肥満でお悩みのご家族の方へ(小児生活習慣病専門外来について)

毎週木曜日午後に杉田医師による小児生活習慣病専門外来(肥満外来)が新設されましたので、このブログ記事を確認していただき、全体像を把握していただければと思っています。

小児科ですから、いきなり受診後採血で精査をすることはありません。もしすでに区の肥満検診でひっかかり、血液検査をされている場合はその結果を持参いただければより詳細な説明ができると思います。

区の肥満検診での説明がよくわからなかった場合や、より細やかなフォローアップを希望される場合に当院を利用していただければと思っています。

杉田先生については下記記事で紹介していますので確認いただければと思います。

では流れを説明していきましょう。

小児生活習慣病専門外来で行うこと

まず身体測定、身長、体重測定をおこない肥満度を確認します。

肥満度={(実測体重-標準体重)/標準体重}×100 

で20%以上となるものを肥満と定義します。
20-30%未満を軽度、30-50%を中等度、50%以上を高度と分類します。

肥満度に関しては下記の福岡県メディカルセンターのサイトがとても便利ですので実際の数値をいれて確認してみてください。リンクを貼っておきます。

https://www.fmc.fukuoka.med.or.jp/fmc/service/himando.asp

まず、身長と体重のバランスでどの程度の肥満度かを確認しましょう。(InBody記載の肥満度と違うので注意!)

次にウエスト周囲長を測定しウエスト身長比を確認します。
内臓脂肪がおおいタイプの肥満に関してはウエストの周囲長が参考になります。

中学生は80㎝以上、小学生は75㎝以上、ウエスト身長比(ウエスト周囲径/身長)0.5以上で内臓脂肪蓄積の疑いとします。

そしてInBody測定です。InBodyに関しては下記のブログ記事を確認ください。

InBodyで体脂肪量と骨格筋量のバランスを確認していきます。
体重が重く肥満度が高くても、体脂肪が少なく筋肉が多ければアスリート体型ということになりますし、やはり体脂肪が高ければ治療が必要である等の説明をしていきます。

当院ではいきなり採血は行いません。そのため、身長、体重、腹囲、InBody計測でまず自分の状態を確認していきましょう。

そもそも肥満とは

肥満というのは太っている状態を指す言葉ですが、肥満症というのは肥満に加えて健康をおびやかす合併症がある場合やそのリスクが高い状態を指します。

ではその診断基準についてみていきましょう。

小児肥満症の診断基準について

小児肥満症の診断基準の理解は少し難しいですがひとつずつ説明していきましょう。

まず、肥満度が20%以上あることが条件です。

加えて高血圧、糖尿病、内臓脂肪型肥満睡眠時無呼吸症候群、早期動脈硬化のうちの1つがみられると診断確定となります。

小児のうちから高血圧である方は非常に稀です。
糖尿病は尿検査で尿糖陽性等あれば精査をしていきますが、やはり稀です。
早期動脈硬化(血管が硬くなること)に関しては超音波検査を行わないとわかりませんが、動脈硬化がみられる場合、すでに採血で異常がみられているはずです。

高血圧は当院で血圧測定をして正常を確認することができます。
糖尿病は尿検査をして尿糖陰性を確認し正常を確認できます。(もちろん本当は採血)

内臓脂肪型肥満は先ほど記載した、
中学生は80㎝以上、小学生は75㎝以上、ウエスト身長比(ウエスト周囲径/身長)0.5以上で内臓脂肪蓄積の疑いとします。そのため、腹囲の計測で問題なければ現状は内臓脂肪型肥満とはなりません。ですが、小学生でいきなり腹囲75㎝の人はほとんどいません。
メタボリックシンドロームは肥満のあるなしに関わらず、内臓脂肪がたまっている状態を指し、動脈が硬くなる病気(動脈硬化)との関係が強いことが知られています。
そのためInBodyの計測が重要となります。

睡眠時無呼吸症候群に関しては、当院で検査機器を購入していますから貸出をして検査をすることが可能です。(もちろん費用はかかりません)

いびきがきになる方、睡眠中に呼吸をとめているかもしれないと思う場合、積極的に検査をして数値として無呼吸の回数を測定してみるのがよいと思います。

検査をして睡眠時無呼吸症候群の診断確定となれば扁桃摘出等の治療となりますのでその場合はまた追加で説明します。

これらの疾患がない場合は、

肥満度が50%以上
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、高インスリン血症、黒色表皮症、高TG血症、高non HDL-C血症、低HDL-C血症、高尿酸血症(6mg/dl以上)が1項目、肥満度が50%未満で2つ以上を満たすと診断確定となります。

これらは採血や超音波検査が必要です。当院で採血をした場合はその結果とあわせて説明します。超音波検査もいずれ当院で購入して検査出来るように体制を整えていきたいと思っています。

治療について

治療に関しては、体重を減らすことではなく、内臓脂肪を減らすことで肥満に伴う合併症の数を減らすことが目標です。

そのために、食事療法、運動療法、行動療法と大きくわけて3つに分類されます。確認していきましょう。

食事療法について

食事療法は可能であれば3日分のメニューを写真で持参いただくとよいと思います。
その食事からなぜ摂取エネルギーが多いのかを検討すると概ね3つのパターンにわけられます。

1:お米、パン、甘いのもの好きの糖質過剰タイプ
2:おやつ、ジュースが多すぎの糖質・脂質過剰タイプ
3:おかずばっかり食べる脂質過剰タイプ

この3つのタイプにわけることで重点的に何を制限すれば効率的なのかを相談していきます。

私は

ジュース、スナック菓子、菓子パンは禁止!家に置くことも禁止!!
必ず飲み物はお茶ないしお水!

