赤ちゃんの頭の形で悩まれているご家族の方へ(当院での頭の形専門外来について)

今回の記事はサンスカイのと小児科クリニックで1日1時間だけですが頭の形専門外来をしますので、詳細について説明をしていきたいと思います。
頭の形で悩まれている方はまずこの記事をご覧いただき判断いただければと思っています。

頭の形専門外来の予約は当院ホームページ↓

https://sunsky-noto-clinic.com

から予約をお願いします。

ヘルメット療法は自費診療のため、決して安くはありません。
ご両親が納得された上で判断、決定をしていただきたいたいと思っています。
私がお伝えしたいことを概ね詰め込みました。
結果、もはやスマホで確認できない文章量となってしまいました。

頭の形で悩まれている方は、とても長いですがやっぱりこの記事を読んでほしいです。
私の熱量が伝わると思います。

その上でお近くの医療機関でご相談いただければと思っています。

もし遠方でどうしても受診出来ない場合、まだ大々的に発表はしていませんがオンライン診療の準備も整いました。
受診予約のコメントにオンライン診療希望といれていただければ対応します。
よろしくお願い致します。

当院での頭の形専門外来開設の意義

まず頭の形専門外来をなぜ当院で行うかについて説明をする必要があります。

大前提として、
最初から私がヘルメット療法をご家族の方へおすすめしたり、当日にヘルメット療法を開始するということはありません。

この専門外来は頭の形で悩まれているご家族の方へ、
・論文化されたエビデンスに基づいた正しい情報をお伝えすること
・お子様の斜頭症の重症度を3Dスキャンをおこなって客観的に評価すること
(私が見た主観ではないので間違いがありません)
・3Dスキャンの結果とあわせて今後の過ごし方についてお話をすること

専門外来を通じて、ご両親と一緒に悩みを共有するというのが1番の目的です。

その上でご両親が納得して、ヘルメット療法をしない、するの判断が出来れば目的は達成です。

まずは1時間の専門外来からスタートして、いずれ予防接種、乳児健診の時間とあわせて広い意味での育児相談としてご利用いただければよいなと思っています。
では、実際に受診した場合の流れを説明していきます。

受診の流れ

1:問診(事前に質問したいことをWeb問診表に記載していただけますと非常に助かります。)
どのような悩みをお持ちなのか、どのような質問があるかについて確認しお答えします。

2:1歳未満で頭の形にお悩みであれば3Dスキャン撮影をします
(受診数が増えてきた場合、最初に3Dスキャンを撮影することがあります。また、最初からヘルメット療法を希望されている場合は最初に撮影します。30分後に画像が作成されますので、その結果をみながら実際のヘルメット導入の説明していきます)

3:3Dスキャン後に頭の診察をします。
頭蓋骨縫合早期癒合症を疑う所見が診察の時点である場合は、この段階で日本大学板橋病院などの専門機関へ紹介となります。
見た目の重症度が軽症であれば理学療法や環境調整などもあわせて説明します。

4:3Dスキャン結果説明で現在の客観的な指標における重症度をお伝えします。

では実際の流れに沿って、3Dスキャン撮影から説明していきましょう。まずどのような機器なのかの説明です。

3Dスキャンのデバイスについて

今回当院で採用する3Dスキャンの機器はCANFIELD Scientific社のVECTRA®H2になります。
中身はキャノンの一眼レフカメラに特殊レンズが装着されていますものです。

https://www.integralcorp.jp/skin/imaging/vectra-handy/

そのため撮影中はフラッシュ撮影がまぶしいというのがデメリットですが、一般的に使用されているカメラですから安心して撮影をおこなうことが出来ます。

3D撮影が心配な方は、実際の動画(成人ですが)をご覧いただくとわかりやすいです。
本当にただ写真を撮影するということがおわかりいただけると思います。

この機械はもともと美容整形、乳腺外科、美容皮膚のために開発された機械です。(医療機器承認をうけています)
顔を3Dスキャンしてどの程度鼻を高くするか、顔の皮膚をどの程度リフトするかなどを実際のイメージを見せることでよりわかりやすくするために開発されています。
このカメラで赤ちゃんの頭をスキャンするというわけです。

