頭の形の変形と重症化を予防する枕の開発についてという内容の論文1)がアクセプトされましたで紹介したいと思います。
この予防枕を使うことで重度の変形を予防し、斜頭症のヘルメット療法自体の数を減らすことが出来る可能性がうまれました。
今までエビデンスのある頭の形の予防枕はありませんでしたので、この研究をきっかけに斜頭症の児が減ってくれることを願います。
今回の記事も斜頭症で悩まれている方の補足情報記事になりますので専門用語が説明なしに記載されます。
頭の形でお悩みの方は下記ブログ記事で最初から丁寧に説明していますので確認いただければ幸いです。

今回もありがたいことに共同研究者として参加させていただいています。
論文の詳細を確認したい場合は下記の本サイトからアクセスをお願いします。
https://www.mdpi.com/2077-0383/14/9/3261
引き続き研究を通じて社会貢献できるよう頑張りたいです。
今回も同様に結論から、
生後1か月までに予防枕を使用した児は、使用していない児と比較し、生後3か月の時点でCVAIで1.5%悪化を予防する。
予防枕を使用した42名は生後3か月で重症の児は0人であり、重症化を予防することが出来た。
になります。
大変申し訳ありませんが、論文がアクセプトされたからといってすぐに一般販売されることはありません。
ただ、サンスカイクリニックにて生後2か月のタイミングで予防枕を使用し、生後4か月で斜頭症を予防することが出来るかという研究を進める予定です!
この研究に関しては記事の後半に記載しますので最後まで見ていただければ嬉しいです。
では、英語論文の内容を説明していきましょう。
この記事の目次
目的
出生直後から頭が変形していることは稀です。そのため、出生直後から頭の変形を予防することで斜頭症を予防できるのではないかと仮説を立てました。
株式会社Berryさん(いつもヘルメット療法のベビーバンドでお世話になっている企業)との共同研究により、頭の変形を予防する新しい機器を開発しました(特許出願番号:2023-025276)
本研究では、生後1か月までに開発された頭部変形予防枕を使用し、生後3か月時点で斜頭症の発症および悪化を安全に予防できるかどうかを明らかにすることを目的としました。
新規に開発した予防枕の説明
この予防枕は、頭蓋骨に接する面を頭蓋骨の形状に合わせることで、頭部変形を予防するように設計されています。(簡単に言うとヘルメット療法の後頭部の部分をくり抜いています!)
シェル(外側の硬い部分)サイズは、生後3ヶ月の日本人頭囲の±2の標準偏差に対応しており、生後から生後3ヶ月まで継続して使用できます。また、前傾姿勢にならないように設計されているため、窒息の心配もありません。

↑この青い丸の部分が前傾姿勢となるのを抑制し、窒息を防ぐ設計となっています。
ウサギちゃんのカバーをつけて完成です!
対象となった児は42名
研究参加者は、2023年3月から12月の間に日本大学板橋病院および春日部市立医療センターで出生した満期産児です。
32名が出生直後から生後3ヶ月まで使用しました(出生直後群)。
10名が生後1ヶ月から生後3ヶ月まで使用しました(1ヶ月群)。
合計42名が対象となりました。
結果1 予防枕を使用して生後3か月でどうなったか
出生直後群と1ヶ月群に臨床背景に差はありませんでした。
下の表(Table2)は予防枕の使用開始前と生後3か月における42名の頭の形の変化を示しています。

以前に生後1か月から生後3か月で斜頭症は自然に悪化するという論文を投稿しました。(詳細は下記ブログの中盤を確認ください)
そのため、CAが中央値2.8mmから5.5mmへ、CVAIが2.3%から4.3%へ、PSRが93.8%から92.4%へ頭蓋変形が悪化しているのですが、これらの数値が予防枕を使用していない児と比較してどうなったのかを確認するというのが次の表(Table3)になります。
結果2 予防枕を使用していない児と使用した児を生後3か月で比較した

