子供の便秘症、どう対処すればいい?保護者のための実践的アドバイス vol.1

コメントに小児の便秘症について相談がありました。一部抜粋して記載します。

9ヶ月の赤ちゃんの便秘が酷く悩んでいて、先生の意見をお聞かせいただけないでしょうか。
少し前までは綿棒浣腸で何とかでていたのですが、最近はそれだとでなくなってしまい、病院で相談するとグリセリン浣腸を処方され、こちらを使用しないと出なくなってしまいました。
浣腸をずっと続けていいのか不安です…。
便秘2日目にはお腹が苦しいのか、眠りも浅くうなるので、使用せざるをえない状況です。
浣腸以外で何か親にできることがあれば教えていただきたいです。
また、ヒルシュスプルング病の可能性はあるのでしょうか?
4ヶ月頃までは1日に何回も出ていました。

という内容です。年齢や排便が出ない期間、治療の有無などはあると思いますが、同じように便秘症で悩まれている方、ご心配されている方は多いと思います。

簡潔に便秘症の対応を説明すると

便が3日に1回しかでず、本人が苦しんでいる場合、
お腹、肛門、背中の診察をして問題がなければクリニックで浣腸をして排便をする
2歳未満なら酸化マグネシウムを、2歳以上ならモビコール®の内服で治療を開始、1-2日に1回の排便になるまで継続する!

になります。困っているかたはこれだけ覚えていただき、クリニックへ相談ください。

正直、小児の便秘症はかなり多いです。
ですが、発熱していないためすぐにクリニックに受診して相談するということが実際は少なかったです。
そして新型コロナウイルス感染症の流行後は、かなり便秘が進行してから受診するケース(10日間排便がない等)や、本人が苦痛を訴えていても自然に改善するだろうと我慢している期間が長くなったりするケースを多くみました。

そのため、そもそも便秘症とはどのような基準なのか、どのような場合に早く受診した方がよいのか、そもそも本当に便秘症でよいなのか?などの知識をこの記事で確認いただき、かかりつけの小児科受診への判断に使っていただければと思います。

では最初に小児の便秘症の疫学(どれくらいの頻度なのか)から説明していきたいと思います。

疫学:どのくらいの人が便秘症で悩んでいるの?

便秘症の疫学に関しては、いろいろな論文からの報告がありますが日本の報告はありません。

例として、アジアを中心にあげていきましょう。
中国3.5%1)、マレーシア1.1%2)、タイ8.1%3)、ベトナム3%4)でありアジア全体では6.2%5)(意外と高い!)となっています。
ただ、世界で比較するとアジアの便秘症の罹患率は低いことがわかっています。後程説明しますが、便秘症の診断基準であるRome IV 基準を使用した小児における便秘症の全体的な世界有病率は 14.4%5)(すごい高い!!)でした。
大陸別によると、便秘の有病率が最も高かったのはアフリカ(31.4%)で、次いでアメリカ(12.1%)ヨーロッパ(8.3%)アジア(6.2%)となっています。これらの罹患率をまとめた図5)を下記に示します。

灰色の国はデータがない地域なのでこの報告が全てというわけではありません。
ただ私が伝えたいのは、便秘症は世界中でかなりの方が悩まれているということを知ってほしかったのです。
現在便秘症の治療中の方や便秘症で悩まれている方やご家族の方も、自分だけなのではないかと思われていると思います。ですが過度に心配になる必要はありません。
自分の家族だけが特別なのではなく、便秘症は世界中で悩まれている一般的な疾患であるということをまず理解して落ち着いて対応してほしいと思っています。

では次に排便回数の正常を知らないと異常の説明が出来ません。まずは正常な排便習慣について説明していきましょう。

正常な排便習慣とは

1日あたりの排便回数は、
生後1週間では1日4回以上
生後4~6週目では1日3回
4歳までには1日1~2回
5歳以降は毎日または隔日

という頻度で排便します6,7,8)。もちろん平均なので多少回数は前後したりします。
ですが、5歳以降においては
無理したり我慢したりすることなく、毎日または隔日で排便出来る状態が正常な排便習慣
となります。(知ってるよと言われそうですが念のための確認です)

赤ちゃんの期間は思っている以上に排便回数が多いです。
完全母乳で育児をされた方はよく経験しますが、授乳のたびに排便をする子もかなりいます。(我が家はそうでした。おむつ交換大変でした)
そのため、ひどいお尻かぶれがあるなどの合併症状がなければ、排便回数が多すぎることで心配する必要はありません。

便秘症の定義

さて、ここからが本題です。
便秘症の基準はRome基準というものを使用します。
日本のガイドラインではRomeⅢ基準で記載されていますが、2016年にRomeⅣ基準9)に変更になっています。ただ大きな変更はありません。
この分類は4歳未満と4歳以上で分けられています。

4歳未満の小児では、
1:1週間に2回以下の排便
2:過度の便の貯留の既往
3:痛みを伴う、あるいは硬い便通の既往
4:大きな便の既往
5:直腸に大きな便塊の存在
6:トイレトレーニングが完了した児において、トイレがつまるくらい大きな便の既往
これらの項目の少なくとも2つ以上が1か月以上あること

となっています。
一言で言えば、
「痛みを伴う3-4日に1回の排便が1か月継続すれば便秘症」
となるわけです。
そして、毎日排便が出ていたとしても、
「痛みを伴う便通があり、大きな便の既往がある」
でも便秘症となるのです。

