気管支喘息について vol.1 (乳幼児喘息の診断、喘鳴の分類について)

2021年夏はRSウイルス感染症が流行しました。RSウイルス感染症は喘鳴(ゼーゼーする)を伴う咳嗽が多いため、「我が子は気管支喘息なのでしょうか?」という質問を多くいただきました。
そのため、気管支喘息についてブログで説明をしたいと思います。

1番大事なポイントは、5歳までのゼーゼーはただ気管支が弱いだけの可能性があるが、6歳以上のゼーゼーは本物の喘息かもしれない。
これが1番伝えたいことですが、それ以外も大事なことばかりであり今回のブログはとても長いです。

喘息についてはガイドラインがかなり出ており正直まとめるのが大変です。
私は小児科ですから、1番大事なガイドラインである小児気管支喘息ガイドラインの他に

日本喘息学会が提唱するガイドライン

日本アレルギー学会が提唱するガイドライン

ガイドライン以外にも、

このようなものもあります。あげればまだまだありますが、これらの本の内容を全てまとめるとかなりの文字数になってしまうので、なるべくコンパクトに数記事にわけて解説していきたいと思います。

はじめに 喘息(ぜんそく)と喘鳴(ぜんめい)の言葉の違いについて

これからの説明を読んでいく上で注意してほしい言葉があります。
喘息(ぜんそく)と喘鳴(ぜんめい)です。

喘息は気管支喘息の意味であり診断名です。

喘鳴は呼吸したときに「ゼーゼー」とか「ヒューヒュー」する異常な呼吸音を意味します。
喘息と喘鳴を混同しないように注意して読んでくださいね。

気管支喘息の定義

ガイドラインの最初に、喘息の定義が説明されています。

「喘息は気道の慢性炎症を特徴とし、発作性に起こる気道狭窄によって、咳嗽、呼気性喘鳴(息をはくときにゼーゼーする)、呼吸困難を繰り返す疾患である」と書いてあります。
簡単に言うと「長期にわたり咳がでたりゼーゼーする」と気管支喘息というわけなのです。

かなりアバウトな定義です。
では具体的にどのようにして診断するか確認していきましょう。

気管支喘息の診断 まず5歳以下の乳幼児喘息について

5歳以下の乳幼児期の喘息と6歳以上の喘息で診断方法が異なります。
5歳以下の診断についてガイドラインに記載されている文章を示します。

小児の喘息の多くが乳幼児期に発症し、5歳以下の反復性喘鳴受診までに何回もゼーゼーするエピソードがある)のうち24時間以上続く明らかな呼気性喘鳴(息をはくときにゼーゼー)を3エピソード以上繰り返し、喘息の治療により改善する場合に「乳幼児喘息」と診断する。と書いてあります。

簡単に言い換えると、「5歳以下でゼーゼーしてクリニックを受診し、治療で改善したことが3回ある」というエピソードがあれば乳幼児喘息の診断になるのです。
この乳幼児喘息の定義は結構な人が当てはまると思います。

最初にRSウイルス感染症について少し触れました。RSウイルス感染症に罹患した後の風邪で毎回ゼーゼーしているけども、、、と考える親御さんは実際かなりいると思います。
乳幼児は年長児と比較して気管支が細いこと、分泌物(痰や鼻汁)が多いことからすぐに気管支が狭窄して喘鳴(ゼーゼー)をおこしやすいという特徴があります。
乳幼児喘息の診断に当てはまるお子さんが将来全員喘息になるのか、そうでないのかが知りたいポイントだと思います。

喘鳴にも分類があります。5歳以下で喘鳴が出た場合、どのような経過をとるのかを深堀していきましょう。

日本人の喘鳴の分類について

日本人小児の喘鳴(ゼーゼー)の有症率は、1歳 20.3%、2歳 24.2%、3歳 15.7%、4歳 16.2%、5歳 16.9%、6歳 14.0%、7歳 12.6%、8歳 10.4%、9歳 9.3%と報告されています。
喘鳴があるお子さんは2歳がピークであり6歳から年齢とともに低下傾向になります1)
そして、喘鳴(ゼーゼー)の分類は日本においては5つにわかれます。
下の図の解説です。横軸が年齢、縦軸が喘鳴の確率です。

