のとクリ発の斜頭症の論文 日本語解説 

久しぶりの投稿で申し訳ありません。約6ヵ月ぶりの投稿でしょうか。
その間、斜頭症の論文に全精力をかけておりました。
そして、先日やっとアクセプトされました!
正直に嬉しいです!。
そして1本論文が通ってホッとしています。(研究は論文にしないと意味がないのです。。。)

さっそく日本語で解説していきたいと思いますが、残念なことに実際の図や表などは著作権の問題からまだこのブログにあげられません
下記サイトから論文をダウンロードしていただき、この記事と照らし合わせて確認いただけると幸いです。PDFが無料でダウンロード可能です。(のと小児科クリニックが英語で書かれています笑)

https://www.mdpi.com/2077-0383/10/16/3531

スキャンにご協力いただいた皆様に本当に感謝です。ありがとうございました。
引き続きよろしくお願いいたします。

さて、今回の論文で新しくわかったことは2つです。

・Cranial asymmetry(CA)が12mm以上である重症斜頭症は自然経過で約7割は2ヵ月経過しても改善しない。

・CAが12mm以上の重症斜頭症はヘルメット療法をした場合、自然経過よりも2ヵ月でCA値が約3倍改善した。

という内容になります。

つまり斜頭症は自然に改善すると言われているが、重度の斜頭症はなかなか自然に改善しない、ヘルメット治療でより改善する

逆に言うとこれだけの内容なので、時間のない人は軽く読み飛ばしてください。
既に証明されていそうな内容ですがまだ証明されておらず、この内容を系統だてて報告するのはなかなか大変でした。
CA等の斜頭症についての基本情報は、以前に投稿した記事を参照ください。

論文の流れにそって説明していきます。文字ばっかりですみません。長くなりますよ~

イントロダクション はじめに

斜頭症の有病率は年齢に依存していることがわかっています。
生後6週間、生後4、8、12、24ヵ月の時点でそれぞれ16.0%、19.7%、9.2%、6.8%、3.3%です1)
(このデータから斜頭症は自然に改善するというのが小児科医、産婦人科医が説明する根拠です)
しかしこのデータは重症度別での有病率のデータではありません。また日本人の有病率を調査したものもでもありません。

日本では乳幼児を仰向けに寝かせる習慣があるため斜頭症は一般的に多く見られ、小児科医や産婦人科医は乳児の頭の形が自然に改善されると指導されてきた歴史があります。
そのため両親は、生後3〜4ヶ月または6〜7ヶ月の健診で重度の斜頭症が存在しても、経過観察するように指示されてきましたが、実際生後9〜10ヶ月、1歳半の健診でも多くの斜頭症の乳児を我々は確認してきました。

そのため、CAが12mm以上の重度の斜頭症の多くは、自然には改善しないのではないかという仮説を立てました。(本研究ではCAが12mm以上のものを “重度 “と定義しました)
この仮説を解明することが研究の目的の1つ目です

斜頭症の治療の1つにヘルメット療法があります。
世界ではたくさんの報告がされ、ヘルメット療法は4-8か月での治療開始が推奨されていますが、日本での報告はまだ2つであり、日本における斜頭症のエビデンスが乏しいという現実があります2,3)。(論文の内容はヘルメット療法の効果を検証したものです。)
そしてこの2つの論文は自然経過とヘルメット療法を比較した研究ではありません。
斜頭症の重症度と月齢をあわせた、ヘルメット療法と自然経過を比較した論文も世界的には存在していません。

そのため、斜頭症の重症度と月齢をあわせたヘルメット療法と自然経過を比較し、どの程度ヘルメット療法が効果があるかを解明することが、研究の目的の2つ目になります。

方法 研究1

論文中のFigure 1の説明です。
氷川台のと小児科クリニック、日大板橋病院、春日部医療センターの3病院を受診し、3Dスキャンを2回おこない、1回目のスキャンでCAが12mm以上の100人の内、自然経過観察を選択した56人を対象としました。56人の内2回目のスキャンでCAが12mm以上であった児は37人(No change 群)、CAが12mm以下となった児は19人(Improved 群)であり、それぞれを比較検討しています。

1回目と2回目のCA値の差をCA改善値として表記しています。

方法 研究2

論文中Figure2の説明です。同様にCAが12mm以上の児100人の内、生後4-8か月の自然経過観察を選択した24人と、生後4-8か月のヘルメット療法を選択した33人を比較検討しました。

CAが12mm以下になった場合(中等症以下になったことを意味します)改善したと定義しました。

3Dスキャンの方法

3Dスキャンの方法が記載されています。X軸、Y軸、Z軸の決定方法や頭蓋の評価平面の決定についてです。統計方法も論文内で細かく記載しています。興味ある方はぜひ。

結果 研究1

論文内Table 1の内容になります。

上から、出生体重、初産、性別、出生週数、初回スキャン月齢、2回目スキャン月齢、スキャン間隔、初回CA、2回目CA、CA改善値、初回CVAI、2回目CVAI、CVAI改善値、初回頭囲、2回目頭囲、頭囲差、分娩方法(経膣分娩、帝王切開、吸引分娩、鉗子分娩)、栄養(母乳、人工乳、混合)と記載されています。

