健診について vol.3 1歳半健診で小児科医がなにをみているか解説

1歳半健診の説明をします。
当院では1歳半健診をおこなっていますので医師が何を確認しているのかを予め理解しておくと理解が深まります。

この時期は、
1:身長、体重、頭囲、胸囲が右肩上がりで成長している。
2:歩けるようになる。
3:意味のある単語が3語話せる。
を主に確認しています。意味のある単語が3語出ない場合は追加で
4:興味のある物に対して指さしができるようになる。
5:おもちゃ、スプーンなどの道具を使うことが出来る。
を注意して確認します。

身体計測が正常値で右肩あがり(成長に問題なし)で、歩くことが出来て(整形外科的な疾患がない)、言葉を話す(聴力障害がない、自閉症の疑いがない)ことが出来れば問題ないことがほとんどです。当院では追加で目の検査も行い弱視も否定します。
1つずつ詳しく説明していきましょう。

身体計測

この時期の身体計測値は男女で少し差がありますが
体重 10kg(8-12.5kg) 身長 80㎝(74-85cm)がおおよその値です。
あまりにも痩せている、太っているいうことがなければ右肩上がりで成長していれば問題ありません。

上手に歩けるようになる

ひとり歩きができるようになります。
最初は手をあげたまま歩きますが、歩きがなれてくると、手の位置がさがってきます。
そうすると歩きながら手を使えるようになります。
また手をつないで階段をのぼったり、小さな椅子にのぼることもできるようになります。
早いお子さんだと10か月くらいから歩き始めます。 1歳3か月までに90%のお子さんが歩くようになるといわれています。

ひとり歩きをしないので心配だという親御さんは多いですが、つかまった状態で歩くことが出来ればそこまで心配する必要はありません。
逆に、つかまり歩きもしない場合は整形外科的な疾患が隠れている可能性があるため注意が必要です。
私の2人目の子どもは1歳6か月までひとり歩きをしませんでした。ですが、手をつないで遊ぶトレーニングをすることですぐに歩きました。
1歳6か月で歩かない場合はトレーニングの方法をお伝えしますので相談してくださいね。

意味のある単語を3語話せる

パパ、ママ、ワンワンなどの意味のある単語を3つ話すようになります

1歳6か月児の90%は3語以上の単語を話すという文献1)もあります。ですが、実際は結構話せない子が多い印象です(特に男子は多い)。
喃語(あー、うー、ダダなど)はカウントしません。
もし1歳6か月で単語が3つ出ない場合、1歳6か月から2歳の間は言語発達が急激に伸びる時期ですので、本の読み聞かせの指導をして経過をみます。
2歳になっても単語が増えない場合は紹介となり精査となります。

言語発達が遅い場合の原因は、大きく4つになります。
1:難聴(聴力障害)
2:精神発達遅滞
3:自閉症スペクトラム障害
4:養育環境の問題(スマホ、タブレット等のメディアの見過ぎなど)
があげられます。
難聴の有無については慎重に経過をみる必要があります。難聴であれば補聴器等を使用すればすみやかに言語発達が進むからです。逆に補聴器を使用しなければいつまでたっても言語は出ません。大きな音に反応しない場合は大学病院等で聴力検査をおこない精査します。

言語以外の発達も遅い場合は精神発達遅滞や自閉症スペクトラム障害を疑うことになりますが、1歳6か月健診の短い時間でいきなり診断とはなりません。
経過をみながらお子さんの発達を追っていき、やはり発達が進まなければこれらの疾患を疑っていくことになります。

養育環境の問題として、テレビやタブレットの見過ぎがあります。動画は一方的な刺激であるためインプットは行われても、お子さん自身のアウトプットの時間がありません。
やはり言語発達の基本は絵本の読み聞かせです。
絵本はお子さん自身のアウトプットする時間を親御さんが作ることが出来るというのが1番優れている点だと思います。
ポイントは現実の物と絵本の物をリンクさせながら話かけることです。
親御さんから、「本は読み聞かせるけどすぐどっかに行ってしまう」という質問を多くいただきます。
やはり現実の物を見せて、その関連した本をその場に持っていき、絵を見せるだけでも自宅に戻った際に興味をひく可能性が高いです。
言語発達については説明したいことが多いため、別の記事で詳しく説明することにしましょう。

興味のある物に対して指差しができる、道具を使うことが出来る

絵本だけでなく、絵やおもちゃを見て知っているものに指をさすようになります。
指差しに関しては、難聴があり言葉の指示が入らないと出来ない行動になります。
そのため、言語発達とセットでみることになります。
よくあるのは、指差しはするが、単語を話さない。逆に指差しは出来ないが単語は話すという場合は様子をみるとあとから出来るようになるパターンが多いです。

