消化管アレルギーについて vol.2(特に卵黄摂取後の嘔吐について)

前回の消化管アレルギーの説明の続きになります。

予後について

予後は良好で2-3歳でアレルギーが改善するといわれています。
1歳までに52%、2歳までに88%、3歳までに94%が原因食物を食べても症状が出ない状態まで改善したという報告もあります1)

そのため原因食物を除去して成長発達をフォローしていき、半年から1年毎に負荷試験をおこなって除去解除を目指すということになります。

ただし、最重症例や、診断がつかない場合は内視鏡検査をおこない、病理検査をすることもあります。その場合はもちろん大学病院へ紹介となります。

先日投稿された卵黄が原因の消化管アレルギーの論文について

アレルギー学会等でたびたび報告はされていましたが、ついに卵黄が原因の消化管アレルギーについての論文が先日慶応大学病院のアレルギー研究グループから投稿されました2)
紹介したいと思います。

2015年1月から2019年10月までの間に、卵が原因と疑われる食物蛋白誘発胃腸炎患者42人のうち、ガイドラインの基準を満たした乳幼児26人が研究の対象となりました。
26人のうち、「卵黄」と「卵白」を別々に食べた23人全員が「卵黄」にだけ反応して症状が誘発されたことが明らかになりました。
そのうち3人は、「卵黄」に加え「卵白」にも反応しましたが、「卵白」にのみ反応する患者はいませんでした。
さらに、経口負荷試験を行った15人の患者では、「卵黄」では極微量でも症状が誘発されたのに対し、「卵白」では「卵黄」と比較して多くの量を摂取しても症状が誘発されない患者が多いことも明らかとなりました。

なぜ卵黄で消化管アレルギーがみられたのかはわからない

この論文では、なぜ卵黄のみで症状がでたのかについては今後の研究課題としています。
そのため、詳細な病態はわからないという状況はかわりません。

ですが、この論文は非常に衝撃的な内容でした。
なぜなら、卵黄にだけ反応してアレルギー症状がでるだけでもビックリなのに、卵白をたべても症状がでない!今までの常識が崩れた瞬間だと私は思いました。
卵黄の消化管アレルギーは一般的な卵アレルギーとは病態そのものが違うのだと思います。
そのため今回の論文をきっかけにより詳しい病態が解明されることを期待します。

まとめ

消化管アレルギーについて説明しました。
ミルクの消化管アレルギーが疑われた際は治療ミルクで対応し、卵による消化管アレルギーに関しては、除去対応とします。

以前のブログでも記載しましたが、「卵黄」は「卵白」よりアレルギー反応を引き起こしにくいと考えられています。ですが、「卵黄」を摂取した数時間後に繰り返し嘔吐を認めるような場合は、卵による消化管アレルギーを疑います。
ほとんどのお子さんが消化管アレルギーを克服しているデータがあります。
そのため除去を行いながら、慎重に負荷試験を相談していきましょう。

以上になります。

1) Nomura I, et al. : Four distinct subtypes of non-IgE-mediated gastrointestinal food allergies in neonates and ingants, distinguished by their initial symptoms. J Allergy Clin Immunol 127 : 685-688, 2011.
2) Yoko toyama, et al. Multicenter retrospective study of patients with food protein-induced enterocolitis syndrome provoked by hen’s egg. J Allergy Clin Immunol In Practice. DOI:10.1016/j.jaip.2020.09.065

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能登 孝昇
2023年8月まで氷川台のと小児科クリニック院長を務めました。 2024年4月から赤塚にてサンスカイのと小児科クリニックを開業しました。 今後もこどもに関しての情報と、私の今後について発信していけたらと思います。