と言ってきましたが、いきなりは難しいです。杉田先生からのアドバイスとしては

  • おやつは150から200 kcalを目安に。
  • クッキーやチョコレート、ポテトチップスなど、いつも食べているおやつがどのくらいのカロリーなのか調べてみて、自分のおやつの量を覚える
  • アイスクリームよりもシャーベット、プリンよりもゼリーといった工夫をする。
  • 果物を取り入れるのもよい。
  • ジュース、炭酸飲料、乳酸菌飲料、スポーツ飲料などは砂糖をたくさん含んでいるので、お茶やお水に変える
  • どうしても飲みたい時はおやつを控える。

になります。

そのため、家族の協力が大変重要となります。

またよく聞く質問に「おかわり」があります。
よく食べ、よく運動するからダメ?という質問です。
また親御さんからも成長期なのに食べるを我慢させるのは可哀想ではないか?とも質問されます。

給食でおかわりは禁止する指導もありますが、私は「おかわり禁止」よりも「おかわりまで20分ルール」がよいと思っています。

肥満症のお子さんは「早食い、噛まない」という食べ方の特徴があります。
そのため「実際におかわりはしてもいいけど、20分経過してからにしようね」と指導すると、意外とおかわりをしなくなるのです。(少しゆっくり食べるようになる、また血糖値が上がってくるため本人が満足する)
もちろん小皿に盛ったり、小分けに食事を提供すること(大変ですが、コース料理のように提供する)で食事の満足度をあげるよう工夫するのも大事な指導内容になります。
ぜひ試してみてください。

また、食物繊維が不足していますので、野菜、きのこ、いも類、海藻なのを積極的に摂取してもらいます。
可能であれば1つの種類を多く食べるより、種類を増やして少量ずつ摂取するほうがよいです。

タンパク質に関しては足りていることが多い(みんなお肉大好き)ため、脂の少ないお肉に変更し、調理法を変更することで対応します。

もっと細かく指導することは出来ますが(1日の摂取カロリーの目標とか、タンパク、脂質、炭水化物の比率とか)まずは概ねこの内容で実践しながら、数か月に1回(もちろん毎月でも可能)のInBody測定がよいと思います。

すこしずつでも体脂肪の数値が改善していればモチベーションになると思いますので、一緒に頑張っていきましょう。

運動療法について

可能な限り運動をすることで消費エネルギーを増やすことを試みます。
ですが、大半が運動嫌い、動きたくないというお子さんが多いのが実際です。

そのため、まず日常生活での活動量を増加させるように促します。
具体的には、歩くことを増やし、家事の手伝いをさせることです。
これらをすることで、座ったり、寝転がる時間を減らすことが目的です。

次に本人が好きな運動や外遊びを積極的に行うことです。

ややきついなと感じる程度(心拍数120-140拍/分)で20-30分以上、週2-3回でおこなってもらいます。
教科書的には、1日あたり500-1000歩(外遊びを10-15分)増やし、最終的には合計60分程度行うと記載がありますがなかなか難しいものです。

大事なポイントは「何をするか自分で決める」です。

自分で出来るかなと思うことを決めて、実際に出来た場合、小さな達成感と成功体験を得る事が出来ます。
これを徹底的に積み上げていきます。
食事療法でも同様ですが、やらされるのではなく、自分が決めるということがなにより大事だと思います。

もし運動の習慣が難しければ院長と一緒に新極真会、光が丘道場で空手を頑張りましょう。

空手に関しては上記の記事で空手の魅力を発信しています。有酸素運動であること、挨拶を含め礼儀作法を学べること、光が丘道場の師範の人柄含めおすすめです。

私も健康のため毎週稽古をしていますので、一緒に頑張りましょう。

行動療法について

行動療法は具体的にはセルフモニタリングといって自分で監視することがとても大切です。

具体的には、毎日体重を測定し記録します。記録が大事でカレンダー等に記載することで毎日の変化を確認します。(これも意外と難しい。。。)

肥満児においては、現在の体重をキープすることが何よりも重要です
身長が伸びて、体重が現状維持できればそれは相対的な減量を意味します。
その際に成長曲線をよく利用しますので、全て自分で記録して振り返ることが大切です。

最後にもう一つ重要な点は親御さんも同様に治療に参加することです。
肥満のお子さんの親御さんが肥満である場合、7割が成人肥満に移行することが分かっています。
そのため必ず親御さんも協力していただくことがとても重要な条件です。
親が高脂肪食や甘いものを食べていてはお子さんの肥満は改善しませんし、ご褒美に食べ物を使用していても肥満が改善するわけがありません。
そして子どもの小さな成功体験を見つけてあげて、いっぱいほめてあげること。
すごく重要なポイントです。本人のモチベーション維持は親御さんにかかっているといっても過言ではありません。
最終的には親自身が望ましいモデルとなることが必要です。

もし希望があれば親御さんもInBody計測をして親子で比較しながら経過をみるのもよいと思います。
男性医師がよければ私がみますし、女性医師がよければ杉田先生にお願いしますのでクリニックを使って健康になるためのきっかけにしていただければと思っています。

まとめ

小児生活習慣病専門外来の説明をしました。

やはり大事なことが今の状態を確認することです。

InBodyでの体脂肪測定、筋肉量を測定することは痛みを伴いませんので気になったら測定がよいと思います。

そして肥満度が高い、体脂肪量が多い場合に当院の杉田先生に相談するがよいと思います。

生活習慣病、肥満に関しては年単位でフォローする必要があり継続することがとても重要です。小児科の仕事は、小児科を離れた成人での生活習慣病の発症をいかに予防するかです。
一緒に頑張っていきましょう!

以上になります。

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