前々からお話していた、乳幼児における斜頭症と斜視の関連はないという論文がアクセプトされましたので紹介します。


無事論文がアクセプトとなりほっとしています。やっとサンスカイの名前が世に公表されました。嬉しいですね。
斜頭症の研究をすることで、頭の形で悩まれている方のために何か1つでも貢献できたらよいなと思っています。1年に1つは世に残る結果として形にしていきたいです。
詳細を確認したい方は下記フォームから原文を確認ください。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/numa/84/5/84_217/_article/-char/ja
今回もまず結論から
- 斜頭症が原因で斜視のリスクがあがることはない。
- 斜視は早期発見・早期治療が重要なので、頭の形に関係なく「目のチェック」を定期的に受けましょう!
になります。これが論文を通じて私から伝えたいメッセージです。
論文の内容を説明していく前に、前提となる斜視の説明からしていきましょう。
この記事の目次
斜視について
斜視とは、物を見ようとしたときに片眼は正面を向いていても、片方が違う方向を向いている状態です。

内側によっていれば内斜視、外側によっていれば外斜視と呼ばれます。
斜視の頻度は約2%といわれています。
斜視の原因ですが、眼球を動かす筋肉や神経に病気があると眼球が動かなくなるため眼の位置がずれて斜視になります。
気をつけたいのが、小児では「偽斜視」といって、鼻の根本が低く、広いため、全く問題ないのですがあたかも内斜視のようにみえることがあります。
そのため乳幼児期の内斜視は様子をみましょうという事が多いのも事実です。
この斜視を当院ではスポットビジョンスクリーナーという機器を用いてスクリーニング検査をおこなっています。
以前に記載したブログ記事を参考にしていただければより詳細な斜視の情報を得ることが出来ます。
このスポットビジョンスクリーナを使用して斜視のない児と斜視のある児の頭の形を比較したというのが今回の研究のテーマとなります。
研究の目的
頭の形の変形は、頭蓋縫合早期癒合症と斜頭症という疾患にわけられます。
頭蓋縫合早期癒合症は斜視と関連があるという報告が以前より多数みられていますが、斜頭症と斜視の関連性に関しての研究はほとんどありません。
本研究は、乳幼児における斜頭症と斜視の関連性を調査することを目的にしました。
方法
私たちは、「実際に頭と目に相関関係があるのか」をきちんと検証するため、3歳未満の乳幼児134名(うち斜視群12名、対照群122名)を対象に研究を行いました。
頭の形のを評価は3Dスキャナーで測定し解析しています。
目の検査はスクリーニング機器と眼科診察
眼科検査は、スポットビジョンスクリーナーという機器を使って、全症例の屈折異常と眼位(目の向き)の異常をスクリーニングしました。スポットビジョンで斜視判定となった場合、眼科専門医による診察を行い、斜視の確定診断をしています。
結果
斜視群と対照群で年齢、性別、在胎週数、出生体重、頭蓋非対称性パラメータ(CVAI、ASR、PSR)に有意差は認められませんでした。
むしろ、対照群は斜視群と比較して斜頭症の重症度が有意に高かった(p < 0.001)という結果でした。
斜視12名のうち5名が斜頭症であり、そのうち4名が軽度、1名が中等度と分類されました。
両群において前頭部変形を伴う斜頭症の重度の児は認められませんでした。
結論
軽症-中等症の斜頭症の児は、乳幼児における斜視リスクの上昇と関連しない。
重度の前頭部変形と伴う斜頭症の児における斜視との関連性を調査するため今後の研究が必要である、と締めくくっています。
院長の意見
今回の結果から言えることは、
- 軽度から中等度の斜頭症では、斜視との有意な関連は認められなかった
→ つまり、一般的に見られる頭の形のゆがみだけでは、斜視の発症リスクは高くならないことがわかりました。
ただし、斜視は早期発見・早期治療が重要なので、頭の形に関係なく「目のチェック」を定期的に受けることを推奨します。
当院では生後6-7か月健診、1歳のワクチン、1歳半健診の3ポイントでスポットビジョンスクリーナを使用して斜視、弱視のスクリーニングをおこなっています。
希望される方は無償で行いますのでお声かけくださいね。
- 重度の斜頭症の児は、斜視の頻度が高まるかどうかはまだ明らかではない。
今後の研究テーマとして斜頭症の児の長期フォロー(3歳、5歳)をおこなっていきます。重度のお子さんも含まれると思いますので、数年後にはもっとより詳細なデータとして明らかになると思います。
まとめ
「斜頭症があっても、斜視との関連はありません。大丈夫ですよ」という保護者の皆さんへの安心を提供するための研究です。
とはいえ、乳幼児の斜視は適切な時期の治療で視覚発達を守ることができるという事実も、ぜひ知っておいて欲しいと思います。
引き続き研究を通じて社会貢献をしつつ、本業の診療も精一杯頑張ります!!
以上になります。















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