実際の3Dスキャンの撮影方法について

まず、赤ちゃんの頭にストッキングのキャップをかぶせます。
髪の毛による誤差をなくし正しく頭の形を計測すためです。
そして、下記の図のように顔面を1周撮影したのちに頭頂部の写真を撮影して3Dスキャンは完了します。

撮影した画像をパソコン上で3D画像に構築しなおし、頭蓋の変形の程度を計測します。
誤差は約0.2mmですので、ほぼ正確に評価することが出来ます。

次に頭の形の重症度の評価について説明していきましょう。

斜頭症の重症度分類について

まず、頭の変形の重症度分類はなにがあるのかを確認しましょう。

世界的には大きく3つです。
斜頭症の評価としては
1:見た目で重症度を評価するArgenta(アルジェンタ)分類
2:頭蓋の対角線の差でみるCA(Cranial Asymmetry)とCVAI(Cranial Vault Asymmetry Index)
短頭症(絶壁)の評価としては
3:頭蓋の縦と横の比率で評価するCI(Cephalic Index)
になります。

3Dスキャンで評価するのは2番3番になります。

まずは、見た目で重症度を判断するアルジェンタ分類から説明していきます。
アルジェンタ分類は頭の変形がどのようにして進行するのかを理解するのにとても役に立ちます。
右の斜頭症の児(右を向く癖があり右後頭部がへこんでいる児)で解説します。

アルジェンタ分類について

アルジェンタ分類:タイプ1

Argenta L, et al. J Craniofac Surg. 2004 May;15(3):368-72.

右後頭部のへこみがでています。まだ耳のずれはなく、へこみだけです。

アルジェンタ分類:タイプ2

Argenta L, et al. J Craniofac Surg. 2004 May;15(3):368-72.

タイプ2では、右後頭部のへこみに加えて右耳が前にずれてきます

アルジェンタ分類:タイプ3

Argenta L, et al. J Craniofac Surg. 2004 May;15(3):368-72.

タイプ3は右耳のずれに加えて、右のおでこ(前頭部)が前に突出してきます

アルジェンタ分類:タイプ4

Argenta L, et al. J Craniofac Surg. 2004 May;15(3):368-72.

タイプ4は前頭部にくわえ右頬の突出と顔面変形が加わります。右耳の位置が下がることで、目の位置、下顎の位置もずれてくるのがわかります。

アルジェンタ分類:タイプ5

Argenta L, et al. J Craniofac Surg. 2004 May;15(3):368-72.

タイプ5は最終的に反対の左後頭部が突出してきます

斜頭症の進行の仕方がわかりましたでしょうか。
次に3Dスキャンで測定する重症度評価、CA、CVAI、CIについて説明していきましょう。

頭蓋の対角線の差でみるCAとCVAI

CA(Cranial Asymmetry)、CVAI(Cranial Vault Asymmetry Index)について説明していきます。今までと同じように右斜頭症の児の画像をご覧ください。

上の図は真ん中の線から30°のところに緑色の対角線、A、Bがひいてあります。

右の斜頭症があるため、右後頭部がへこんでいます。そのため、対角線はBの方が長くなります。(B>A)この対角線の差で表したものがCAになります。

CA : Cranial Asymmetry(mm) = 対角線B-対角線A

CAについては頭の大きい子(頭囲が大きい)は頭の小さい子(頭囲が小さい)に比べて、重症度がより大きくでてしまうという弱点があります。(どうしても頭が大きいとへこみが大きくなってしまうから)

そのため、CVAIはCAの差を比率にすることでその弱点を補正してくれます

CVAI : Cranial Vault Asymmetry Index(%) =(対角線B-対角線A)/ 対角線 A × 100 

そのため世界的にはCVAIを一般的に使用する流れがあります。
当院ではCVAIで重症度評価をしていきます。

次はCI(Cephalic Index)についてです。
これは短頭症(絶壁かどうか)の評価として使用されます。

CI:X軸の横径(横) / Y軸の前後径(縦) × 100

になります。そのため絶壁であると分母のY軸が短くなりますので数値が大きくなります。

ではこれらの数値の重症度の表をみてみましょう。

実際当院で3Dスキャンをすればこの重症度は自動で算定され表示されます。

そのため、丁寧にみなくても大丈夫ですが、どのようにして重症度を測定しているのかというのは知っておいてよいと思います。
ヘルメット療法をした場合は、毎月3Dスキャンでこの数値が改善していくのを評価していきます。

