アメリカ小児科学会に演題がアクセプトされました!

前回の記事で紹介しました斜頭症研究の続きです。
アメリカ小児科学会(Pediatric Academic Societies (PAS) 2023 Meeting)へ投稿した演題がアクセプトされました!

ポスター発表にはなりますが、今年の目標の1つでしたのでとても嬉しいです。
(今年はこの演題をちゃんと論文化するところまで頑張ります!!)
今回の記事で伝えたいことは、題名の通り

斜視は斜頭症と関連しない!

になります。

まず今回の研究の説明の前に少し復習から。

斜頭症は頭の向き癖で生じるのが原因でした。
それとは別で、生まれつき頭蓋骨の縫合線がくっついてしまうことで、頭の変形がおきてしまう病気が頭蓋骨縫合早期癒合症でした。(この内容は下記の記事に記載あり)

この頭蓋骨縫合早期癒合症は目のまわりの骨の変形がおきるため、斜視が高い確率で合併することが知られています1-5)
斜頭症が重度である場合は、耳の変形だけでなく、前頭部の突出や顔面変形がおきることは以前の記事で説明しました。(この内容は下記の記事に記載あり)

そのため、2000年よりも以前の報告では前頭部斜頭症と斜視の関連があるという報告6)があります。
これまでは、斜頭症と斜視は関連するという記載が世界の論文では多い印象がありました。
しかし実際の私のクリニックでは、頭の変形を心配して受診されたお子さんの斜視の頻度が高い印象は全くありませんでした。
近年の報告では斜頭症患者に斜視が合併しているという記載はほとんどありません。
そのため本当に関連するのか疑問を抱くようになったのが研究のはじまりです。
(2003年に斜視の有病率は一般人口と同程度であると報告している論文7)が1本のみあります。その他、目が垂れ下がるように見えてしまう偽眼瞼下垂が93.7%にあったという報告8)の中に乱視や弱視はなかったと記載があったり、254名のうち1名のみ斜視がみられたという記載のある論文5)がある程度です。)

一般論として、斜視の主な要因は、早産児、遠視屈折異常、および乱視であると記載9)されており、斜頭症についての言及はありません。

今回斜頭症と斜視についての関連を明らかにするために研究を開始しました。
また斜視のお子さんの斜頭症がどの程度の重症度なのかということも明らかになっていませんのでそこも調査しています。
もし興味のある方は1番下の英語の抄録の原本もみていただければと思います。
抄録の内容を日本語で解説していきましょう。

タイトル

斜視は斜頭症と関連しない。

背景

頭蓋骨縫合早期癒合症は、眼窩変形することによって斜視との関連が報告されています。
しかし、斜視と斜頭症との関係は明らかにされていません。
斜頭症が斜視の原因であるとすれば、斜頭症の治療法である頭蓋ヘルメット療法が斜視の予防につながる可能性があります。
また、斜視のある子どもにおける斜頭症の重症度についても、十分な検討がなされていません。

目的

日本人1歳児における斜視と斜頭症の関連性を検討する。

被験者と方法

対象は2020年4月から2022年1月までに当院を受診した健康な1歳児(日本人)です。
CVAI、前頭部対称率(ASR)、後頭部対称率(PSR)はArtec社製3Dスキャナーを用いて測定しました。眼位はSpot Vision Screener®(SVS)を用いて測定しています。
斜頭症の診断はCVAIの値が5.0%を超えるものと定義しました。
斜頭症の重症度はCVAIに基づき、正常:0~4%、軽度:5~6%、中等度:7~9%、>10%で重度と分類しました。
斜視は、内斜視および外斜視は眼球の位置がそれぞれ5°以上、8°以上位置がずれている場合に斜視と定義しています。

結果

134名の児が本研究の対象となりました。
12名(9%)が斜視(内斜視9名、外斜視3名)、122名が正常と分類されました(表参照)。
評価年齢、性別、CVAI、ASR、PSR、DPの数には、両群間で有意な差は認められませんでした。
斜視群で重度の斜頭症は観察されていません。

Table. Infant Characteristics, n=134

 斜視 n=12正常 n=122p-value*
測定月齢, 月17 (12–31)17 (12–29)0.3007
性別, 男性, n (%)6 (50)75 (61)0.5396
CVAI, %4.3 (1.1–9.6)3.9 (0.0–10.7)0.7493
ASR, %93.6 (90.9–97.7)95.65 (83.6–99.9)0.0795
PSR, %92.9 (81.7–100.0)91.6 (78.0–99.5)0.8394
斜頭症, n (%)5 (41.7)38 (31.2)0.5215
斜頭症の重症度, n (%)   
正常7 (58.3)84 (68.9)<0.001
軽症4 (33.3)8 (6.6)
中等症1 (8.3)26 (21.2)
重症0 (0)4 (3.3)

