小児の包茎について (乳児健診でよくある質問) 

乳児健診や一般診療での育児相談でよく聞かれる質問に、
「早くから陰部の皮をむいたほうがよいでしょうか」
「皮をむくように言われたのですが、うまく亀頭が出ないのですが」
「育児雑誌に赤ちゃんの時から皮をむいて清潔にするべきであると記載があったのですが」
「大人になった時に困らないように今から治してあげたいです」
「むきむき体操は今からやればよいでしょうか」などなど様々です。

結論から先に言うと、
「ほとんど問題ないことが多いので経過観察でよいです、可能であればパパがお風呂で少し皮をむいてください」です。

1つずつ説明していきましょう。

包茎の定義

包茎は亀頭を包む皮(包皮といいます)と亀頭が癒着することで、亀頭が出せない状態をいいます。

赤ちゃんのほぼ全員が包茎で出生する

産まれた時には基本的に包茎で生まれます。
包茎で生まれてこない場合は別の病気(尿道下裂)を疑います。
そのため、生まれた子供が包茎であることをすぐに心配する必要はありません。

包茎の自然経過について

日本人の報告で亀頭が出せない状態は1~3カ月の乳児で88.5%、4~6カ月で74.4%ですが、10~12 カ月時には58.0%、3歳には35.0%の頻度であると報告1)があります。
その他、生後6カ月未満で完全に亀頭が出せる頻度は0%であったが、11~15歳には 62.9%が完全に亀頭を出せたという報告2)があります。

小学生になるまでに亀頭の先が一部みえる状態であれば、ゆっくり時間はかかりますが自然経過でほとんど見える状態になります。

なかなか皮がむけない場合の治療法は

包皮と亀頭の癒着が強くなかなか皮がむけない場合の治療としては、ステロイド軟膏の塗布が効果的です。
これは主治医の先生が判断します。受診して相談してみてください。

リンデロン®等のステロイド軟膏を1日3回程度、4-6週間塗布することで有効性がある3,4)とされています。
(ステロイドの効果で皮が薄くなり、包皮が伸びやすくなることで改善します)
手術をせずに治療は可能です。
ただし、ステロイドの軟膏を使用したほうがよいかは必ず主治医の先生に相談してください。
何回も書いて申し訳ないですが、ほとんどが自然経過でよくなります。

どのような場合に手術となるのか

包茎により、陰部の先端が閉鎖してしまい排尿障害をおこす場合にのみ手術適応となります。
なにかの拍子に亀頭が包皮から滑り出てしまい、包皮によって亀頭が首を絞められたような状態になることがあります。
これは嵌頓包茎と表現されますが、そのような状態になりましたらすぐに医療機関に受診してください!
亀頭の首が閉まっている状態をすぐにとる必要があるからです。この場合も手術適応です。
その他、尿路感染症を繰り返す場合などがあげられます。

逆に言えば、尿路感染症や排尿障害などの合併症を伴っておらず、亀頭の先が少しでも確認できれば手術の必要はないということになります。

世界での包茎に対する文化の違いについて

世界的に包茎に対し共通認識がないということが1番の問題です。
グローバル化が進んだ現在、包茎に関しては国によって言っていることが違います。
例えば、アメリカでお子さんを出生しアメリカで生活をする場合、約70-80%の頻度で包茎の手術を新生児に行うという事実があります。

またイスラム教やユダヤ教では宗教的な理由でほぼ全員に割礼を行います。
下記の図をご覧ください。この図は包茎手術を行う国の頻度をWHOのデータをもとに作成されたものです。下記にサイトを添付します。

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Global_Map_of_Male_Circumcision_Prevalence_at_Country_Level.png

ヨーロッパや日本では新生児期の包茎手術はほとんど行われていません。
アメリカは宗教的は理由がなく手術をおこなっている珍しい国と言えます。
アメリカ泌尿器科学会から包茎手術に対してのガイドラインが出ていますが、アメリカ小児科学会は全面的には推奨はしていません。

