前回の続きになります。(9月11日:小児科学会のQ&Aの項目を追加しました。)
この記事の目次
12歳から15歳の2260人のワクチン接種での安全性と有効性について
内容はファイザーワクチンの第Ⅲ相試験の予備結果の報告です。元データの論文1)は一番最後に添付しています。詳細が確認したい方はそちらからお願いします。
第Ⅲ相試験は、アメリカ人の12~15歳、2260人が対象となりました。ワクチンを接種していないプラセボ群(n=1129)では合計18例にコロナウイルス感染がみられましたが、ワクチン接種群(n=1131)では報告されず、100%の有効性を示したという結果でした。
この内容は日本で厚労省の認定をうけるためにわかりやすく日本語に翻訳されています。下記に添付します。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_pfizer.html
副反応の比率はこのサイト内にある表を見るのがいいと思います。図を確認ください。
接種部位の疼痛が一番多く(86.2%)疲労や頭痛、悪寒、筋肉痛、発熱等がみられることがわかります。
この頻度が成人と比較すると高いということになります。
この治験期間中のワクチン接種後の死亡例はありません。この第Ⅲ相試験は、長期的な保護と安全性を判断するために2年間監視されます。
そして、ここからが驚愕の事実ですが、
6ヶ月から11歳の小児を対象としたワクチン試験も開始されています!!
この研究では、5~11歳、2~5歳、6か月〜2歳の3つのグループで、ワクチンの安全性や有効性を評価することになっています。
次に紹介する論文は、対象となった症例数が桁違いに多い2021年8月6日に投稿された直近のものです。
アメリカの12歳から17歳のファイザーワクチンを接種した約890万人の有害事象について
2020年12月14日から2021年7月16日までの12〜17歳の米国の青年約890万人がファイザーワクチンを接種しました。
ワクチンの接種後に有害事象がみられた場合はワクチン有害事象報告システム(VAERS)に報告されます。
報告はVAERSスタッフによって行われるため、信頼性の高い情報が集まります。
ファイザーワクチン接種後、12〜17歳の約12万9000人がv-safe(スマートフォンベースの安全監視システム)に登録しました。こちらは患者が任意で登録するものになります。
スマホで行えますので報告数が増えるというわけです。
この2つのデータの報告をまとめたものがこの論文2)です。
まず、VAERSに登録された有害事象は9246件でした。下の表を確認ください。
8383人(90.7%)は深刻な有害事象ではありませんでした。表の上側です。
5376人(58.1%)は12〜15歳で、3870人(41.9%)は16〜17歳でした。
症状としてはめまい(21.1%)、失神(14.4%)、嘔気(10.4%)、頭痛(10%)がありました。
これらの有害事象の60.8%は女性であり、年齢の中央値は15歳でした。
次に深刻な有害事象についてです。表の下側ですね。
深刻な有害事象の定義ですが、入院または入院の延長、生命を脅かす病気の併存、永続的な障害、先天性異常または先天性欠損症、または死亡のいずれかが報告された場合、深刻な有害事象として分類されます。
深刻な有害事象は863人(9.3%)でした。うち、609人(70.6%)が男性、年齢の中央値は15歳でした。
内容は胸痛(56.4%)、トロポニンレベル(心臓の筋肉が壊れた時にでるもの)の増加(41.7%)、心筋炎(40.3%)、C反応性タンパク質(体の中の炎症があるときにでるもの)の増加(30.6%)等が記載されています。心筋炎は、すべてのVAERS報告の4.3%(397人)でした。
この論文ではワクチン接種後の14件の死亡報告を記載しています。
4人は12〜15歳、10人は16〜17歳でした。死因は、肺塞栓症(2人)、自殺(2人)、頭蓋内出血(2人)、心不全(1人)、血球貪食性リンパ組織球症、マイコバクテリウム感染(1人)、不明または保留中(6人)でした。ワクチンと死亡の関連はなく、心筋炎とも関連していないと論文には記載されています。
次はファイザーワクチンを接種した12〜17歳の青年(129059人)によってv-safe報告された有害事象についてです。
12〜15歳の年代では局所反応(63.9%)、全身反応(48.9%)がみられ、16〜17歳でも数値はほぼ同じでした。ワクチン接種の翌日が最も有害事象がおきる時期でした。
注射部位の痛み、倦怠感、頭痛、筋肉痛が主な有害事象です。(これは今まで指摘されている副反応と一緒ですね。)
この論文は、ワクチン接種を受けた890万人の青年のうちVAERSの報告はワクチン接種者1000人に約1人で、そのうちの90%は重篤な状態にはなりませんでした。
ワクチン接種による心筋炎のフォローアップを継続して行うことが重要で、12歳以上の全ての人にファイザーワクチンを推奨するという内容で締めくくられています。
つまり、「アメリカは小児のワクチンを推奨、そして重篤な副反応の心筋炎は男子に多く、頻度は840万人中397人(約0.0047%)である」という内容でした。
小児科学会よりワクチンのQ&Aが公表されています
9月9日に小児科学会が親御さん向けによくある質問をまとめたQ&Aが更新されていました。
下記に添付します。
http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=379
こちらのサイトも確認しておくのもいいと思います。わかりやすくまとまっています。
まとめ
2回にわけて説明しました。
まずは、厚労省のサイトと小児科学会のサイトを確認してみてください。
専門用語が出てきますのでわかりにくい表現となっているかもしれません。もちろん納得する回答が得られなければクリニックに相談ください。必ず対応しますので接種前に確認してください。
私は昨年4月より発熱外来に専念してきました。目の前の患者をみることが、地域への貢献につながると考えているからです。
ですが、将来的に低年齢でのコロナワクチン接種が進むと思いますし、世界のトレンドであるように感じます。
そうなると、いずれクリニックでも接種をする必要があります。
そのための準備として、まずは12歳から18歳の高校生までの希望者を対象に、少しずつですがコロナワクチン接種を進めていきたいと思っています。
以上です。
写真は息子の大好きな鉄道博物館です。
この施設には様々な鉄道の展示があり、いつも以上に目を輝かせています。
1) Frenck Jr RW, Klein NP, Kitchin N, et al.: Safety, Immunogenicity, and Efficacy of the BNT162b2 Covid-19 Vaccine in Adolescents. N Engl J Med. 2021 in press. doi: 10.1056/NEJMoa2107456.
2) Hause AM, Gee J, Baggs J, Abara WE, Marquez P, Thompson D, Su JR, Licata C, Rosenblum HG, Myers TR, Shimabukuro TT, Shay DK. COVID-19 Vaccine Safety in Adolescents Aged 12-17 Years – United States, December 14, 2020-July 16, 2021. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2021 Aug 6;70(31):1053-1058. doi: 10.15585/mmwr.mm7031e1. PMID: 34351881; PMCID: PMC8367318.
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