CA12mm以上の月齢の中央値が生後3か月の児が2回目のスキャンを2ヵ月後にした時、56人中37人(66%)が重症のままであり、19人(34%)しか12mm以下にならなかった
No change 群は初回CAが15.6mmでありImproved 群は初回CAが13.5mmだったため、初回CAが高いほど改善しなかったことがわかりました。

P値というのはNo change 群とImproved 群に差があったかどうかとを示していてます。P値<0.05で差があるよという意味です。つまり、2回目のCA、CVAI、CA改善値、CVAI改善値は2つの群で差はあったが、それ以外は同じであったことを示しています。

上記内容をグラフにしたものがこのfigure 5になります。縦軸がCA、横軸は初回スキャンと2回目スキャンになります。
56人中19人(中等症14人軽症5人)が改善しました。
このグラフを見ると、最初のCAよりさらに悪化している児がno change群で多いこともわかります。

結果 研究2

Table 2と3の説明です。

Table2は、自然経過群の月齢の中央値は生後4か月、スキャン間隔は2ヵ月、ヘルメット群は月齢の中央値が生後4か月、スキャン間隔は2ヵ月(月齢をあわせたので同じになっています)で評価しました。各々の数値がどのように変化したのかを示しています。
性別のみ男子が自然経過群で多かったのですが、それ以外の出生体重や妊娠週数、栄養等を含め2つ群に差はありませんでした。

自然経過群は初回CAは14.6mm、2ヵ月後にCAが-1.6mm低下しました。ヘルメット群は初回CAが15mm、2ヵ月後にCAが-4.6mm低下しました。

ヘルメット療法は自然経過群と比較しCAが2ヵ月で約3倍改善したことがわかりました。

そして、頭囲(head circumference)は自然経過群とヘルメット群で差はありませんでした。そのため、ヘルメットをしたことで頭の成長が阻害されたということはありません

次にFigure 6の説明です。研究1と同様に縦軸がCA、横軸が初回スキャン、2回目スキャンになります。
自然経過群24人中、CAが12mm以下になったのは7人29%、中等症5人、軽症2人
ヘルメット群33人中、CAが12mmになったのは19人58%、中等症7人、軽症12人でした。
短期間でよりヘルメット群で改善していることがわかります。

この研究の制限

この研究は1回目と2回目のスキャン間隔が2ヵ月という短期間での評価です。
ヘルメット開始して2ヵ月でCAが約3倍自然経過と比較して改善することがわかったこと、CAが12mm以上の重症斜頭症は2ヵ月後も約7割は自然に改善しないということが科学的に証明されました。
しかし短期間の評価だけでなく、長期間で斜頭症がどのように変化するかの評価も必要です。
そのため、「1歳半を最終スキャン評価とし、CAがどのように変化するのかを解明する」というのが次の研究テーマとなります。(また論文作成しますのでお待ちください。)

また、自然経過群の理学療法(タミータイムをしたり、体位変換をしたりなど)の度合いが評価されていません。
ものすごい理学療法をした人はよくなったかもしれませんし、全く理学療法していないから悪化したのかもしれません。その評価も今後していく必要があり今後の研究課題ですという内容が記載されています。

まとめ

文字だらけですみません。そして書きすぎた感じもしますが、少しでも伝わっていれば幸いです。

この論文でCAが15.6mm以上だと、自然に改善するのは難しいことが言えます。論文内ではCA12mm以上でヘルメットを推奨すると記載しました。頭の変形が気になる場合は一つの基準になるかもしれません。

今回はCA12mm以上の重症斜頭症にフォーカスして検討しました。
私が次に明らかにしたいことは、長期間の重症斜頭症の推移、中等症と軽症斜頭症がどの頻度で改善するか、逆に悪化するかの割合、またその悪化因子、重症斜頭症の顔面変形について等でしょうか。
同時進行で日大板橋の先生と春日部医療センターの先生も研究を進めてくださっています。
論文のアクセプトが楽しみですね。

以上になります。
今回の論文が日本における斜頭症の道しるべになってほしいという思いがあります。そんな思いをイメージした画像です。
この論文をきっかけに斜頭症について見聞が広がり、どの小児科の先生に相談しても最適解が得られるような環境になるまで、私はまだまだ頑張り続けますよ!

1) Hutchison, B.L.; Hutchison, L.A.; Thompson, J.M.; Mitchell, E.A. Plagiocephaly and Brachycephaly in the First Two Years of Life: A Prospective Cohort Study. Pediatrics 2004, 114, 970–980.
2) Aihara, Y.; Komatsu, K.; Dairoku, H.; Kubo, O.; Hori, T.; Okada, Y. Cranial Molding Helmet Therapy and Establishment of Practical Criteria for Management in Asian Infant Positional Head Deformity. Childs Nerv. Syst. 2014, 30, 1499–1509.
3) Takamatsu, A.; Hikosaka, M.; Kaneko, T.; Mikami, M.; Kaneko, A. Evaluation of the Molding Helmet Therapy for Japanese Infants with Deformational Plagiocephaly. JMA J. 2021, 4, 50–60.

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