3D画像作成後の結果説明について

専門外来で受診された方については、1日後に3D画像を作成し結果説明となります。

ヘルメット療法を導入される方に関しては撮影後約30分で3D画像を構築し、重症度評価を説明しヘルメット制作へと進みます。

ヘルメット療法は中等症以上が適応となります
軽症以下であれば理学療法と環境調整をおこなって経過をみます。

もちろんご家族の方が望めば軽症でもヘルメット療法を行うことが出来ます。
ただ、個人的には軽症であればヘルメット療法をする必要はないかなと思っています。

軽症であれば理学療法や環境調整の説明、中等症以上であればヘルメット療法の説明へ進めていきますが、実際の診察ではここで赤ちゃんの頭の発達についての一般的なことを説明します。

診察の流れのとおり進めていきましょう。

赤ちゃんの頭蓋骨と脳の成長について

赤ちゃんの頭の骨は、7つの骨がパズルのように分かれて構成されています。
これが成長とともに7つの骨が繋がっていき、一つの頭蓋骨になります。

なぜこのように出生時は頭蓋骨が離れているのに、2歳にかけて骨が繋がっていくということが起きるのでしょうか。
理由は大きく2つあります。

1つは、親御さんから赤ちゃんが出生する際、頭の大きさよりも産道が狭いため頭の形を変えながら出生する必要があるため。

2つ目は急激な脳の発達に対し、頭蓋骨もあわせて大きくなる必要があり、頭の形が変形出来ないと脳を圧迫してしまい、発達に影響がでてしまうから。

と言われています。
赤ちゃんの脳は生後6か月までに生まれた時の大きさの約2倍になります。
2歳になるまでに大人の脳の約90%くらいの大きさになります。
そのため2歳の頃には頭蓋骨は繋がり、頭の形は固定されます。

よくある質問としては、1歳半を超えた年齢でまだ頭の形が治る可能性がありますか?
があります。

理論上は頭蓋骨が繋がってしまっていますし、骨も硬くなりますので難しいとお答えしています。

斜頭症の基礎知識

まず頭の変形において、発達障害のない斜頭症と、病的な原因として、頭蓋骨縫合早期癒合症という稀な疾患の鑑別をクリニックでおこないます。

頭蓋骨縫合早期癒合症はこの7つの骨の間の隙間が最初から繋がって出生した場合です。
この疾患は顔面変形を伴ったり、発達に影響がでる可能性があります。
そのため専門機関での精査が必要となります。

しかし、ほとんどの場合が出生後の向き癖による重力の影響で頭の変形、絶壁となることが多いのが現状です。(出生前の胎内で頭の変形がおきてしまうこともあります)

私は以前に斜頭症についての基礎知識を下記ブログ記事で記載してます。
斜頭症の頻度、どの時期が最も斜頭症で重症な時期なのか等知ってほしいことを記載していますので下記リンクから確認いただければと思います。

この記事内、体位変換についてやタミータイムについて言及しています。
体位変換、タミータイムは環境調整、理学療法と言い換えることが出来ます。

3Dスキャンにおいて頭の形の重症度が軽症である場合、頭の形の変形をより悪化させないことが目標となります。

そのため、体位変換やタミータイムを継続して行うことが、親御さんがお子さんへ出来る最大限の対応になります。
タミータイムについてはもう1記事追加でさらに下記の記事でより詳細に説明しています。

ヘルメット療法以外で何か出来ることはありますか?という質問に対してはこれら2記事が参考になると思いますのでぜひご確認いただければと思います。
(もちろんヘルメット療法をしている方も理学療法、環境調整をすることが推奨されます)

2記事とも2020年、新型コロナウイルス感染症のはじまった時期であり、小児科の受診数が激減し壊滅的になった年でした。(だからブログ記事が書けたのですけどね)

そのため何か世の中に貢献できることがないかと模索し研究を開始しました。
もう4年前です。それでもこの記事の内容は大きく変わりません。
ぜひお金をかけずに出来ることがいっぱいありますのでご確認いただければと思います。