喘鳴をほとんど経験しない健常者(43.7%:赤色)、乳児一過性喘鳴(32.2%:緑色)、持続型喘鳴(9.2%:黄色)、早期発症寛解型(8.6%:ピンク)、学童前期発症寛解型(6.2%:青色)に分類されます。

Yang L, Narita M, Yamamoto-Hanada K, Sakamoto N, Saito H, Ohya Y. Phenotypes of childhood wheeze in Japanese children: A group-based trajectory analysis. Pediatr Allergy Immunol. 2018 Sep;29(6):606-611. doi: 10.1111/pai.12917. Epub 2018 Jun 5. PMID: 29698561.

この図からわかることは、5歳未満で喘鳴(ゼーゼー)がある子は大きく3つに分類されます。
緑色の5歳頃にはほぼ治癒する乳児一過性喘鳴か、ピンク色の8歳頃に治癒する早期発症寛解型か、黄色の喘鳴が成人になっても持ち越される持続型喘鳴の3パターンです。

例えば、2歳でゼーゼーを主訴にクリニックに受診した子がいたとします。喘鳴を繰り返して乳幼児喘息の診断を受けたとしても、5歳までに治癒する子もいれば、8歳までに治癒する子もいるし、成人に喘息が持ち越される子も同程度の割合で存在するということになるわけです。

この分類はなにかの検査で判断することは出来ません。
今の喘鳴は治るかもしれないし、将来的に喘息として付き合っていくことになるかもしれません。
年齢を重ねて経過してみないとわからないですが、全員が喘息になるわけではないということを伝えたかったのです。次に世界の喘鳴の分類も説明します。

世界の喘鳴の分類について

世界の喘鳴の分類2)になります。下の図は横軸が年齢、縦軸が喘鳴の頻度になります。

Taussig LM, Wright AL, Holberg CJ, Halonen M, Morgan WJ, Martinez FD. Tucson Children’s Respiratory Study: 1980 to present. J Allergy Clin Immunol. 2003 Apr;111(4):661-75; quiz 676. doi: 10.1067/mai.2003.162. PMID: 12704342.

世界の喘鳴の分類は大きく3つです。
Transient early wheezers(一過性初期喘鳴群)、Non-atopic wheezers(非アトピー型喘鳴群)、IgE-associated wheeze/Asthma(IgE関連喘鳴/喘息)になります。

だいたい日本の分類に似ており、言いたいことはほぼ同じです。
世界の分類では3歳と6歳を1つの分岐点と考えています。6歳を超えると喘息である可能性が高いと言えます。

ここまでのまとめ

受診までに何回もゼーゼーするエピソードがあることを反復性喘鳴といいました。
5歳未満の反復性喘鳴は日本では5歳頃にはほぼ治癒する乳児一過性喘鳴か、8歳頃に治癒する早期発症寛解型か、喘鳴が成人になっても持ち越される持続型喘鳴の3パターンでした。
喘鳴の世界の分類では 5歳頃にはほぼ治癒する一過性初期喘鳴群ゆっくり治癒していく非アトピー型喘鳴群成人に持ち越されるIgE関連喘鳴/喘息の3パターンでした。

そして、これらの反復性喘鳴が3回あると5歳以下で乳幼児喘息の診断になる。

ここまでは理解できたでしょうか。次は乳幼児喘息の分類にいきます。

1) Yang L, Narita M, Yamamoto-Hanada K, Sakamoto N, Saito H, Ohya Y. Phenotypes of childhood wheeze in Japanese children: A group-based trajectory analysis. Pediatr Allergy Immunol. 2018 Sep;29(6):606-611. doi: 10.1111/pai.12917. Epub 2018 Jun 5. PMID: 29698561.
2) Taussig LM, Wright AL, Holberg CJ, Halonen M, Morgan WJ, Martinez FD. Tucson Children’s Respiratory Study: 1980 to present. J Allergy Clin Immunol. 2003 Apr;111(4):661-75; quiz 676. doi: 10.1067/mai.2003.162. PMID: 12704342.

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