年末にかけて海外旅行に出かけるご家族の方が多いようです。
飛行機に乗る際の注意点に関して多く質問いただきましたのでブログで説明します。
小児科医の目線で書き始めると意外と内容が多くなってしまいました。2回にわけます。
本日のテーマは、
飛行機に乗る前に小児科か耳鼻科で、
中耳炎と副鼻腔炎がないことを確認する!
離着陸の際は、耳抜きをする!!
ということです。
まず高度があがった際の飛行機内の環境を確認しましょう。
客室内の気圧は約0.8気圧、温度は約24℃、湿度は10-20%に調整されています。
飛行中に外部の空気を取り入れ清浄化された空気を機内に循環させるシステムがあり、細菌、真菌、ウイルスを99.99%捕獲する「HEPAフィルター」が搭載されています。
臭い、刺激物質、汚染物を取り除く「気体分子フィルター」も搭載されています。
換気する空気は天井から客室を通り、床下両側を抜けていくため、常に2-3分毎に新鮮な空気が流れる仕組みです1)。
そのため、みなさんが心配されている空気感染のリスクは低いと考えます。もちろん隣の席の乗客がインフルエンザ等の感染症であれば感染する可能性はあります。その際はマスク等を利用するしかないですが、子どもはなかなかマスクをしてくれませんので正直難しいかもしれません。
よぼど気になる人は天井付近にある空気口を向ければ、フィルターを通った空気を常に吸うことが出来ますが、湿度の低い乾燥した空気があたりますので、そこまでしなくてもよいと思います。
小児で気をつけるべき点は大きく4つで、
1 気圧の変化 (中耳炎、副鼻腔炎、腹痛、歯の痛み)
2 気圧の低下 (低酸素による呼吸障害)
3 低い湿度 (乾燥)
4 飛行機の揺れ(乗り物酔い、転倒)
になります。
気圧の変化で中耳炎、副鼻腔炎の症状が悪化し、お腹が張ります。
気圧の変化で低酸素になるため、肺炎、気管支喘息のコントロールが悪い人は呼吸障害になります。
湿度が低いため、皮膚の乾燥が進行し皮膚炎の悪化、またドライアイになります。
飛行機の揺れで乗り物酔いになりやすく、突然の揺れで転倒による外傷のリスクがあります2)。
(より詳しく知りたい人は下記を参考ください。)
1-1 航空性中耳炎
鼻と耳をつなぐ管があり、耳管といいます。耳管は普段塞がっています。飛行機が地上から上昇すると1気圧から0.8気圧に低下します。
そうすると鼓膜の内側の気圧がさがり鼻のほうに空気が抜けていきます。逆に着陸すると気圧が0.8気圧から1気圧に上がるため鼻から耳に空気が流入します。
しかし、すぐに耳の気圧があがらないため耳が痛くなったり、耳鳴り、耳閉感がおきます。鼻水がたまっていたりすると中耳炎をおこしやすくなります。
もともと中耳炎がある場合は耳の痛みや頭痛が悪化します。
耳抜きができるお子さんであれば、親御さんと一緒にあらかじめ練習しておくとよいと思います。
唾を飲み込むと耳管が開きますので、乳児であれば哺乳瓶を使用し哺乳させることで予防できます。
1-2 航空性副鼻腔炎
中耳炎と同じ原理で離着陸時に副鼻腔の圧が変化し、頭痛や顔面痛が生じます。
耳鼻科を受診し治療しておく必要があります。
1-3 航空性腹痛
上昇すると気圧が下がることでお腹のガスが膨張します。そのため腹部膨満感や腹痛がおきます。
げっぷやおならを我慢せずに、ゆったりとした格好で搭乗しましょう。
炭酸飲料やイモ類は搭乗前は避けましょう。
1-4 航空性歯痛
虫歯の詰め物の中の空気が膨張することで歯の神経が刺激され痛みを伴うことがあると言われています。
2 酸素分圧の低下
気圧が下がると空気中に含まれる酸素が低下してしまいます。
そのため、生まれつき心臓に病気のあるお子さんは特に注意が必要です。
かならず主治医に相談してください。
気管支喘息の発作があるお子さんは搭乗は控えた方がよいと思います。
コントロールされていれば屯用の治療薬があれば問題ないと思います。
航空機内に持ち込む際はガスの入っている治療薬がありますので、航空会社に相談する必要があります。
3 低い湿度
湿度が低くなることで、乾燥がひどくなり皮膚炎が悪化します。露出の少ない服装にしましょう。
搭乗前に保湿剤を使用することも重要です。
また、脱水症にも注意しこまめに水分補給が必要になります。
コンタクトレンズを使用している方は眼鏡にしたほうがよいでしょう。
4 飛行機の揺れ
乗り物酔いが起きやすいお子さんは、事前に酔い止め薬を1時間前に内服しておきましょう。
飛行機の後方は揺れやすいです。
翼の近くの中央付近は揺れが少ないため座席予約の際に航空会社に相談してもいいかもしれません。
今回は飛行機に乗る際の注意点を説明しました。
次回は飛行機内で起きた救急症例についてまとめた報告がありましたので紹介したいと思っています。
写真は夏に飛行機に乗った際に窓から撮影したものです。
娘は「だるまちゃんとかみなりちゃん」という絵本が好きです。
絵本では雲の上にあるかみなりちゃんの家に行くのですが、娘は飛行機に乗った後、かみなりちゃんの家を必死になって探していました。子どもの発想は本当にかわいいですね。
ちなみに我が家の飛行機事情はというと、、
ベビーバシネットを利用する、搭乗前にプレイスペースでしっかり遊ばせる、空港内のシャワールームでお風呂を済ませたり、おもちゃや本を用意したり、妻と相談しながら入念に準備していますが、毎回機内は戦いです(笑)
我が家のモンスター達は毎度予想を上回ることを機内で繰り出してくるので、父としてはタジタジです。
1) WHO. Tuberculosis and air travel :Guidelines for prevention and control. Italy : Jotto Associati 1999.
2) サトウ菜穂子, 牧信子.【国際化する医療・保険・福祉-インバウンド・アウトバウンド】インバウンド航空機の人体への影響(解説/特集).小児内科. 2017 : 49(6) : 869-875
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