小児の新型コロナウイルスに関する論文の紹介 vol.2(5月9日現在) 

引き続き、小児に関する論文を紹介します。

イタリアでの報告 新型コロナウイルス感染症と診断された小児100人の特徴について

イタリアにて、PCR検査により新型コロナウイルスと診断された小児患者100例の報告です。
新型コロナウイルスに罹患した18歳未満の子どもはイタリアでの感染総数の1%でした。
年齢中央値は3.3歳で、感染源が不明あるいは家族以外であった例は55%を占めていました。
37.6℃以上の体温を54%に認め、咳を44%に認めました。
酸素飽和度が95%未満だった患者は4%で、これらの症例は画像所見で肺炎を認めました。
呼吸補助を要した9例のうち6例は基礎疾患のある患者でした。
全体として21%は無症状、58%は軽症、19%は中等症、1%は重症、1%は重篤でしたが、死亡例はありませんでした1)

中国武漢と上海における接触者調査の報告

2020年2月1日から10日までを接触者調査期間とし、2019年12月24日から30日までをベースラインとして使用し比較検討しています。

武漢と上海において強力な行動制限を行った結果、日常的な接触機会は7-8分の1に減少しました。
そのため、感染源は家庭内に限定されました。
小児(0-14歳)が感染する割合は成人(15-64歳)と比べて低く(オッズ比0.34)、65歳以上の人は成人(15-64歳)と比べて高いことが示されました(オッズ比 1.47)。
このデータに基づいて、Social distancingと学校閉鎖単独の効果を検討しています。
結果は、中国で実施したような強力なsocial distancingによりCOVID19の制御が可能であることが確認されました。
その一方で、学校閉鎖単独では流行極期のピークを4-6割下げて遅らせる事が可能でしたが、感染伝播を制御することは出来ない事が示されています2)

中国湖北省での報告 小児の外出制限による精神状態に対する影響について

武漢では外出制限が2020年1月23日から最大4月8日まで行われました。
武漢と、武漢から52マイル離れた黄石在住の計2,330名の小学校2-6年生が調査対象となりました(回答率76.6%)。
制限期間は中央値33.7日でした。
22.6%で抑うつ、18.9%で不安の徴候を示していました。
COVID-19流行期に、屋外活動や社会的交流が減少することは、子どもの抑うつ傾向と関連がありました3)

2020年4月19日までの周産期領域のCOVID-19に関する論文のまとめ

33の論文が選択されており、385名のCOVID-19妊婦とその児が報告されています。
妊婦のほとんどが軽症(95.6%)で、重症例は3.6%、重篤例は0.8%でした。
分娩となった妊婦252名中、69.4%が帝王切開、30.6%が経腟分娩でした。
出生した児256名中、早産15.2%、低出生体重7.8%、人工換気療法1.2%、RDS(出生後の呼吸障害のこと)4.7%、肺炎1.2%、DIC(多臓器の循環不全)1.2%でした。
重篤な妊婦からは死産児2名、早産児1名が早期新生児死亡でした。

PCR陽性であった新生児4名(帝王切開出生)は、すべて軽症で退院できました。
母乳栄養の29名が報告され、26例の母乳のPCRはすべて陰性でした。
COVID-19の妊婦は非妊娠の成人と変わらない症状と重症度であることが示されています4)

イタリアにおけるCOVID-19流行期に認められた皮膚病変(凍傷様)を認めた症例に関する報告

イタリアの小児科医と皮膚科医を対象にオンライン調査を行い、5日間で63例の凍傷様の皮膚所見の報告を得ました。
男女比に差はなく(57.4% 女性、47.6% 男性)、年齢の中央値は14歳(IQR: 12-16)でした。
所見は足のみの症例が多く(85.7%)、次いで足と手両方(7%)、手のみ(6%)にみとめられました。
疼痛と掻痒感は それぞれ27%に認められ、両方を訴えたのは20.6%。症状出現から診断まで平均10日で14.3%は反復性でした。
COVID-19 の診断検査は11例に行われ2 例のみ陽性で、血清学的な診断は6例中2例で陽性でした。

著者はまだ陽性例が少ないためこの所見がCOVID-19の症状に特徴的であるとは言えないと述べています。
ですが、COVID-19の流行期に皮膚所見が増えたことは事実であり、健康で若年の小児がこの皮膚所見を有していればCOVID-19との関連が否定されるまでは感染性があると考慮すべきと述べています5)

以下に論文内に掲載されている写真を添付します。ご気分を害する可能性があります。注意ください。

 

 

 

 

 

 

論文原本のPDFを添付します。詳細はこちらをご確認ください。URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/jdv.16526

このような所見があれば必ずクリニックに電話連絡をお願いします

まとめ

以前に報告した内容とかぶる点が多いですが、引き続き小児での重症例は少ないことが報告されています。
妊婦さんだからといって重症度があがるということも今のところ報告はありません。
出生した新生児も軽症がほどんどです。
しかし、繰り返しになりますが重症例が0ではありません。
残念ながら、重篤化した妊婦から死産となってしまった赤ちゃんもいます。決して油断しないでください!

そしてこころの問題も深刻です。
武漢ほど強い制限ではありませんが、今後日本でも抑うつ傾向が出てくると思います。
実際に、ストレスが原因と思われる症状の訴えを相談される電話も増えてきています。
こころの問題についてもブログを作成しています。今一度確認ください。

最後の論文では、凍傷のような皮膚所見とCOVID-19が関連している可能性が示されています。
しもやけ様の所見がみられた際は必ずスマホで写真を撮影し相談ください。
同様の報告が2週間で5本論文が出ています。いずれも小児か若年成人です。

写真は静岡県の丹奈にあるオラッチェ牧場です。
この牧場では野菜の収穫体験が出来ます。牧場から歩いて畑に行く道がとても好きで撮影しました。
オラッチェ牧場のソフトクリームは最高で、家族全員のお気に入りです。
もちろん現在は休業中です。夏には営業を再開し、野菜を収穫出来ることを楽しみにしています。

引き続き大変な時期が続きますが、Enjoy Homeで乗り切りましょう!!

1) Parri N, et al. Coronavirus Infection in Pediatric Emergency Departments (CONFIDENCE) Research Group. Children with Covid-19 in Pediatric Emergency Departments in Italy [published online ahead of print, 2020 May 1. N Engl J Med. 2020;10.1056/NEJMc2007617. doi:10.1056/NEJMc2007617
2) Zhang J, et al. Changes in contact patterns shape the dynamics of the COVID-19 outbreak in China. Science. 2020 Apr 29:eabb8001. doi: 10.1126/science.abb8001. Online ahead of print. Science. 2020.PMID: 32350060
3) Xie X, et al. Mental Health Status Among Children in Home Confinement During the Coronavirus Disease 2019 Outbreak in Hubei Province, China. JAMA Pediatr. 2020 Apr 24. doi : 10. 1001 / jamapediatrics. 2020. 1619.
4) Elshafeey F, et al. A systematic scoping review of COVID-19 during pregnancy and childbirth. Int J Gynaecol Obstet. 2020 Apr 24. doi : 10.1002 / ijgo. 13182.
5) Piccolo V, et al. Chilblain-like lesions during COVID-19 epidemic: a preliminary study on 63 patients. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2020 Apr 24. doi: 10.1111/jdv.16526. Online ahead of print.J Eur Acad Dermatol Venereol. 2020.PMID: 32330334

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