ミルク(牛乳)アレルギーについて Vol.1

食物アレルギーの原因食物の1位であった卵アレルギーに続き、2番目に多いミルクアレルギーについて説明します。

ミルクのアレルギー成分について

ミルクのタンパクの種類は40種類以上あると言われ、含まれているタンパク質は約3.3%です。
代表的なものがカゼイン(ミルクのタンパク質の約80%)になります。

その他、β-ラクトグロブリン、α-ラクトアルブミンが有名です。

ミルクのアレルギーがあるお子さんは大半がこのカゼインが陽性となります。
約半数でβ-ラクトグロブリン、α-ラクトアルブミンが陽性となると報告されています1,2)

卵と同様に、β-ラクトグロブリン、α-ラクトアルブミンは加熱により抗原性が低下しますが、カゼインは熱に安定です。
具体的には、β-ラクトグロブリンは80℃以上の加熱で抗原性が低下するのに対し、カゼインは100℃でも変性しません。

ミルクの加工による変化について

一般的に市販されているミルクは超高温殺菌法といわれるもので、120-150℃で1-3秒の加熱をすることで殺菌をおこないます。
そのため抗原性(アレルギー物質として認識されるかどうかの程度)の低下はほとんどありません。

ですが加熱調理は有用であることがわかっています。
具体的には、ミルクアレルギーの児の75%がミルクを配合したマフィン(177℃で30分間加熱)、ワッフル(260℃で3分間加熱)の摂取が可能であったと報告があります3)
また、ヨーグルトはミルクと比べ抗原性が若干低いという報告4)があり、ミルクに比べて加熱処理が強いからではないかといわれています5)
(実際ヨーグルトは85-95℃で2-15分加熱処理が行われるためミルクより少し時間が長い)
ですが、商品によりタンパク質の含有量が違うため一概に抗原性が低いとは言えません。
タンパク質の割合はヨーグルトでは3.6-4.3%といわれておりミルクとさほどかわりません。

チーズは長期熟成によりミルクのタンパク質の分解が進むことがわかっています6)
しかし、プロセスチーズ等はカゼインの割合が高く(ミルクで3.3%に対しプロセスチーズは22.7%)注意が必要です。

一方バターは乳脂肪分がメインであるためタンパク質の混入は少ない(0.6%)ことが知られています。

ミルクアレルギーの診断について

アレルギーの診断は、ミルクが含まれている食品を食べてアレルギー症状がでたことを確認するのが基本になります。
そのため、乳製品を摂取しアレルギー症状がでた場合に診断となります。
血液検査で陽性であることは補足的な情報となります。これは卵アレルギーの記事と同じですね。

以上になります。
次回は血液検査の解釈についての説明に続きます。

1) Ito K, et al. : The usefulnesss of casein-specific IgE and IgG4 antibodies in cow’s milk allergic children. Clin Mol Allegy 10 : 1-7, 2012.
2) 中野泰至, ほか : 牛乳アレルギー患者におけるカゼイン,βラクトグロブリン感作に関する研究. アレルギー 59 : 117-122, 2010.
3) Nowak-Wegrzyn A, et al. : Tolerance to extensively heated milk in children with cow’s milk allergy. J Allery Clin Immunol 122 : 342-347, 2008.
4) Bu G, et al. : Effects of fermentation by lactic acid bacteria on the antigenicity of bovine whey proteins. J Sci Food Agric 90 : 2015-2020, 2010.
5) Ehn BM, et al. : Modification of IgE binding to beta-lactoglobulin by fermentation and proteolysis of cow’s milk. J Agric Food Chem 53 : 3743-3748, 2005
6) 岩本 洋 : 牛乳・乳製品の加工とアレルゲン性.日本小児難治喘息・アレルギー疾患学会誌 13 : 42-46, 2015.

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