イギリスでは手術の適応がある場合のみであると声明が出されています。
そのため、積極的は手術は推奨されていません。
日本は包茎について日本泌尿器学会からの提言は現在のところありません。
日本において生活するのであるならば、手術はもちろんリスクのある行為ですので適応がなければする必要はないと考えます。

ここからはよくある質問についてです。

亀頭内に白いカスがたまっているのですが大丈夫でしょうか

1歳以降で亀頭と包皮の間に少しずつ隙間ができてきます。そこに皮膚のカスがたまっていきます。医学的には「恥垢」と表現しますが、全く問題はありません。

恥垢がとれそうであれば洗浄していただくでよいと思いますが、無理をして皮をむくことで亀頭と包皮の癒着が無理やりはがれてしまい、炎症を起こすことがあります。

陰茎の成長と、勃起により少しずつ癒着がとれて皮がむけるようになってきます。
ゆっくり時間をかけて様子をみていきましょう。

仮性包茎について

テレビのCMや雑誌等で見かける仮性包茎についてです。
亀頭が包皮に包まれた状態ですが、手で容易にむける状態を指します。

この表現は日本独自の表現であり、機能上は全く問題はありません。
美容上の問題のみです。
そのため、小児期での手術は排尿障害等を合併しなければ処置をする必要は全くありません。
頻度について様々な報告がありますが、多いものでは日本人成人男性の7割が仮性包茎であるという報告もあるくらいです。
包茎に対しそこまでコンプレックスを感じる必要はないかもしれません。
もちろん成人になり自分の判断で美容上の理由で手術をすることは自由です。
(ちなみに日本の周りの国では韓国の包茎手術数がダントツ多いです。美容外科が発展しているからなのでしょうか。)

陰部の先が赤いです、膿がでてきました

これは亀頭包皮炎といって、乳幼児でよくあります。特に夏に陰部が蒸れて受診が増えます。
軟膏を塗布して治療を開始しますのですみやかに受診ください。

最後に一言

今回のテーマは基本的にママからの質問がほとんどです。
パパが質問することはありません。
パパはそこまで気にしなくても、勝手に包茎がなおった経験をご自身がされているので多分楽観的ははずです。そのため余計にママの方が心配してしまうのかもしれません。

このブログを読んだあと、パパにちょっと包茎について聞いてみてください。
当たり前ですが、男性器の問題は男性の方がわかります。
皮のむきかたの力加減は男性の方が上手に決まっています。

よくママから「どれくらいの力でむけばよいかわからない」と質問されます。
わからなくて当たり前だと思います。

これは私の主観ですが、おちんちんのケアはパパの出番だと思っています。
お仕事でなかなかお子さんとお風呂に入れないこともあると思います。
ですが、休日のみでもよいのでお風呂にはいった際はおちんちんのケアをしてあげてください。
パパであればお風呂で少しずつ皮をむくことも安全に出来ると思います。

今の段階でどれくらいお子さんがむけているのかをパパがチェックをしてあげるだけでもママは安心すると思います!

以上になります。
男の子は本当に電車が好きですね。そして踏切も。
他の男の子がペットボトルを電車にみたてて遊んでいるのを見るとついニヤッとしてしまいます。
地面をべたべた触った手で顔を触ったり、口に手をいれて舐めたりするので親は頭を抱えるのですけどね笑

1) Imamura E:Phimosis of infants and young children in Japan. Acta Paediatr Jpn 39:403-405, 1997
2) Kayaba H, Tamura H, Kitajima S, et al:Analysis of shape and retractability of the prepuce in 603 Japanese boys. J Urol 156:1813-1815, 1996
3) Chu CC, Chen KC, Diau GY:Topical steroid treatment of phimosis in boys. J Urol 162:861-863, 1999
4) Jorgensen ET, Svensson A:The treatment of phimosis in boys, with a potent topical steroid(clobetasol propionate 0.05%)cream. Acta Derm Venereol 73:55-56, 1993

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能登 孝昇
2023年8月まで氷川台のと小児科クリニック院長を務めました。 2024年4月から赤塚にてサンスカイのと小児科クリニックを開業しました。 今後もこどもに関しての情報と、私の今後について発信していけたらと思います。