日本脳炎ワクチンの接種時期の違いの理由とは?いつ接種するかを解説

質問コメントをいただきました。

「日本脳炎のワクチンは生後6か月から受けられるにも関わらず、初回接種の推奨が3歳~になっています。まだ息子は1歳半ですが、先日別の小児科で日本脳炎ワクチンの接種も受けられますよ~と薦められ、早めに受けるべきか迷っています。ご意見頂けますと嬉しいです。」

日本脳炎ワクチンの接種時期について説明したいと思います。

いつものように結論から

養豚場(ブタがいるところ)の近くによく遊びに行く
実家が九州、沖縄(西日本)にある
東南アジアに旅行に行く機会がある場合は生後6か月からの接種をする!
養豚場の近くに行く機会がなければ小児科学会推奨の3歳からの接種でよい!

となります。
日本脳炎に対してはWHOの本サイトで詳しく記載がありますので気になる方は原文を確認ください。

https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/japanese-encephalitis

では日本脳炎についての病気の説明からしていきましょう。

日本脳炎とはどんな病気? 感染経路について。

日本脳炎は、蚊(コガタアカイエカ)を介して伝播される日本脳炎ウイルスによっておこるウイルス感染症です。

人から人への感染はありません。

ですが、ブタ(増幅動物)の体内で日本脳炎ウイルスがいったん増えて血液中に出てきます。
そのブタを蚊が吸血します。
その日本脳炎ウイルスを保持した蚊が人を刺すことで感染します。

つまりブタのいる養豚場がある地域にお住まいの方のみに感染リスクがあるということになります。

日本脳炎ウイルスに感染した場合の症状は発熱と頭痛等で軽症でおわることがほとんどですが、約300件に1件の頻度で重篤な臨床症状を引き起こす脳炎へと移行します。

脳炎を発症すると致死率は20-40%といわれており、救命できたとしても30-70%の頻度で後遺症(麻痺、けいれん、会話ができないなど)が残ってしまいます。残念ながら小児では特に重度の障害を残すことが多いこともわかっています。

感染地域について

この病気は、主に東南アジア・南アジアで見られ、日本、中国、台湾、韓国、フィリピンなどでも報告されています。WHOのサイト内に分布図がありますので下記に示します。

https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/japanese-encephalitisから引用

国内では毎年0-10例程度の報告ですが、海外では毎年6万8000例前後が感染していると推定されています。そのため、オレンジ色で塗られている国へ旅行される場合は必ず予防接種をおこなってからの渡航をおすすめします。

治療法について

日本脳炎ウイルスに対し抗ウイルス薬はありません。
症状に対しての対症療法のみとなります。

日本脳炎は症状が現れた時点ですでにウイルスが脳内に達し、脳細胞を破壊してしまいます。
そのため致死率が高く、後遺症が残る頻度も高いことがわかります。

以上より、日本脳炎は予防が最も大切となるわけです。

予防について

予防の中心は予防接種と蚊の対応になります。

日本脳炎のワクチンについては

第1期:生後6か月から接種できますが、多くの地域では3歳からの接種となっています。
1~4週間隔で2回
2回目の約1年後に3回目を接種します。
第2期:9~12歳に1回接種します。
この4回の接種で予防接種は完了となります。

補足する点があるとすれば、特例措置の説明です。

実は、日本脳炎ワクチンは2005年に一度日本脳炎ワクチンは任意接種になっています。
古いタイプの日本脳炎ワクチンの接種後に亜急性散在性脳脊髄炎という病気に罹患してしまったケースがあり、2005年から2009年まで予防接種の勧奨を控えていた時期があります。
現在は培養細胞を新しくしたことで、安全なワクチンとなり定期接種のワクチンになっていますのでご安心ください。

・1995年(平成7年)4月2日生まれ~2007年(平成19年)4月1日生まれの20歳未満の方で、日本脳炎の予防接種4回(1期3回、2期1回)が完了していない場合
・2007年(平成19年)4月2日生まれ~2009年(平成21年)4月1日生まれの方で、日本脳炎の予防接種1期3回が完了していない場合

上記に該当される方はお住まいの区役所に申請することで予防接種を公費でうけることができます。

蚊の予防については以前のブログ記事に記載がありますので確認いただければと思います。

いつ接種すればよいの?

日本脳炎ワクチンの接種時期が地域によって異なる理由は、感染リスクの違いや政府の予防接種計画、地域の予防接種制度など、様々な要因が絡み合っています。

東京都心には感染源となる養豚場がありませんから3歳からの接種となります。(3歳以前にワクチンを受ける場合は、近隣の区役所の予防接種課に接種券を個別にお願いしてもらえば接種可能です。)

九州、四国、沖縄(西日本)、千葉にて過去に日本脳炎の罹患報告があります。
つまり日本脳炎ウイルスの感染源となるブタがいる地域のため、生後6か月から接種をする習慣があります。
(九州では接種券が生後6か月で配られています)

逆に北海道ではコガタアカイエカが生息していなかったため日本脳炎が発症しないということで日本脳炎のワクチンが平成28年3月まで公費対象になっていませんでした。(びっくりですね)

本当に地域差があります。

そのためあくまで1人の小児科医として私が考えるポイントを述べます。
例えば養豚場の近くに実家があるとか、養豚場の近くによく遊びに行く、東南アジアに旅行に行く機会がある場合は生後6か月からの接種がよいと思いますし、養豚場の近くに行く機会がなければ小児科学会推奨の3歳からの接種でよいと思います。

生後6か月から3歳になるまでの期間は接種量が0.25ml、3歳からは0.5mlとなり接種量が異なりますが抗体の保有率に差がないことがわかっています。

親御さんが心配であれば、生後6か月から接種してしまいましょう!
九州でお子さんを出生した場合、みんな生後6か月から予防接種をしています。
ただし第1期追加(3回目)の接種を忘れがちなので東京在住の方は注意が必要です。

まとめ

日本脳炎ウイルスについて、病気の説明、感染経路、感染地域、治療法がないこと、予防について説明しました。

予防接種に関しては各々のご家族の方針があると思いますので絶対はありません。
以前に新型コロナウイルス予防接種の記事でも記載しましたがゼロリスクはありません。
日本脳炎についての疾患理解をしたうえで予防接種の可否を判断していただきたいと思います。

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