言語発達についてvol.3 言葉が遅い場合の日々の接し方

ここまで言語発達の順番、メディア視聴について説明してきました。
では、実際に1歳半健診で言葉が遅いかもしれないなと親御さんが感じた、もしくは健診で指摘された場合、どのようにお子さんに接したらよいかを説明していきたいと思います。今回1番伝えたいポイントは

本に興味を持ってもらうために、本の中に出てくる物を実際見に行こう!

になります。
まず、言葉の発達はどの時期にどれくらいの頻度で出るのかをまず確認していきましょう。

デンバー発達判定法 どの時期にどれくらいの頻度で言葉は出るか

Denver Ⅱ(デンバー発達判定法)という発達評価の指標があります。

この表の75%のところみてみると、18の数字があります。
つまり、18か月(1歳半)で3語以上話すのは75%ということがわかります。
90%のところをみてください。上から2つ目の欄に17.6とあります。
つまり、1語話すことが出来るのは17.6か月で90%こということもわかります。
一方、17.6か月でも約10%の子は1語も話さないということがわかるのです。
2語文の出現も、出来る子出来ない子で半年前後の差があることがわかります。
そのため、1歳半健診で言葉が出ていないからといって全てが異常ではありません。
経過をみながら言語が出てくるかを評価することになります。
つまり、標準より遅いけど、次第においついてくる「おくて」タイプなのか、
何らかの問題があって言葉が遅いかどうか、
この2つの経過を注意しながら評価していくことになります。
何らかの問題とは1歳半健診の記事で記載しましたが、
1:難聴
2:精神発達遅滞
3:自閉症スペクトラム障害
4:養育環境の問題
と大きく4つに分けられました。
ただし、発達障害があったとしても適切な言葉をかけながらコミュニケーションをとることが大事なのは変わりません。
ではどのように話しかけて、言葉の発達を促していくかを説明していきましょう。

「おくて」タイプを簡単に説明しておくと、標準よりも言語が出るのが遅いが次第に追いついて問題がなくなるパターンです。
「家では言っていることは理解してちゃんと対応してくれます」「家では話そうとしていますが、外に出ると恥ずかしがりますね」等の発言が親御さんが聞かれます。
3歳あたりには言葉が増え、対人関係も問題ない場合はこの「おくてタイプ」になります。

話かけるときのポイント

「わかるのが先、言えるのは後」の原則がありますので、大人から話しかけるのが基本です。
その上で、話しかけるポイントは

・静かな場所で
・ゆっくり話す
・はっきり話す
・繰り返し話す
・短い文章で話す
・実物を見せる
・子供が伝えたい気持ちを受け止める

になります。
まず、静かな場所というのはとても大事です。
親御さんの声のほかにテレビなどの音が混じると、その音もお子さんはとりこんでしまうため、親御さんの声だけを取り込むことが出来ません。
まだお子さんは聞き取る力や短期記憶の力が未熟であるため、ゆっくり、はっきり、そして繰り返し、短い文章で話してあげてください。
そして実物を見せてあげましょう。
視覚的な手がかりがあると記憶に残りやすいです。
その場の状況や環境の理解が出来ているかを確認するのが非常に大事です。

少し私の話をします。
息子を西武線の豊島園の駅に連れて行き、入場券を買って電車を見た話を健診でよくします。
以前のブログの記事の写真にもでていますね。

豊島園の駅には西武線の電車が通るだけでなく、この辺りでは珍しく踏切があります。
踏切から運転手の方へ手を振れば、結構な割合で小さく警笛を鳴らしてくれたり、手を振ってくれます。毎回の踏切の「カンカン」という音と光だけでも興奮してくれと思います。
そして極めつけは駅構内で駅員さんにカードを欲しい旨を伝えると、優しい駅員さんだと西武線のカードをもらえます。
子供はきっと大興奮するはずです。
何度も電車のカードを確認しては、ニコニコします。
ここでおすすめの絵本を1つ紹介します。「ふみきりくん」という本になります。

この本は電車が通るたびにふみきりくんが遮断機をあげたりおろしたりするという内容です。
電車、ふみきり、カンカンという擬音を含めて、豊島園駅周辺の現実世界と本の中の世界がかなりリンクしています。
もちろんその場に絵本をもっていってもいいと思いますし、その日の夜、寝る前の読み聞かせの時間に電車関連の本を選ぶだけでもきっと興味を持ってくれるはずです。
カードがもらえたならば、それを見ながら今日あったことを振り返り話すのもいいでしょう。

ちなみに、豊島園駅周辺から少し自転車をこげば練馬警察署、練馬消防署があるためパトカー、消防車、救急車があります。
男子であればだれでも興奮する、電車、踏切、パトカー、消防車、救急車がありますので本の実物がたくさんあります。
ぜび自宅にある本で実物とリンク出来るものがないか考えてみてください。

