頭の形のリバウンドは最小限の悪化にとどまる。
リバウンドの数値としてはCVAI約0.3%悪化する。

になります。

CVAIが約0.3%の悪化にとどまることがわかりました。「ヘルメットが終了した後、極度にリバウンドを心配する必要はないよ」というのがこの論文の親御様へのメッセージとなります。

論文の内容の説明をしていきましょう。

目的

ヘルメット療法が終了した後でも頭蓋骨の形状が変化する可能性がありますが、ヘルメット療法後に頭蓋骨の形状がどのように変化するかを調べた研究はほとんどありません。
そのため、乳児期にヘルメット療法をおこなった中等度から重度の斜頭症の児を対象とし、ヘルメット療法終了時から1歳までの頭蓋形態の自然経過を明らかにすることを目的としました。

今回の研究の対象となったお子さんは32人でした。

2022年12月から2023年7月までの間に日本大学板橋病院を受診し、ヘルメット療法(ベビーバンド®)を開始した中等度から重度の斜頭症の児を対象としています。
研究期間中に計103名の乳児が日大板橋病院でヘルメット療法を開始しました。
1歳時点で再診しフォローされたのは32名でした。

ヘルメット療法の開始時、終了時、1歳時点でCVAIの推移と改善度を評価した。

結果です。下記の表をご覧ください。

1番左の数値がヘルメット開始時です。月齢の中央値は4ヶ月(範囲:2~7ヶ月)、CVAIの平均値は10.5 ± 2.2%でした。

真ん中がヘルメット終了時です。月齢の中央値は9ヶ月(範囲:5~11ヶ月)、CVAIの平均値は4.2 ± 1.8%でした。

右の数値が1歳時点です。CVAIの平均値は4.5 ± 1.6%でした。

ヘルメット療法の有効性を反映した開始時から終了時でのCVAIの変化は6.3 ± 2.3%でした。(前回の論文でも示されていますが、やはりヘルメットの効果はありますね)

ヘルメット終了時から1歳までのCVAIの変化率は0.3 ± 0.8%であった。
(ヘルメット終了後、V字で悪化するということはみられなかったことがわかりますね!)

結論

ヘルメット療法終了後からの頭蓋変形のリバウンドはわずかであった。
そのため、この結果はヘルメット療法終了後の親の不安を軽減できる可能性がある。
しかし、斜頭症は長時間同じ姿勢で横たわることによって引き起こされるため、ヘルメット療法終了後も乳児の運動を促し続けることは重要である。

という内容で論文が終了しています。

この研究をうけてサンスカイクリニックで出来ることを考える

大学病院に3Dスキャンに32人も再診していただいており被験者の方に感謝しかありません。
大学病院を受診するのは簡単なことではありません。ご協力本当にありがとうございました。

この論文はフォローアップが1歳で終了しています。大学病院では理由もなく受診するのは1歳が限界だと思います。
そこで当院のようなクリニックが長期間のフォローアップを担当するべきだと考えます。

つまりクリニックは時間の融通を含め小回りがきくこと、また予防接種等で受診する機会が多いのが最大の特徴です。
ヘルメット開始時、ヘルメット療法終了時、3歳、5歳時点で3Dスキャンを撮影しどのような頭蓋形状となるのかを多くの症例でフォローアップしたいと思っています。

そしてこの研究はコントロール群、つまりヘルメット療法をしていない児がふくまれていません。
ヘルメット療法を検討したが、結果しなかったお子さん達の協力を得ることが出来れば、ヘルメット療法をしなかった児の頭蓋形状が最終的にどうなったのかも明らかになります。

ヘルメットをしていない児が将来的にどうなるのか、ヘルメットをした児がリバウンドせずに最終的に成長出来ているかをきちんと明らかにすること、この研究がサンスカイにおける私の大きな仕事の1つだと思っています。

この研究は少なくとも5年はかかると思いますが、成し遂げたい目標です。
健康に気をつけて頑張りたいと思います。

1) Kato R, Nagano N, Sasano M, Sumi K, Morioka I. Natural Progression of Cranial Shape Following Helmet Therapy for Deformational Plagiocephaly. J Clin Med. 2025 Jan 9;14(2):357. doi: 10.3390/jcm14020357. PMID: 39860363; PMCID: PMC11765566.

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能登 孝昇
2023年8月まで氷川台のと小児科クリニック院長を務めました。 2024年4月から赤塚にてサンスカイのと小児科クリニックを開業しました。 今後もこどもに関しての情報と、私の今後について発信していけたらと思います。