子どもの頭の形について Vol.2 ヘルメット治療について

5 月12日から頭の3Dスキャンを開始しました。
結果説明を電話によって行いましたが、詳細な説明が出来ませんでした。
そのため私が説明したいことをブログに記載させていただきます。
まずは3DスキャンについてVol.1を確認してからこちらの記事をご覧ください。
今回はヘルメット療法を中心に説明します。

はじめに

実際にスキャンを施行し左右対称率が85%以下、前後左右径比が90%以下の重症と判断された場合、ヘルメット治療が推奨されます。

重症でない場合は、積極的な体位変換やうつ伏せの時間を増やすタミータイムで自然改善を待ちます。

どのお子さんにもヘルメット療法を推奨しているわけではありません!!
重症でないお子さんは体位変換やタミータイムのような理学療法のみが推奨されています1)
ただし、重症のお子さんはヘルメット療法をおこなうことで治癒率があがることが報告されています2)
上記内容は非常に重要なので、まず最初に確認させていただきました。

では説明を開始します。

ヘルメット治療のメカニズム

今回説明するヘルメットはアイメット®の説明になります。
その他のヘルメットの企業でも基本的な理論は同じです。
下の図は、頭を真上から見ているイメージです。図の下が顔の前面(鼻があります)で、上が後頭部と考えてください。

このヘルメットは頭への圧迫をせず、へこんでいる部分(図の左上と右下)のスペースを残して成長を促しながら、外側のヘルメットシェルと内側の低反発クッションにより飛び出ている部分(図の右上と左下)の成長をゆっくりにさせ、全体の頭のバランスを整えるというメカニズムです。このおかげで、頭の本来の成長を抑制することなく、変形を治療することが可能となっています3)

ヘルメットをすることでの副反応について

このヘルメットを着用することで発達が遅れたり、脳に障害がおきるというような報告はありません。
安全に行うことが出来ます。ただしヘルメットと皮膚の接触による皮膚障害はおきます。

治療を開始するなら、生後4か月から6ヵ月が推奨です

・治療開始が早いほど治療効果は高く、生後4か月以前であれば最も治療効果が高い
・生後6ヵ月までに治療を介入すれば治療効果が得られる
・生後9ヵ月以降になってしまうと治療効果は低くなる
と日本からの論文があります4)
これは世界的にも同じです2,5,6)
そのため、治療をうける際は生後4 か月から遅くとも8か月までが望ましいです。

治療期間は最低7か月以上、1日23時間着用です

ヘルメット治療は7〜8カ月続けるべきであるとされています。ヘルメットは1日あたり最大23時間着用する必要があるため、保護者はこの治療に関してしっかりと説明を受けます。
同じアジアの韓国の論文では最低20時間以上装着することで改善したと報告があります7)

頭蓋骨癒合早期癒合症との鑑別について

まずヘルメット治療を行う前に頭蓋骨癒合早期癒合症を否定する必要があります。

赤ちゃんの頭蓋骨は7つの骨に分かれており、それぞれの骨のつなぎ目を頭蓋縫合といいます。
頭蓋骨縫合早期癒合症ではこの頭蓋縫合が早期に癒合してしまう病気で、そのために頭が変形を起こします。

この疾患は約2000人に1人の頻度で起きます。
脳の発達に障害が出る場合は早期に手術となります。
頭の変形が軽度であればヘルメット療法が選択されることもありますが基本的に治療法が変わります。
そのためヘルメット治療を行う場合は頭蓋骨癒合早期癒合症を否定する必要があるため、必ず脳神経外科の先生に一度診察をしていただく必要があります。
検査は触診で頭を診察し、頭部のX線検査、頭部CT検査をおこなうことが多いです。

ヘルメット療法を推奨しない論文も少ないがある

オランダの論文では中等症から重症のお子さんでもヘルメット療法をしなくても改善したという報告があります8)
調べてみると、オランダは頭の変形にかなり熱心な国のようです。
2007年から出生後からの体位変換やタミータイムの教育がかなりされているようで、出生後から5歳までをフォローし、斜頭症の頻度を2017年に報告しています9)。19%が軽症で、1%のみが中等症・重症の結果です。全ての児でヘルメット療法を施行しなかったと記載があります。
筆者も述べていますが、オランダとその他各国とは情勢が違うため、完全に比較は出来ないとしています。

終わりに 

私自身が親になったことで子どもの頭の形に興味を持ったこと、そしてクリニックを開業して乳児健診で頭の形の相談を多数うけるまでは、正直ここまで調べることはなかったと思います。

現在の日本においては、頭の形について助産師や産院のスタッフから指導をうけることは正直少ないと思います。(私の出産した病院ではこのような指導は受けていません)

そして、小児科の教育の分野でも、頭の形は命にかかわらないためそこまで熱心に教育がなされていない印象があります。
これは実際に親になって初めて気になる部分だと思いますし、命の現場に常にたっている医師よりも、私のようなかかりつけ医で親御さんの意見を聞いて初めて気がつくことだと思います。

今回の事をきっかけに、大事なことは出生後からの向き癖の有無(斜頸の早期発見)や、積極的な体位変換、タミータイムの普及活動にあると思いました。
もちろん重度となってしまったお子さんのヘルメット療法も大事です。
ですが、重度とならないように予防することを産院に啓蒙することがなにより重要であるということを記事を書きながら今強く感じています。

次回は現在わかっている斜頭症の情報をまとめて記事にします。
数日内にブログを完成させますのでお待ちください。
今後もスキャンは継続していきます。
よりわかりやすく説明が出来るよう努力します。

写真は前回の伊豆・三津シーパラダイスのエサあげシリーズの続きです。
海のギャング、トドにエサをあげています。名前はてつまる君です。
ショーステージでは、舌を出すパフォーマンスで子ども達の人気者です。

1) Klimo P, et. al. Congress of neurological surgeons systematic review and Evidence-based guideline on the management of patients with positional plagiocephaly: the role of repositioning.Neurosurgery 2016; 79: pp. E627-E629.
2) Tamber MS, et. al. Congress of Neurological Surgeons Systematic Review and Evidence-Based Guideline on the Role of Cranial Molding Orthosis (Helmet) Therapy for Patients With Positional Plagiocephaly. Neurosurgery. 2016 Nov;79(5). E632-E633.
3) 藍原康雄ら . 小児科診療. 80-5. 545-549. 2017
4) Aihara Y. Childs Nerv Syste 30 : 1499-1509. 2014
5) Kluba S, Kraut W, Renert S, et. al.: What is the optimal time to start helmet therapy in positional plagiocephaly?.Plast Reconstr Surg 2011; 128: pp. 492-498.
6) Mortenson P, Steinbok P, Smith D: Deformational plagiocephaly and orthotic treatment: indications and limitations.Childs Nerv Syst 2012; 28: pp. 1407-1412.
7) Yoo H, Rah DK, and Kim YO: Outcome analysis of cranial molding therapy in nonsynostotic plagiocephaly. Arch Plast Surg 2012; 39: pp. 338-344
8) Van Wijk RM, van Vlimmerem LA, Groothuis-Oudshoorn CGM, et. al.: Helmet therapy in infants with positional deformation: randomized controlled trial.BMJ 2014; 348: pp. g2741.
9) van Vlimmeren LA, et. al.: The course of skull deformation from birth to 5 years of age: a prospective cohort study.Eur J Pediatr 2017; 176: pp. 11-21.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です