数値は中央値(範囲)で表示

考察

この部分は抄録にはありませんが、結果の解釈となります。

この表は、斜視群と正常群で測定月齢や性別、CVAIやPSR、斜頭症の診断の比率は2つの群でほぼ同じ分布を示していることがわかります。
斜視群では中等症が1人で、重症は存在しませんでした。
この結果から、斜視があるから斜頭症になるわけではなく、別の要因で斜視になっているといえます。
そのため斜頭症の治療の1つであるヘルメット療法をしたからといって斜視が予防されることはないと考えられます。
(有意差はありませんでしたが、ASRのみ中央値は斜視のほうが低くでています。前頭部の斜頭が斜視に影響しているかは症例数を増やして検討してみる価値があります)

結論

日本人1歳児において、斜視は斜頭症と関連性がないと結論した。
ヘルメット療法の適応は斜頭症の重症度によって判断することが望ましいと考える。

まとめ

抄録のまとめを日本語で記載しました。
この研究はどうしても斜視の人数が12名と少ないのですが、斜視の児12名のうちヘルメットの適応となる可能性がある児は1人(8.3%)で、しかも中等症でした。
もちろんたまたま斜頭症のない子が集まっただけの可能性がありますので、今後斜視の人数を増やして研究する必要がありますが、斜頭症と眼科疾患との関連性の研究に一石は投じることが出来たかなと思っています。
また、乱視、遠視、近視についても同様に研究していく予定です。

本番は5月1日、ワシントンDC、ワシントンコンベンションセンターです。
今回の会場もアメリカですから大きいのでしょうね。
ワシントンコンベンションセンターの近くには、アメリカ合衆国議会議事堂、ホワイトハウス、リンカーン記念堂をはじめとする政治の主要建築物のほか、第二次世界大戦記念碑、硫黄島記念碑、キング牧師記念碑などもあるようです。
戦争について、日本の歴史について、差別の歴史について我が子と話し合うきっかけにしたいなと思っています。

発表が終わりましたら記事を作成します。お待ちください。
最後に抄録の原本を添付してこの記事は終了とします。

1) Unnithan AKA, De Jesus O. Plagiocephaly. 2022 Nov 7. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2022 Jan–. PMID: 33232004.
2) Kajdic N, Spazzapan P, Velnar T. Craniosynostosis – Recognition, clinical characteristics, and treatment. Bosn J Basic Med Sci. 2018 May 20;18(2):110-116. doi: 10.17305/bjbms.2017.2083. PMID: 28623672; PMCID: PMC5988529.
3) Ghizoni E, Denadai R, Raposo-Amaral CA, Joaquim AF, Tedeschi H, Raposo-Amaral CE. Diagnosis of infant synostotic and nonsynostotic cranial deformities: a review for pediatricians. Rev Paul Pediatr. 2016 Dec;34(4):495-502. doi: 10.1016/j.rpped.2016.01.004. Epub 2016 May 12. PMID: 27256993; PMCID: PMC5176072.
4) Beuriat PA, Szathmari A, Di Rocco F, Mottolese C. Deformational plagiocephaly: State of the art and review of the literature. Neurochirurgie. 2019 Nov;65(5):322-329. doi: 10.1016/j.neuchi.2019.09.003. Epub 2019 Sep 25. PMID: 31562882.
5) Miller RI, Clarren SK. Long-term developmental outcomes in patients with deformational plagiocephaly. Pediatrics. 2000 Feb;105(2):E26. doi: 10.1542/peds.105.2.e26. PMID: 10654986.
6) Rekate HL. Occipital plagiocephaly: a critical review of the literature. J Neurosurg. 1998 Jul;89(1):24-30. doi: 10.3171/jns.1998.89.1.0024. PMID: 9647168.
7) Gupta PC, Foster J, Crowe S, Papay FA, Luciano M, Traboulsi EI. Ophthalmologic findings in patients with nonsyndromic plagiocephaly. J Craniofac Surg. 2003 Jul;14(4):529-32. doi: 10.1097/00001665-200307000-00026. PMID: 12867869.
8) Schweigert A, Merrill K, Mokhtarzadeh A, Harrison A. Periocular Asymmetry in Infants with Deformational Posterior Plagiocephaly. J Binocul Vis Ocul Motil. 2019 Jan-Mar;69(1):18-23. doi: 10.1080/2576117X.2019.1565275. Epub 2019 Feb 27. PMID: 30811279.
9) Fieß A, Kölb-Keerl R, Schuster AK, Knuf M, Kirchhof B, Muether PS, Bauer J. Prevalence and associated factors of strabismus in former preterm and full-term infants between 4 and 10 Years of age. BMC Ophthalmol. 2017 Dec 2;17(1):228. doi: 10.1186/s12886-017-0605-1. PMID: 29197374; PMCID: PMC5712131.


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