ベビーバンドが頭蓋変形に効果があるという内容の論文がアクセプトされました。

この論文は私の上司の日大板橋病院 小児科 長野先生が論文を投稿されアクセプトされた論文の紹介です。2024年の10月にアクセプトされていましたがなかなかブログの更新が出来ずにいました。

論文の本サイトを下記に添付しておきますので詳細を確認したい方は本文から確認お願いします。

https://www.mdpi.com/2077-0383/13/19/5952

共同研究者として私の名前も記載があります。
当院でも引き続き研究を続け社会貢献できるよう頑張りたいです。

内容を1つずつ説明していくのですが、伝えたいことは大きく3つです。いつものように結論から。

・ベビーバンドがヘルメット療法に効果がある!(CVAIの評価別に最重症で約9% 、重症で約7%、中等症で約4%改善する)
・治療期間は約4か月であり、いままで報告されていた他のヘルメットと比較して短く治療期間を終えられた。
・生後7か月を超えた児でも効果は低くなるが改善はする!(CVAIで約4%改善する)

になります。

治療期間が短くてすむというのは親御さんとお子さんの負担が減るのでとてもよいと考えますし、生後7か月以上の児でも改善する可能性があることが証明されました。治療をするかは主治医の先生と相談にはなりますが、時期を少し逃してしまったとしても諦めずに相談してほしいと思います。

CVAI等専門用語が出てきます。
まず斜頭症の基礎知識として長いですが、以前に記載したブログがあります。

この記事を読んでいない方はまずこちらを読んでいただけると幸いです。
この論文では研究テーマが7つあります。より重要な点をこの記事では説明していますので順番に確認していきましょう。

今回の研究の対象となったお子さんは224人でした。

まずはじめにどのようなお子さんが対象になったかの説明からです。

2023年7月から2024年5月まで、日本大学板橋病院を含む複数の医療機関にて、中等度から最重度の斜頭症の症例に対して、ベビーバンドを用いてヘルメット療法開始した児224人が対象となりました。早産児や軽症の斜頭症の児が49人除外されています。

ヘルメット療法の開始は平均生後5か月でした。

治療開始月齢は重症度によって少し違いますが、おおむね5か月であり、平均5.3か月でした。

ヘルメット療法をおこなった平均生後5か月の224人がどうなったのかをみてみましょう。

ベビーバンド の有効性(CVAIの改善度)を、ヘルメット療法の前後で評価した。

まず研究テーマの1つめ、ベビーバンドで頭の形は改善したのかについての結果です。

CVAIの重症度別に線が引かれています。
・最重症29人(緑の線)は平均値−9.1 ± 2.3
・重症112人(オレンジの線)は平均値−6.6 ± 1.8
・中等症83人(青の線)は平均値−4.4 ± 1.4
CVAIが改善したことがわかりました。
全ての重症度で軽症まで改善していることがわかります。(中等症のみが正常まで改善)

しっかり改善していることがわかる一方、全症例が完全に丸くなるわけではないことがわかります。

平均治療期間は最重症で4.0か月、重症群で3.4か月、中等症群で3.5か月であり、最重症群の期間が最も長かったという結果でした。

生後7か月未満で療法を開始した乳児と、生後7か月以降で療法を開始した乳児で比較した。

下の図は青の線が生後7ヶ月未満(平均約5か月)で治療を開始したグループ(202人)オレンジの線は7ヶ月以上(平均8か月)で治療を開始したグループ(22人)のCVAIの変化を示しています。

7ヶ月未満で治療を開始したグループは、CVAIが平均値-6.3 ± 2.3改善しています。
一方7ヶ月以上で治療を開始したグループも平均値-4.4 ± 1.6に改善しています。
平均治療期間は、7ヶ月未満グループで3.5ヶ月、7ヶ月以上で治療を開始したグループで3.9ヶ月でした。

