海外に渡航する際のワクチンについて Vol.2

前回の続きになります。A型肝炎と狂犬病の説明になります。

A型肝炎について

A型肝炎はA型肝炎ウイルスに汚染された水から感染します。
つまり、生の魚介類(特にカキ)や野菜、生水を飲む事で感染します。
渡航先では生水を飲んだりせず、ミネラルウォーターでの水分補給としましょう。
生野菜を使ったサラダで下痢を起こすことがありますので、その点も注意したいです。

A型肝炎は我が国でも昔は広く流行していましたが、現在は衛生環境の整備により感染が制御され、2018年現在、55歳以下の者における抗体保有率はほぼ0%と考えられています1)
つまりA型肝炎のリスクが存在する場所に行く場合は予防接種での予防が必要となります。
WHOがリスクのある国と地域を挙げています。図を確認ください。

WHOでは北米、欧州、オーストラリア、ニュージーランド、日本を除くほとんどの国がリスク地域です。
A型肝炎ワクチンはそれらの地域に渡航する際推奨されます。

A型肝炎ワクチンには日本承認のワクチンと未承認ワクチンが存在します。
当院では日本承認ワクチンのエイムゲンを使用します。
接種回数は3回となり、0.5mlを初回、2-4週後、24週後のスケジュールで接種します。
国産のワクチンの添付文書上は0歳でも接種可能ですがWHOは1歳以上を推奨しています。

狂犬病について

海外の多くの国では狂犬病のリスクがあります。厚生労働省が発表している図を確認ください。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/07.html

日本はイギリスや北欧、オーストラリア、ニュージーランドと並び狂犬病発生が数少ない国の1つですが、世界では多くの国で狂犬病が発生していることがわかります。
この図をみて驚くのがアメリカやカナダ、ヨーロッパの先進国でもオレンジ色になっている点です。
本当かなと思いWHOのサイトを確認したところ


https://www.who.int/immunization/sage/meetings/2017/october/1_Background_paper_WG_RABIES_final.pdf?ua=1

先進国はブルーになっており概ね狂犬病は発生していないという結果でした。
このWHOの報告は2017年9月22日報告となっています。
厚生労働省は2016年6月28日作成となっていました。
現段階ではWHOの報告を参考にされるのがよいと思いますが、渡航される時期により情報が変わる可能性があるため最新情報は必ず確認してください。
(厚生労働省の図をよくみると、アメリカやカナダ、ヨーロッパの先進国の名前がありません。普通にこの図の作成者が色を間違って作った可能性??)

狂犬病の感染経路は90%以上においてはイヌからの感染です。ですが、狂犬病ウイルスはあらゆる哺乳動物に感染すると言われています。
イヌ以外では、コウモリ、アライグマ、キツネ等の野生動物が感染源となりえます。特にコウモリは南米での感染源となっています。(少し信じられませんがコウモリに噛まれる報告が結構あります!!2)

狂犬病は発症すると100%死に至るとても恐ろしい病気です。
子どもは動物との接触が多いため、噛まれたりひっかかれたりしても親に報告しない場合があります。
私は長期滞在する場合は接種すべきであると考えています。

狂犬病ワクチンは日本承認ワクチンのラビピュールを使用します。
接種回数は3回となり、1mlを初回、初回から1週後、4週後のスケジュールで接種します。
このワクチンは筋肉注射となります。

万が一狂犬病が疑われる動物に噛まれたりひっかかれた場合、ワクチン接種をしていても追加でさらにワクチンを接種します。現地の医師に必ず相談してください!

まとめ

渡航の際のワクチンについてまとめました。

基本的には小児の定期接種をしっかりうけることが基本です。
その上で
・親御さんの追加接種のワクチンを受ける
・年齢によって接種していないワクチンを公費で接種する
・A型肝炎ワクチン、狂犬病ワクチンの接種を行う
・腸チフスが必要であればトラベルクリニックを受診する
この点に注意して渡航までの限られた時間でワクチンスケジュールを立てていきましょう。

写真は、学生の頃に行ったインドのタージマハルです。インドにバックパッカーとして首都デリーからタージマハルのあるアーグラ、ガンジス川のあるバラナシ、コルカタと寝台列車で旅をしたことを思い出しました。
写真をさがしていたら下の写真が出てきました。

この写真は寝台列車に乗るホームで撮影したものです。すぐ脇で野良犬が戯れています笑。
まわりの乗客は特に驚く様子もなく過ごされているのがわかります。
狂犬病の死亡者数がダントツ1位なのも少しうなずけます。
そういえば日本の野良猫くらいの頻度で路上で牛と遭遇しました。懐かしい学生旅です。


1) 中野貴司:A型肝炎ワクチン.小児科臨床 68 : 2625-2630, 2015
2) Fooks Ar, et al. Rabies, Nat Rev Dis Primers. 2017 ; 3 : 17091

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