そして、以前に勤務していたクリニックと日本大学小児科、春日部医療センターと共同研究していく中で、英語論文がいくつかアクセプトされ、日本人の斜頭症エビデンスがでてきました。その説明が下記記事になります。

このブログ記事では日本人の斜頭症の頻度であったり、生後1か月から3か月にかけて斜頭症が自然経過で悪化、生後6か月にかけて自然改善することを報告しています。
もちろんブログ記事でわからないことがあれば相談ください。

そしてこの記事内で少し言及されている予防枕に関しては、私は研究メンバーから外れてしまいましたが、特許出願までいったようです。期待して研究結果が出るのを待ちましょう!

(2022年以降の日本、海外の英語論文の記事のまとめを作成しなければなりませんね。これから頑張って作成しますのでお待ちください)

次は、中等症以上の重症度でヘルメット療法を検討されている方への説明となります。

ヘルメット療法について

斜頭症や短頭症が中等症以上であった場合、ヘルメット療法が治療法の1つにあげられます。
ヘルメット療法とはどのような治療なのかの説明をしていきましょう。

まず構造についてです。当院は(株)ベリーさんのベビーバンドを使用しますので、その画像を確認していきましょう。

外側は硬い樹脂製のシェルでおおわれており、このシェルの形にそって頭が成長していくようお子さん毎に設計がされます。
内部の低反発のクッションがあることで、過度に頭蓋内に圧がかかってしまうことを防ぐことができます。詳細については(株)ベリーさんの公式サイトがあります。

https://www.babyband.jp

上記リンクに説明がありますので確認いただければと思います。

以前研究に協力していただいた(株)ジャパンメディカルカンパニーさんが提供しているアイメット、クルムも外側がヘルメットシェル、内側がクッションです。
その他の企業のヘルメットでも概ね作りは一緒です。

ではヘルメット療法の原理について説明していきましょう。

上の図は今までと同じ、右斜頭症の児を真上から見ているイメージです。右斜頭症では、右後頭部がへこむことで、右前頭部が突出するということを説明してきました。
そのため、頭をまるくするためには、右後頭部と左前頭部が成長すればより丸い形に近づきます。

この丸い形に近づけるよう、ヘルメットシェルの形を設計すると、右後頭部と左前頭部に大きなスペースを、右前頭部、左後頭部はスペースを少なくする設計となります。

ここで、右前頭部と左後頭部のスペースが少なすぎると常に皮膚に圧がかかってしまい皮膚トラブルがおきます。
しかし、余裕をもたせるとヘルメット療法の意味がありません。このバランスをとってヘルメットをオーダーメイドで作成していくということになります。

ヘルメット療法開始は生後4-6ヵ月が推奨

治療開始が早いほど治療効果は高く、生後4か月以前であれば最も治療効果が高いことは世界的に有名です。

これは低月齢であれば頭蓋骨がより柔らかいためヘルメット療法のシェルにそった頭の形に近づきやすいからです。
また生後4か月にかけて斜頭症の重症度が悪くなることがわかっています1)

悪くなる前に治療をしたほうがより改善することは理解しやすいと思います。

先ほど説明しましたが、生後6か月までに脳の急激な発達にあわせて頭蓋骨も大きくなります。ヘルメット療法はもともとの頭蓋の成長を、ヘルメット内のスペースがある部分に成長を促すことで丸みをおびた頭の形にする治療法です。

そのため、生後6か月までにヘルメット療法を行うことでより効果が得られるということになります。

逆に、生後9ヵ月以降になってしまうと治療効果は低くなります。理由は、
・頭蓋骨が大きくなるスピードがゆるやかになる
・頭蓋骨が固くなってくる
ことから説明が出来ます。
以上より、ヘルメット療法の開始推奨時期は生後4-6か月、遅くとも生後8か月までが望ましいとなります2,3,4,5)

症例によっては頭蓋骨がまだ柔らかい、大泉門がまだ大きく開いているなどの理由からヘルメット療法が間に合うこともあります。
悩まれているようでしたら、当院へお気軽にご相談ください。