そのため、生後6か月以降でヘルメット療法を開始してもCVAIで約4%は改善することがわかりました。

その他の研究テーマについて

ここまでがこの論文の1番重要な点になります。その他補足としてわかったことを追記していきます。

主治医間でCVAI改善度(ΔCVAI:治療前のCVAI − 治療後のCVAI)を比較した。

→主治医によるヘルメット療法の改善に差はなかった。
そのためベビーバンドをオーダーメイドで作成、20時間以上装着していただければどの施設でも改善することがわかりました。

性別がCVAIの改善に影響を与えるかどうかを調べた。

→性別による改善の差はなかった。

ヘルメット療法が成長を阻害して頭囲の成長に影響を及ぼすか

→これまで報告した正常曲線と比較してヘルメットによる明らかな頭囲の発育阻害は認められなかった。
この報告はとても大事でして、ヘルメット療法をおこなうことで脳発達に影響を及ぼさないという重要な証明となります。

ヘルメット療法の副作用として頭部皮膚炎の頻度を調査した。

→ヘルメット療法による赤みの発生率は 5 名 (2.2%) でした。いずれの症例でも、一時的なヘルメットの中断、軟膏の塗布、クッションの追加により赤みは改善し重症例はありませんでした。

皮膚炎に関しては親御さんが心配されるところだと思います。発生率は2%ということで少ないですが、大事なポイントは主治医の先生がしっかり対応されている点だと思います。
皮膚炎はどうしても一定数みられますので心配な際は必ず主治医の先生に相談できることを確認してくださいね。

CVAIの改善が影響する因子を調べた。

→性別、治療開始年齢、治療期間、担当医について影響する因子を調査したところ、治療開始月齢のみが影響していることがわかりました。そのため、生後6か月までに治療することでより改善するということが改めてわかりました。

やはり治療を早く開始すること、しっかり20時間以上装着することだけが改善に影響する因子のようです。

まとめ

昨年10月にアクセプトされた論文の紹介をしました。
この論文でベビーバンドでもしっかり改善することが論文にて証明されました。

ヘルメット療法は確かに斜頭症を改善しますが、完璧な丸い頭になるわけではありません。
ですが、ヘルメット療法は自費診療ですので高額です。
親御さんからは高額なお金を払うのだから完璧な丸い頭になるものだと思い受診される方は多いです。

そのため、治療を開始する前に親御さんへ説明する内容がとても重要です。
今回の論文では重症度別にどれくらい改善するかの数値が示されました。
お近くのクリニックや大学病院にて3Dスキャン、またはノギスでの測定を行い重症度が判明した場合、この数値くらいはよくなるのだなという指標をお示しすることでより親御さんの納得感が得られると思います。そのため、この論文は親御さんにとってはとても重要な内容ではないかなと感じています。

引き続き頭蓋変形に関するエビデンスを日本大学板橋病院の先生方と協力して発信していければよいなと感じています。

斜頭症で悩まれているご家族でこういったことが知りたいということがあれば、この論文のコメント欄に記載いただければ幸いです。次の研究テーマとして検討したいと思います。

最後に写真について。
この写真はモビリティーリゾートもてぎ内にありますホンダコレクションホールのF1の展示です。
2025年シーズンは我が家推しのリアムローソン選手がF1レッドブルレーシングに加入となりました。
日本人としては角田選手が加入となれなかったのは残念ですが、スーパーフォーミュラ(SF)ですぐ近くで応援していたリアム選手が世界最高峰の舞台へと進んでいくのを見るのはとても嬉しいです。引き続きF1とSFを楽しみたいと思っています。

このコレクションホールは車好きなら誰しもが興奮するような展示が多いのが特徴ですが、一番は本田宗一郎さんの情熱を感じることができる点です。
この写真の右奥「自動車をやる以上、一番困難な道を歩く」
恐ろしい決意と情熱です。展示を見ながら震えました。

本田宗一郎さんの情熱に少しでも追いつけるよう日々診療頑張りたいと思います。

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