当院でミルクや卵黄摂取後の嘔吐の症状についての相談が多く、消化管アレルギーの可能性があることを説明していますが、なかなか口頭での説明に限界があります。
そして消化管アレルギーは原因が未解明であるが多いのが実際です。
この記事で現時点でわかっていることを説明していきたいと思います。
この記事の目次
まず食物アレルギーはどうしておきるのか
食物アレルギーの発症のメカニズムはまだわかっていないことが多いのですが、多くの場合原因の食べ物に対して免疫細胞が働き、抗体(IgE)が作られることで症状が引き起こされます。
そのため卵アレルギーのお子さんに採血で調べるのは卵のIgEを調べているということになります。
なぜこの話を最初にしたかというと、これから説明する消化管アレルギーはIgEが陽性となりにくいアレルギーなので、診断が難しいのです!
消化管アレルギーとは?
正式には、新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症(新生児・乳児消化管アレルギー)といわれています。海外ではNon-IgE-mediated gastrointestinal food allergy(Non-IgE-GIFA)などと表現されています。
発症率は0.21%と言われており多くの場合で牛乳が原因です。
症状は原因食物摂取して3-4時間後に嘔吐、その後に下痢(通常5-10時間以内)、血便がみられます。その他さまざまな症状を呈することがわかっています。
海外では症状別に診断名が異なり、摂取後1-4時間で嘔吐、のちに下痢や血便がでるものをFood-protein induced enterocolitis syndrome(FPIES)
血便のみで予後良好なものをFood-protein induced (allergic)procolitis(FPIAP)
下痢や消化吸収障害から体重増加不良を伴うFood-protein induced enteropathy(FPE)
などと分類されていますが、診断と治療は大きく変わりません。
診断と治療に関して
まず、症状から消化管アレルギーを疑うことから始まります。正直これが全てです。
原因となる食物を食べて、症状が繰り返されることで消化管アレルギーを疑います。
そのため、お子さんが症状が出たときの摂食歴がとても重要となります。
ミルクが原因である場合は治療ミルク(高度加水分解乳 ニューMA-1®など)に変更して症状の推移を確認します。
それ以外の場合は原因である食物を除去して症状が落ち着くかを確認します。
多くは、原因食物の除去後24時間以内に症状が改善します。
成長発達は正常で、原因食物除去中は無症状です。
症状が消失すれば、乳児であれば1か月毎に体重増加を確認していき、確定診断および離乳食開始のための負荷試験をする流れとなります。
検査について
ここで問題なのが、特異的IgE抗体が約70%で陰性であることです。(逆に言うと30%は陽性となるため採血は一応します。そして陽性だと耐性を獲得しにくいという報告があります1))
ALSTという検査が牛乳のみで存在しますが、自費検査となります。
(1項目5000円、だいたい3項目調べます。当クリニックではさすがに出来ません。。。)
それ以外の食べ物での検査は現時点ではありません。
つまり、採血による検査での診断はほとんど期待出来ないということになります。
そのため、食物負荷試験のみが診断確定となる検査ということになるのです。
次回に続きます。
写真です。先日はハロウィーンでした。
我が家ではかわいいキリンさんと恐竜になってキャンディーをたくさんもらっていました。
1) Caubet JC, et al. Clinical Features and resolution of food protein-induced enterocolitis syndrome : 10-year experience. J Allergy Clin Immunol 134 : 382-389, 2014.
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