そのため、本人が便に関連して困っているのであれば便秘症として治療介入をしてあげるのが私は正しいと思います。

少し2番の補足すると、過度な便の貯留の既往は医師の便の塊を触診で触れることが出来た、もしくはレントゲン写真で大量の便の貯留を指摘されたということになります。

4歳以上の小児では
1:1週間に2回以下のトイレでの排便
2:少なくとも週に1回の便失禁がある
3:便を我慢する姿勢や過度な便の貯留の既往
4:痛みを伴う、あるいは硬い便通の既往
5:直腸に大きな便塊の存在
6:トイレが詰まるくらい大きな便の既往
7:過敏性腸症候群の基準を満たさないこと
これらの項目の少なくとも2つ以上が1か月以上あることとなります。

4歳以上では過敏性腸症候群を否定することが基準として入っています。(これはまた違うところで説明しましょう)
3番の便を我慢する姿勢について補足します。
・体が硬直してしまう
・お尻をくいしばる
・つま先で歩く
・片足をもう一方の足の上に交差させる
・家具に体を押し付ける
・四つん這いの姿勢または丸くなる
・足をまっすぐに伸ばして座る
などと表現される我慢行動になります10,11)。下記に画像5)をお示しします。
この画像は体の硬直を表しています。

ここでも4歳以下と同じですが、毎日排便が出ていたとしても、
痛みを伴う排便で、我慢行動をしている
でも便秘症の診断で私は治療を開始します。

そして、我慢行動は意外としています!
ぜひよく観察してみてください。私は小学生の頃学校で排便をするのが恥ずかしく我慢行動をとっていました。我慢行動は便秘症の主要な原因ですので確認してみてくださいね。

そして注目すべきは2番です。
少なくとも週に1回の便失禁がある
これは文字だけみると「便失禁はなんてしないよ!」と思われると思いますが、知らない間にパンツが汚れている(少量の液体便が無意識に通過しておきる症状)状況をさします。
この状況はお子さんの生活の質をとても低下させ、心理的にかなり影響を与えます。
なぜ少量の液体便が便秘のはずなのにでてしまうのでしょうか。

この仕組みを説明するためには正常に便が出る仕組みをおさらいする必要があります。
また便秘症からはなれてしまいますが大事なので次回の記事でみていきましょう。

1) Huang Y, Tan SY, Parikh P, Buthmanaban V, Rajindrajith S, Benninga MA. Prevalence of functional gastrointestinal disorders in infants and young children in China. BMC Pediatr. 2021 Mar 17;21(1):131. doi: 10.1186/s12887-021-02610-6. PMID: 33731059; PMCID: PMC7968152.
2) Chew KS, Em JM, Koay ZL, Jalaludin MY, Ng RT, Lum LCS, Lee WS. Low prevalence of infantile functional gastrointestinal disorders (FGIDs) in a multi-ethnic Asian population. Pediatr Neonatol. 2021 Jan;62(1):49-54. doi: 10.1016/j.pedneo.2020.08.009. Epub 2020 Aug 16. PMID: 32891528.
3) Siajunboriboon S, Tanpowpong P, Empremsilapa S, Lertudomphonwanit C, Nuntnarumit P, Treepongkaruna S. Prevalence of functional abdominal pain disorders and functional constipation in adolescents. J Paediatr Child Health. 2022 Jul;58(7):1209-1214. doi: 10.1111/jpc.15950. Epub 2022 Mar 29. PMID: 35348253.
4) Chia LW, Nguyen TVH, Phan VN, Luu TTN, Nguyen GK, Tan SY, Rajindrajith S, Benninga MA. Prevalence and risk factors of functional gastrointestinal disorders in Vietnamese infants and young children. BMC Pediatr. 2022 May 27;22(1):315. doi: 10.1186/s12887-022-03378-z. PMID: 35624448; PMCID: PMC9137065.
5) Tran DL, Sintusek P. Functional constipation in children: What physicians should know. World J Gastroenterol. 2023 Feb 28;29(8):1261-1288. doi: 10.3748/wjg.v29.i8.1261. PMID: 36925458; PMCID: PMC10011959.
6) Weaver LT. Bowel habit from birth to old age. J Pediatr Gastroenterol Nutr. 1988 Sep-Oct;7(5):637-40. doi: 10.1097/00005176-198809000-00002. PMID: 3054038.
7) Osatakul S, Yossuk P, Mo-suwan L. Bowel habits of normal Thai children. J Pediatr Gastroenterol Nutr. 1995 Apr;20(3):339-42. doi: 10.1097/00005176-199504000-00013. PMID: 7608830.
8) Courdent M, Beghin L, Akré J, Turck D. Infrequent stools in exclusively breastfed infants. Breastfeed Med. 2014 Nov;9(9):442-5. doi: 10.1089/bfm.2014.0050. Epub 2014 Sep 22. PMID: 25243969.
9) Benninga MA, Faure C, Hyman PE, St James Roberts I, Schechter NL, Nurko S. Childhood Functional Gastrointestinal Disorders: Neonate/Toddler. Gastroenterology. 2016 Feb 15:S0016-5085(16)00182-7. doi: 10.1053/j.gastro.2016.02.016. Epub ahead of print. PMID: 27144631.
10) Dos Santos IR, de Abreu GE, Dourado ER, Martinelli Braga AAN, Lobo VA, de Carvalho IWB, Bastos Netto JM, Barroso U Jr. Emotional and behavioural problems in children and adolescents: The role of constipation. J Paediatr Child Health. 2021 Jul;57(7):1003-1008. doi: 10.1111/jpc.15368. Epub 2021 Feb 10. PMID: 33565678.
11) Singh H, Connor F. Paediatric constipation: An approach and evidence-based treatment regimen. Aust J Gen Pract. 2018 May;47(5):273-277. doi: 10.31128/AFP-06-17-4246. PMID: 29779292.

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