ヘルメット療法の治療期間は平均4-6か月

ヘルメット療法を終了するタイミングの判断は施設によって異なりますが、当院では

重症度が正常に入り、1か月後に悪化がなかった場合
斜頭症の重症度が軽症以下となり、CVAIの改善が2か月以上連続でみられなかっ場合

にヘルメット卒業の判断とします。

以前まではヘルメット治療は7〜8カ月は続けるべきであるとされていました。
そのため長期間のヘルメット装着が親御さんのヘルメット導入を避ける1つの要因でもありました。

ベビーバンドに関しては以前までの治療期間と比較して数か月短く終了するケースが多く、具体的には平均4-6か月で終了とします。(ちなみにベビーバンドの公式ホームページでは2-6か月と記載されています。この治療期間が短くて済むということは日大でいずれ論文化されると思います。楽しみです!)

もちろん治療開始時期によって治療期間は大きく異なりますし個人差がありますが概ね半年前後と考えていただければよいと考えます。

よくヘルメット療法をやめることで再度斜頭症にリバウンドしてしまうのではないかという質問があります。
基本的にリバウンドはないとされています
親御さんが心配であればもう1か月ヘルメットを継続して装着し、重症度の悪化がないことを確認して終了でもよいと思います。心配であればご相談ください。
(これもヘルメット療法の終了時点と、例えば半年後などで再度3Dスキャンすることで悪化がないことを論文化して証明する研究もよいかもしれませんね)

もちろん親御さんの希望でヘルメットを継続して装着したいということであればご希望にあわせることが出来ます。
頭蓋骨は月齢が進むにしたがって硬くなっていきますので、繰り返しになりますが、1番大事なのはヘルメット開始の最初の数か月となります。
ヘルメット療法は最初の数か月の改善率が高いことがわかっています。
ここでいかに改善させるかがポイントとなります。

ヘルメット療法による副反応について

ヘルメット療法をおこなうことで発達が遅れたり、脳に障害がおきることはありません
安全に行うことが出来ます。

ただしヘルメットと皮膚の接触による皮膚障害は発生します。
赤ちゃんは体内の水分量が多いためよく汗をかきます。
そのため、夏場の汗によるトラブルはおきると考えていただいたほうがよいと思います。

最初の1週間は数時間おきに皮膚のトラブルが内科を確認していきヘルメット療法が継続出来ないほどの皮膚トラブルの発生を予防します。慣れてくれば少しずつ装着時間を長くしていき、安全に装着できていれば1日23時間を目指します。

ヘルメット療法の装着時間、受診間隔について

施設によって異なりますが、当院では概ねヘルメット導入から1週間のところで再診とし、皮膚トラブルがないかを確認します。
またすぐにヘルメットが外れないか、ずれていなかのフィットテストも兼ねます。

まずはここをクリアしてお風呂以外の1日23時間のヘルメット装着を目指します。
問題がなければそこから1か月毎の受診で3Dスキャンを撮影して重症度が改善していくかをフォローしていくことになります。

韓国の論文では最低20時間以上装着することで改善したと報告があります6)
(株)ベリーでは、ヘルメット療法をされる方専用のアプリがあり、装着時間を記録することが出来ます。詳細は下記公式サイトからダウンロードをお願い致します。

https://www.babyband.jp

今後このようなデータを活用して日本での斜頭症で最低装着時間の提言が出来るとよいですね。

最後はよくある質問にお答えして終了としましょう。

よくある質問:斜頭症が重度と判定されました。自然によくなることはないのでしょうか

この質問に対しては、私が斜頭症で最初に論文を投稿しアクセプトされたものが参考になります。詳細は下記記事をご覧ください。

簡単に説明すると、この論文ではCAの値が重度(12mm以上)である児をあつめて、2か月後に自然経過で頭蓋変形がどうなったかをフォローしたという内容です。
中央値生後6か月の児のお子さんが2か月後にスキャンをした時のCAの推移を表にしています。

赤の線:2回目の3DスキャンでCA12mm以下に改善した群を改善群(Improved)
黄色の線:2回目の3DスキャンでCA12mm以下にならなかった群を不変群(No change)として2群にわけて評価しました。