もし子供が自分から言葉を発したり、視線や表情でなにかを訴えてきたら大チャンスです。
小さな変化でもいいと思います。
子供から必ずなにか表現がでていると思いますので、親はそれを見逃さないようにしっかり観察します。
そして受け止めます。
聞いてもらえる、わかってもらえるは安心感を与えます。これが良好なコミュニケーションとなり言葉を発出しやすい環境になります。

大人が子供にあわせること

もちろん親御さんの中には子供に「話しかけなくてはいけない」と責任を感じてしまったり、もともと話すことが苦手なパターンもあると思います。
決して無理をする必要はありません。
子供が見たものをそのまま言葉にかえていくだけでよいと思います。
これも健診でよく説明することの1つです。

例えば、おむつを替えたら、「おむつかえたねー、気持ちいいね」「いいうんち出たねー」「おしっこいっぱいでたねー」でよいと思います。
離乳食を食べる時期であれば、「いただきます」「ベダベタになったねー」「おいしかったねー」「ごちそうさま」でよいです。
その中でバナナは離乳食で使えば、
バナナをもってきて、「バナナだね」「バナナ黄色いね」「バナナをたべようね」「バナナの皮むいたね」と実物を見せながら、バナナという短い単語、文章を連続で話すことで、この黄色いものはバナナなのだと学習出来ます。これを繰り返していきます。
さらに、バナナを食べておいしそうな顔をお子さんがすれば「バナナおいしいね」と子供が思っている気持ちを大人が代わりに言うこともいいと思います。
お子さんの気持ちを親が分かってくれるというのは自信になりますし、良好なコミュニケーションに繋がります。

絵本を読むことの意義

先ほど少し説明した絵本の読み聞かせについて補足します。
絵本の読み聞かせをしましょうと健診で説明すると
「絵をみるのは好きですが、話は聞いてくれません」
「ページをめっくっているのが好きなんですが、全く話は聞いてくれません」
「話始めるとすぐにどっかに行ってしまいます」
「絵本に興味がありません」
などの返答が多い印象があります。

まず、絵本は「子供と親が楽しく会話する時間をつくるためのツール」に過ぎません。
そのため、話を聞かないからと怒られている状況であれば、むしろ絵本の時間はお子さんにとっては苦痛になっているのかもしれません。
言葉は良好なコミュニケーションの中から繰り返し話された単語を聞き取り、その単語の中から本人が興味をもったものが言葉として発出され、その蓄積で単語が増えていくというものでした。
なので、本をペラペラめくり、本人が本の中の絵に興味をもって一瞬手がとまった、その瞬間を見逃さないようにするのがとても大事です。
その絵について親が話かけてあげ、現物を見せる。またその本に戻って、絵について話すを繰り返すことでその本に興味がでてくるという順序です。
最初から子供が本に興味をもっているわけではありません。
まして物語を子供に教えたり、理解させることが目的でもありません。

子供が親に本を持ってくるようになるというのは、子供が親と絵本を読むと一緒に反応してくれるのが楽しい、嬉しいが出発点です。
歯磨きと同じで、毎日絵本を読むのを繰り返すと、「これはなんて書いてあるの?」「この字の読み方は?」と文字に興味を持ってきます。
ここまできて初めて、ひらがなの読み書きへと興味が向き、自然と文学への道に進んでいくというわけです。
ちなみに私は毎日最低15分の本の読み聞かせ(可能なら30分以上)を推奨します。

まとめ

ここまで説明してきて繰り返しですが、前回の記事のメディア視聴の振り返りです。
親や子供がテレビ、スマホを見ている、家でテレビがついている場合、お子さんが発した、表現した何か小さなサインを親が見落としてしまうことに繋がる可能性が高まります。
そのことが、非常に重要な問題であるということがわかってきたと思います。
お子さんが何か発したとしても、親が反応しなければ、お子さんは何かを表現するのをやめてしまい、いずれ言葉を出さなくなってしまうということに繋がります。

ただし、スマホを使用しないと子供が落ち着かない、どうすればよいかわからないという質問もよくうけます。
つまり親も子供とどう関わっていいかわからないというケースです。
メディアを禁止する、見ない時間を作った時に子供とどのように関わればよいかわからない(どのように遊べばよいかわからない)親御さんへの育児支援を考えなければなりません。
保健所の保育士の先生や児童館の先生、そこに遊びに来ている先輩ママさん、保育園に通っていれば保育園の先生に体を使った遊びを教えてもらうのが1番かと思います。
しかし、新型コロナウイルス感染症のため、自宅での育児を余儀なくされており、本来であれば保健所の育児相談に行くことや児童館、公園等の外遊びに行くことが、感染が怖くて行けない、外出するのは予防接種のみという親御さんがこの数年非常に多かったですし、現在でも多い印象です。

育児をするのがとても難しい環境ですが、このブログを見て思うところがあればぜひ行動していただければいいなと思っています。
次の記事は日本語と英語を同時に学ぶバイリンガル育児について説明したいと思います。

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