左側の予防枕を使用していないコントロール群(110人)と右の予防枕を使用した児(42人)の比較になります。
コントロール群がCA8mm、CVAI5.8%、PSR89.7%であり、有意差をもって予防枕を使用した児と比較してより悪化していることがわかります。
そしてコントロール群では110人中15人(14%)が斜頭症が重度となったのに対し、予防枕を使用した児は重度の児は0人でした。
(枕を使用した児で重度の斜頭症がでなかったことはとてもよかったと思います!)
結果3 生後すぐに予防枕を使用した児と生後1か月から使用した児で差はあったのか
予防枕の使用時期によって差がでたかを下の表(Table4)で示しています。

結果はどちらも有意差は認められませんでした。つまり生後すぐから開始しても生後1か月から開始しても変わりはありませんでした。
また、今回の研究期間中に窒息(窒息疑いを含む)や皮膚炎などの有害事象はみられませんでした。(これはとても大事なことです。安全が1番大事!!)
結論
新しい予防枕が、生後3ヶ月までの頭蓋変形の発症、進行を安全に予防できることが分かりました。
とまとめられ論文は終了しています。
この研究から今後期待すること
今までの研究は、ヘルメット療法を使用してどれくらい改善したか、副反応の皮膚炎やヘルメット療法がいかに安全で効果があるかなど、治療を中心の研究の視点でした。
本研究は、いかに重症化せず、予防することでヘルメット療法を回避するかという全く違う視点の研究であり、斜頭症のケアについての大きな転換点となる論文であると考えています。
この論文の最後には、
「将来的に、親への頭蓋変形予防に関する教育と予防枕の使用を組み合わせた大規模な介入を通じて、日本人における頭蓋変形を根絶する方法を確立することを目指します。」
と記載されています。夢がありますね。
今回の研究のリミテーションとしては、ご両親の使用時間の詳細な情報をとることが出来ませんでした。
使用時間と、斜頭症の予防効果についての関連を詳細に調査していくことが今後の研究課題です。
個人的には生後すぐの使用と生後1か月後の使用で効果に差がなかったことは驚きの結果です。普通に考えたら早く始めたほうがより予防出来そうな気がするのですが、結果はどちらでもよいということでした。それならば生後1か月から開始したほうが親御さんとしても楽ですよね。
この研究をうけてサンスカイクリニックで出来ることを考える
今回の研究は生後すぐ、もしくは生後1か月での予防枕を使用した研究です。
そのため、お産のある産婦人科が併設している大学病院のような病院でなければ予防枕を提供することは出来ません。
次にサンスカイで行う研究は、生後2か月、予防接種で小児科に初めて受診するタイミングで予防枕を導入し生後4か月の段階でいかに予防出来たかを明らかにするというテーマです。
やはり予防接種や育児相談で初めて受診するのは小児科のクリニックだと思います。
そのため、小児科に初めて受診する生後2か月のタイミングであっても、予防枕の使用で斜頭症を予防することが出来れば、いつか全国の小児科クリニックで予防枕を提供し斜頭症の児を大幅に減らすことができる未来があるかもしれません。
この生後2か月から予防枕を使用する研究はクリニックが中心となっておこなう必要があります。
もちろんご家族への費用負担はありません。ですが、クリニックを受診するお子さん、ご家族の協力が必要です。ヘルメット療法を行う場合と同じく同意書を記載いただいたり、専用のアプリを使用して予防枕を使用した時間の記載をお願いすることになると思います。
生後2-4か月専用の予防枕を開発し、研究が実装されるようになった段階でまたブログ記事を作成する予定でいますのでしばしお待ちいただければと思います。
生後1か月の予防枕の開始で重症化を予防することできましたので、予防枕の開始が生後2か月だったとしても、少しでもいいので、重症化を予防することが出来れば、本当にいい研究になると思いますし、社会貢献になると個人的には思っています。
以上になります。引き続きよろしくお願い致します。
1) Tanaka Y, Miyabayashi H, Noto T, Kato R, Nagano N, Morioka I. A Novel Prophylactic Device Against Head Deformity to Prevent Severe Positional Plagiocephaly. J Clin Med. 2025 May 7;14(9):3261. doi: 10.3390/jcm14093261. PMID: 40364292; PMCID: PMC12072440.
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