CVAIでないので注意が必要ですし、CA12mm以上を重症と定義しているので、先ほどお示しした重症度評価と異なる部分がある点に注意ください。
合計56人のうち37人が不変群、19人が改善群にわけられました。
つまり、CAが12mm以上である重症斜頭症は自然経過で約7割は2ヵ月経過しても中等症へ改善しないということがわかりました。

ただ、赤い線の中には自然経過でものすごくよくなっている児も存在する一方、より悪くなっている児も存在しています。この原因についてはわかりませんでした。

ただ寝返りが出来る生後6か月(中央値)から2か月経過した結果、自然改善する頻度は約3割で、変わらない、むしろ悪くなるという頻度が多いという残念な結果がわかりました。

そのため、重症度が重度と判定されている生後6か月の児に対しては、自然と良くなる可能性はあるけれど、完全によくなるのは難しいとお伝えしています。

同時にヘルメット療法(この研究ではアイメット®です)と自然経過の2か月後も比較検討しました。
その結果は「CAが12mm以上の重症斜頭症はヘルメット療法をした場合、自然経過よりも2ヵ月でCA値が約3倍改善しました。

そのため、やはりヘルメット療法をすれば改善するよねということが改めて証明されたことになります。

よくある質問:整体で頭の形は治りますか?

整体師の方で赤ちゃんの頭の形を治す外来をされている方がいると親御さんからお聞きすることがあります。

私としては、エビデンス(科学的に証明された根拠)が証明されていないことに対して意見をすることが出来ません。そのため正直にわかりませんとお答えしてきました。

医学はサイエンスであり、エビデンスが求められる。
(私が現教授から言われた言葉です!エビデンスのない行為は医学ではないと指導されました)

私を含む医師は、臨床だけでなく、学会活動や論文執筆などの研究活動を行うこともまた医学であると教わってきました。

整体師の方で赤ちゃんの頭の形を治すことが出来たという論文があれば教えていただきたいです。検索不足、勉強不足に対し謝罪させていただき、訂正させていただきます。
ヘルメット療法をせずに整体で改善するのであれば、それが1番ご家族にとってもお子さんにとってもよいことですからね。

よくある質問:ドーナツ枕で頭の形は治りますか?予防出来ますか?

ドーナツ枕を含む寝具に関してはアメリカ小児科学会において推奨しないとはっきり示されています7)

またドーナツ枕を含む寝具の予防効果もエビデンスは報告されていません。
(むしろ窒息の原因になる枕の販売に対し怒っている論文7)もあります)
日本においては、消費者庁からも寝具の利用は窒息の危険性があるため推奨しないとなっています。
現状エビデンスがあるのは、タミータイムを含む理学療法のみです。
もちろん枕の使用で変形が改善することがあるかもしれませんが、現状はエビデンスがないためわかりません。
そのため、当院においてはドーナツ枕は推奨しないになります。

以前のクリニックに勤めていた際、予防枕の開発を日本大学小児科、春日部医療センター、(株)ベリーさんと共同研究で行っていました。
予防枕の使用で頭の形が本当に予防されるのかの研究は昨年からスタートしています。

私は以前のクリニックを退職することになったため、メンバーから外れましたが、きっと日大の先生方が論文を提出してくれると思います!楽しみに待ちましょう。

よくある質問:頭の先がとがっているのですが。これは治りますか?

・あたまの先(頭頂部)がとがっているのが気になります。
(吸引分娩で引っ張られましたとお話しされる頻度が高い。)
・頭がとがっているので、頭の形の変形が強いと思います。
・このでっぱりは治るのでしょうか
という相談です。

ほとんどが出産時の産道を通る際に頭が引き延ばされ、とがってみえるというものになりますので、アルジェンタ分類のタイプⅤではありません。
アルジェンタ分類のタイプⅤは
「斜頭があり、顔面変形を伴った上での反対側の頭頂部の突出」が定義です。

そのため、斜頭症がなく、頭頂部がとがっているものに関しては、脳の発達と共に頭蓋が大きくなっていくことで全体が丸くなっていくのを待つでよいとお答えしています。
(もちろん希望があればヘルメット療法をおこなってもよいですが、厳密な適応ではないと考えます)

よくある質問:
サンスカイのと小児科クリニックはなぜベビーバンドにしたんですか?