また、スプーンを使用したり、コップをつかって水を飲めるようになります。これらは微細運動といいますが、積み木が2個つめるようになったり、鉛筆でなぐり書きが出来るようになります。
ですが、これも今までやったことがなく1歳半健診の問診項目にあったので、「前日にやらせてみたけど出来なかった」と心配される親御さんが多いです。
遊びの中でそれらの行動を事前にしてやってみないといきなり出来るようにはなりません。
同じような質問で、スプーンを使用せずにまだ手つかみで食事をするため、スプーンを使用出来ないと心配される親御さんがいます。
手の動きが上達していれば問題ありません。
可能であれば事前に問診項目にある動きを数か月前から自宅で遊びながら練習してみるのがよいと思います。

虫歯に注意

哺乳瓶を使用している場合は虫歯に注意する必要があります
おやつもはじまるため、1歳半健診では、歯科健診がセットです。
歯科診察にて歯並びも含めて確認をしてもらいます。親御さんの仕上げ磨きをしないと虫歯になるため注意が必要です。歯に関しては、以下の記事を参考に再確認してください。

よくある質問

「かんしゃくがすごい強いです。どうすればいいでしょうか。大丈夫でしょうか」です。

1歳を過ぎると自我の芽生えが始まります。まだ我慢や忍耐が出来ませんのでかんしゃくとして行動をとることになります。
精神的な発達を意味するので非常に喜ばしいことですが、親御さんにとっては辛い状況になります。
子どもの行動を観察し、本人が求めていることを親御さんが「子どもの目線」で、「言葉」にすることで、お子さんは落ち着きを取り戻します。
そのためには、まず親御さんの精神状態が落ち着いていることが必要条件となります。

また、第2子が生まれてくるタイミングの方もいると思います。第2子がいる場合は追加で第1子の嫉妬の感情も強くなります。

私の話を少しします。第1子の娘が1歳8か月の時に、第2子の息子が出生しました。1歳半頃から、ただでさえ酷いイヤイヤ期真っ最中でしたので、下の子が産まれた後は、赤ちゃん返り、イヤイヤに更なる磨きがかかりました。
それまで100%母親の愛情を受けていた娘が、保育園に預けられ、自宅に帰ってくると息子の面倒をみているのですから怒るのも当然です。
事前に夫婦で相談しながら娘の気持ちに沿うように対応しましたが、当時の我々は生活するのでいっぱいいっぱいになっていた時期でもあり、娘に対しての対応が不十分であったなと反省しています。
なぜ怒っているのかをゆっくり時間をかけて聞いてあげましょう。
抱っこして落ち着くのであれば抱いてあげましょう。抱っこしてあげることは甘えさせていることではありません。
そしてただ聞くのではなく、本人の思っている感情を親が代弁して表現するように聞いてあげ、共感してあげる事が重要です。
本人の中のよくわからない感情を整理するためです。
文章で書くと上記の通りですが、この状況を親1人で行うのはやはり難しいと思います。
出来る範囲でいいと思いますので頭の片隅においていただければ、振り返ることで次につなげることが出来ると思います。

あとおすすめ(特にパパ)なのが、子供たちが落ち着いている時に家族内でやっているお馴染みの「笑い」を用意しておくことです。
笑いでその場の雰囲気を変えてみるのも作戦の1つです。
私はお決まりのキモい動きや変顔が何種類かありますので、その動きで一時的に笑いにかえてしまいます。(もちろんそれも効果がないくらいかんしゃくが起きてしまうこともありますが)

もし笑いで一瞬落ち着いたならば、パパの次にすべきことは、母と第1子の2人だけの時間をつくってあげることです
もちろんパパと第1子と2人でお話しをすることもよいと思います。
ですが、 ママの愛は偉大です。パパはママの愛には勝てません。
最終的にはママと2人でお話しをして解決する必要があると私は考えています。

「ママよりパパがいい!」と第1子が言っている場合は少し振り返る時間があってもいいかもしれません。(父としては嬉しいですが。)
お子さんが母の愛情を欲してるサインかもしれません。夫婦で最近1週間くらいの生活を見直してみるといいかもしれません。

子どもは大人の我々をよく見ています。急いでいる時や忙しい時に、わざとやっているのではないかと思うくらいのタイミングでグズグズが始まります。
わかってはいるのですが、ついカッとなってしまいます。子ども達からすると親との時間を欲しているわけですから、常日ごろから時間に余裕をもって準備出来るようにしたいものです。
(実際はかなり難しいですし、私もうまく出来てませんが。。。)

1歳半健診の説明をしました。
あくまでこの記載は発達の参考の指標です。
気になる点は主治医の先生に相談してくださいね。

1) 小児科診療(0386-9806)84巻5号 Page617-624(2021.05)

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ABOUT US
能登 孝昇
2023年8月まで氷川台のと小児科クリニック院長を務めました。 2024年4月から赤塚にてサンスカイのと小児科クリニックを開業しました。 今後もこどもに関しての情報と、私の今後について発信していけたらと思います。