前回投稿した際から少し動きがありましたので報告させていただきます。
この記事の目次
COVID-19に関連した川崎病様の症状は、川崎病と別の病態と考えられている
WHOと米国CDC(Centers for Disease Control and Prevention)は、COVID-19に川崎病様の症状を呈した状態を
Multisystem Inflammatory Syndrome in Children (MIS-C) associated with COVID-19と呼び、別の病態であると定義しました1)。
MIS-Cは、心臓、肺、腎臓、脳、皮膚、目、腸管などのさまざまな部分に炎症を起こす可能性があります。
川崎病と同じく、MIS-Cの原因はまだわかりません。
しかし、MIS-Cの多くの子供がCOVID-19に感染しているか、COVID-19の濃厚接触者であることがわかっています。
CDCは5月14日にヘルスアラートネットワークを通じてアメリカの医療従事者にMIS-Cの警告をし、現在調査がすすめられています。
CDCのホームページの記載はここまでです。
前回川崎病とCOVID-19に関して川崎病学会の提言を紹介しました。
現在日本において重症化した症例は報告されておりません。
新しい情報が入り次第更新していきます。
世界におけるMIS-C関連の論文について Case 1 イギリスの報告
2020年4月中旬の10日間に、ロンドン市内のPICUにMIS-Cと関連している可能性がある病態(不全型川崎病、川崎病ショック症候群、または毒素性ショック症候群に類似)8症例がクラスターを起こし、1名が死亡しました。
死亡例1例を含む2例はCOVID-19陽性でした。
PCR陰性の6例中3例はCOVID-19患者が家族内にいました。
後日これらの症例はいずれもCOVID-19の抗体が陽性であることが判明ました。
つまりCOVID-19との関連があったことになります2)。
Case 2 フランスとスイスの報告
フランスとスイスでCOVID-19の流行が起こっていた2020年3月22日〜4月30日に13施設(フランス12、スイス1)のPICUにMIS-Cと関連している可能性がある急性心不全を呈した小児発熱患者のまとめです。
心臓が原因でのショック、左心不全および重症炎症状態で入院した小児35例を後方視的に解析しています。
年齢の中央値は10歳(2〜16歳)でした。
31例 (88%)が鼻咽頭スワブのPCRまたは抗体検査でCOVID-19が陽性でした。
症例の1/3で心機能が低下し、心臓を動かす薬を約80%の方に使用しました。
28%にECMOが使用されました。
5例 (14%)は最終時点で心機能の軽度〜中等度低下 がみられました。
死亡例はなく、ECMOが使用された全例で回復することが出来ました3)。
Case 3 パリの大学病院の報告
2020年4月27日~5月7日の 11日間に、パリの大学病院に 17人の川崎病の患児が入院しました。
2018 年1月以降の2週間毎の川崎病での平均入院数は1人で、比較すると川崎病の罹患率が有意に高かったことがわかりました。
年齢の中央値は 7.5歳(3.7-16.6)でした。
11人が川崎病ショック症候群で集中治療が必要であり、12人に心筋炎が認められました。
14人(82%)は、COVID-19への感染を示す検査結果がありました(PCR 検査陽性 7/17,IgG 抗体陽性 14/16)。
死亡例はありませんでしたが、5人が入院中に中等度の冠動脈の拡張を認めたと報告しています4)。
(※アクセプト前の論文です)
小児のCOVID-19感染では心筋障害の頻度が高い
MIS-Cとは少し関係ないのですが、心臓関連ということなので紹介します。
CIVID-19小児患者を解析した24論文のレビューで、2597症例(確定1185例、疑い1412例)が対象となっています。
患者の大部分はCOVID-19確定例からの家族内感染例でした。
検査所見では、成人で最も頻度の高い異常であるリンパ球減少は9.8%しかみられませんでした。
クレアチンキナーゼのMBアイソザイム(心臓の筋肉に特異的なものです)の上昇は27%と成人よりもはるかに多くみられました。
小児患者では心筋傷害の頻度が高いことが示唆されたと著者は考察しています5)。
まとめ
現時点では日本においては、COVID-19に合併した川崎病の児の重症報告はありませんが、世界では重症例がみられているため注意が必要です。
万が一川崎病の症状がみられた際はクリニックに電話で相談をお願いします。
以前にブログに記載しましたが、手足の凍傷様の所見が出た際はCOVID-19の感染を疑います。
継続してお子さんの皮膚所見を注意深く観察してあげてください。
当院ではCOVID-19の疑い例も含めて受診はありません。
しかし緊急事態宣言が解除となったこれからが大事です。
当院は継続して感染対策を講じながら、密を避け、必要な方の診察と予防接種、乳児健診を行っていきます。
写真は、静岡で勤務していた際に住んでいたマンション裏の道です。
ここが我が家の定番のお散歩コースでした。
愛鷹山とその奥にみえる富士山、広すぎる空がとても懐かしいです。
田んぼの中には大量のおたまじゃくしとカエルが泳いでおり、夜はカエルの大合唱が聞こえてきます。
娘は毎日のように興味深く生き物たちを観察していました。
1) WHO reference number: WHO/2019-nCoV/Sci_Brief/Multisystem_Syndrome_Children/2020.1
URL:https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/pediatric-hcp.html#anchor_1589580133375
2) Riphagen S, Gomez X, Gonzalez-Martinez C, et al. Hyperinflammatory shock in children during COVID-19 pandemic. Lancet. 2020 May 6.
3) Belhadjer Z, Méot M, Bajolle F, et al. Acute heart failure in multisystem inflammatory syndrome in children (MIS-C) in the context of global SARS-CoV-2 pandemic. Circulation. 2020 May 17.
4) Cui X, Zhang T, Zheng J, et al. Children with Coronavirus Disease 2019 (COVID-19): A Review of Demographic, Clinical, Laboratory and Imaging Features in 2,597 Pediatric Patients. J Med Virol. 2020 May 17.
5) J. Toubiana, et. al. Outbreak of Kawasaki disease in children during COVID-19
pandemic: a prospective observational study in Paris, France. medRxiv preprint
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