サンスカイのと小児科クリニックはなぜベビーバンドにしたんですか?
どのヘルメットがおすすめですか?
です。

各ヘルメット業者が作成するヘルメットは先ほど説明した、内部の低反発クッション、外側のシェルの硬さ、柔らかさ、素材、通気性などが少しずつ異なります。

柔らかければ皮膚トラブルは減りますが、治療効果は半減します。
硬ければ皮膚トラブルは増えますが、治療効果は増します。
なんとなくイメージが出来ると思います。

この硬さ柔らかさのバランスがとても重要で、どの企業も創意工夫をされており、どのヘルメットも素晴らしく1番とは言えません。

私がベビーバンドを採用した理由があるとすれば、1番は治療期間の短さ、2番は価格でしょうか。

ベビーバンドは硬すぎず、柔らかすぎずでバランスがよいと個人的に感じています。
硬いヘルメットであれば最初の数か月での改善度が高く、柔らかいヘルメットであれば低いになります。逆に皮膚炎は硬ければ起きやすく、柔らかければ起きにくいとなります。

ただ、皮膚炎の発生は装着の初期と、その後の装着期間が長いほど起きる確率があがります。

ベビーバンドは治療期間が他のヘルメットより短い可能性があるため、ヘルメットを早期に卒業することでの皮膚炎のトラブルを減らせるのがよいなと個人的には思っています。

もちろん他社のヘルメットが低価格でもっと高性能になれば乗り換えるかもしれません(笑)

2つ目の価格ですが、当院では税込み33万円となります。
これは日本大学医学部附属板橋病院で頭の形外来で提供されている価格と同じです。

30万円台で医療機器承認がされているヘルメットを使用して治療が出来るのは2024年4月現在ベビーバンドだけではないでしょうか。

今後価格競争が激しくなり、他社のヘルメットも、もっと安くなる可能性があります。
どうしてもオーダーメイドで制作するものですから、30万円を切ってくるヘルメットが大量に出てくる可能性は低いとは思いますが、都心部だけでなくヘルメット療法を希望される方がクリニックで治療を受けられる未来がくるといいなと思っています。

もちろん大学病院で治療を希望される方は紹介させていただきます。
私は日本大学小児科の医局員ですが、違う大学病院への紹介も可能です。

ただ、クリニックは受診しやすいというのが最大の特徴です。
気軽に受診していただき相談してもらえると嬉しいです。
やはり育児のストレスを少しでも軽減して日々過ごすことがなにより大事だと私は考えています。

最後に

長文お付き合いいただきありがとうございました。

最後に私の家族のことを少しお話しして終わりにしたいと思います。

第2子が生まれた際、育児が大変過ぎて生きていくので精一杯でした。
そんな中、完全母乳で育った第2子は毎日寝る位置を交換することもなく、母乳を求め右の向き癖がついてしまい右斜頭症となりました。

当時ヘルメット療法を行っていたのは東京女子医大の藍原先生のみで、日本語の斜頭症の情報はほぼありませんでした。
日本語の情報があったとしても自然に治るため経過観察と記載されていました。
やはり当時は英語の論文を読んで情報を集める必要がありました。
そして、結局私は何もできませんでした。

静岡県の沼津で子供2人の子育てしていました。
新幹線に乗って妻と子供2人を東京都心の女子医大へ通院することは現実的でなく、妻と相談の上ヘルメット治療を諦めた思い出があります。

ただ、時代は変わりました。
日本の斜頭症のエビデンスもでてきましたし、ヘルメット療法が出来る施設も増えました。
価格も昔と比較すると半額くらいになっています。

私としては、選択肢が増えたことはとても素晴らしい事だと思っています。
・ヘルメット療法をするかどうか悩めること
・タミータイムや体位変換、環境調整について日本語で見ることができること
・YouTubeの動画で実際にヘルメット療法をされた方の意見やタミータイムを行っている実際の映像を見ることができること
などなど、これは私の第2子の時にはありませんでした。
調べようと思えば世界中の論文にアクセスできます。これは本当に素晴らしい事です。

私からのアドバイスとしては、
・ヘルメット療法をしないことで親御さん達が責任を感じることはない
・親御さんのせいで頭の形が変形したわけではないので、決して自分達を責めない

ということです。

やっぱり大学病院規模の専門施設でなければヘルメット療法はまだまだ出来ませんし、私の子育ての際はやりたくても出来なかったのですから、責任を感じることはないのです。

この記事を見て、自分の出来る範囲でお子さんへ何かしてあげられるのであれば、それで満点!だと思います。これは斜頭症だけでなく育児全般に言えることだと思います。

第2子がいたからこそ、今の私の活動があるとも思います。
笑顔でお風呂で後頭部を洗ってあげています!

この記事は、当院のかかりつけの方ではない、頭の形で悩まれている全ての親御さんに向けても記載しています。
少しでもお役にたつことが出来たのであれば私は嬉しいですし、本望です。

以上になります。

待合室の本を大量購入しました。カバー捨てるのがもったいなく写真を撮影しました。
最低でも80冊はあると思います。
クリニック受診が、お子さんにとっての新しい発見になれば嬉しいです。

1) Nelson Textbook of Pediatrics, Chapter 610, 3082-3086.e1
2) Tamber MS, et. al. Congress of Neurological Surgeons Systematic Review and Evidence-Based Guideline on the Role of Cranial Molding Orthosis (Helmet) Therapy for Patients With Positional Plagiocephaly. Neurosurgery. 2016 Nov;79(5). E632-E633.
3) Aihara Y. Childs Nerv Syste 30 : 1499-1509. 2014
4) Kluba S, Kraut W, Renert S, et. al.: What is the optimal time to start helmet therapy in positional plagiocephaly?.Plast Reconstr Surg 2011; 128: pp. 492-498.
5) Mortenson P, Steinbok P, Smith D: Deformational plagiocephaly and orthotic treatment: indications and limitations.Childs Nerv Syst 2012; 28: pp. 1407-1412.
6) Yoo H, Rah DK, and Kim YO: Outcome analysis of cranial molding therapy in nonsynostotic plagiocephaly. Arch Plast Surg 2012; 39: pp. 338-344
7)Martiniuk A, Jacob J, Faruqui N, Yu W. Positional plagiocephaly reduces parental adherence to SIDS Guidelines and inundates the health system. Child Care Health Dev. 2016 Nov;42(6):941-950. doi: 10.1111/cch.12386. Epub 2016 Aug 9. PMID: 27504717.

2件のコメント

斜頭症の治療継続、研究継続ありがとうございます!
小さいころは頭蓋骨が柔らかすぎて、子どもの寝る方向が偏るだけでも影響でるんですね。ドーナツ枕、昔は推奨されていたような⁇気がして、夫は絶対いい!って言ってましたが、最後のほうだけでも読んでもらおうと思いました。知見を新しくすることは大切ですね。
絵本、すごいですね!予防接種や健診でお伺いできたときの楽しみが増えました。
ところで、練馬区は健診など対象になりましたか⁇(HPでみつけられず、、、)
お忙しいと思いますが、臨床と研究、健康第一で頑張ってください!

こうママ様

コメントありがとうございます。
練馬区の健診は可能です。もちろん予防接種も大丈夫です。実際練馬区の方も予防接種も乳児健診もおこなっていますので安心いただければと思います。
ホームページにも記載しておきますね。

これは4月開業のためが原因です。各種配布物に当院の記載は間に合っていません。
練馬区や板橋区の公式ホームページや配布物の期日は3月で、開業してからでないと契約が締結出来ません。そのため次の更新の際に記載がされます。
これは氷川台のと小児科クリニックの時もそうでした。
たしか10月前後にホームページや配布物の記載が更新されたと記憶しています。

まだ、開業したばかりでほとんど予約が空いております。
そのため、乳児健診と頭の形専門外来はとても丁寧に対応が出来ています。
お近くのクリニックで予約が出来ない場合、発達に関して、育児に関しての質問が多い方は当院を利用していただければと思っています。
昨日も30分以上健診の相談でお話ししました笑

診療予約についてもご指摘をうけている部分がありますので、やりながら改善していきたいと思っています。

今後ともよろしくお願い致します。
能登

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