青年期における新型コロナウイルスのワクチン接種について vol.1

新型コロナウイルスのワクチンについて親御さんや12歳以上のお子さんから質問をかなりうけるようになりました。
新型コロナウイルスのワクチン接種に関しては、接種をするメリット、デメリットがあります。

ワクチンを接種するか否かは親御さんと本人でよく相談されて納得した上で決定することが1番大事です!!
この記事が少しでもその助けになればよいと思っています。字ばっかりで長いですよ。。。

はじめに ワクチン接種の世界の動き

まず、2021年9月8日キューバで2歳以上のコロナウイルスワクチン接種がはじまったという報道がありました。(ついにきたかという感じです)
ネットニュース引用になりますが、アメリカの大学に入学、登校するには、ワクチン接種をすることが必須であり、接種しない場合は毎週コロナ陰性結果を提出することが求められるという学校が増えてきているようです。

https://www.npr.org/2021/09/01/1031385629/full-fda-approval-triggers-more-universities-to-require-the-covid-19-vaccine

この流れはアメリカから派生して世界の常識になるかもしれません。
WHO(世界保健機関)は以前までは、先進国における小児に対してのワクチン接種を控え、発展途上国の高齢者へワクチンを分配するよう呼びかけていました。
しかし、2021年6月に基礎疾患のある12歳以上の小児の接種を推奨すると意見を変えました。

https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019/covid-19-vaccines/advice

このように、世界の流れは少しずつ小児に対してもワクチン接種を推奨する流れになってきているのが現状です。

小児のコロナワクチンの基本情報 接種年齢の確認

アメリカでは、食品医薬品局(FDA)が、2020年12月11日に16歳以上の人に使用するPfizer-BioNTech BNT162b2 mRNACOVID-19ワクチン(以後ファイザーワクチン)の緊急使用許可(EUA)を発行しました。
EUAは、第3相臨床試験の結果に基づいて、2021年5月10日に12〜15歳にも適用を広げました。
この決定をうけて、日本でも12歳以上に厚生労働省が5月31日に12歳以上にもファイザーワクチンが承認され、6月1日から適用となりました。
現在はモデルナのワクチンも適応となっています。

そもそもmRNAワクチンってなに? ワクチンの一般知識を確認

まずmRNAワクチンの接種で、どのように免疫が獲得されるかを知らないと先に進めません。
厚生労働省のサイトを下記に添付します。確認したことがない方はまず見てください!
(クリニックで質問される大半の質問が記載されています。)

https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/

mRNAワクチンは、コロナウイルスのタンパク質をつくる遺伝情報の一部を注射します。
(つまりコロナウイルスの一部を作る設計図をワクチンとして注射する)
体の中では、この情報からコロナウイルスのタンパク質の一部が作られます。
このタンパク質の一部は免疫細胞からすると体内に異物が混入してきたことと同じです。そのため免疫細胞が抗体を産生して除去しようとします。ざっくりの説明ですが、これでコロナウイルスに対する免疫が獲得出来るというメカニズムです。

ワクチンを接種したらコロナに感染するのではないかという質問がありますが、それは上記の内容から違うことがわかります。コロナウイルスそのものを体内にいれているわけではないからです。ワクチン接種をしたらウイルスが体内から出て人に感染させるのではないかという質問も同様で、そんなことはありません。

またよくある質問の1つに将来の子どもへ影響があるのではないかというものです。これも厚労省のサイトにわかりやすく記載があります。

https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0008.html

体内に入ったmRNAワクチンはすみやかに分解されていきます。そのため、長時間体に残るということはありません。動物実験ではファイザーワクチン接種後の最高血中濃度から24時間経過で1%未満に低下していることがわかります。動物実験の内容は下記です。吸収に関しては4-5ページ目です。

https://www.pmda.go.jp/drugs/2021/P20210212001/672212000_30300AMX00231_I100_1.pdf

同じくワクチン接種で不妊になりますか?という質問も多く聞かれます。この内容も下記サイトに記載があります。

https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0086.html

胎盤に残存したり、精巣にmRNAが残存しないことは各論文や上記動物実験でも証明されています。また世界の論文でも現時点では流産の確率があがるという事実はありません。

母乳育児中ですが、接種をしても大丈夫ですかという内容も同じです。ウイルスが母乳を介してお子さんに感染することはありません。

https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0027.html

お母さんに接種したことで産生された抗体が母乳を介してお子さんを守ってくれますのでむしろメリットがあります。

以上の内容が小児だけでなく成人も含めた一般的な知識の部分です。次にコロナウイルスにかかってしまった場合の死亡について確認します。

コロナウイルスによる死亡数について

ユニセフが公表している世界のコロナウイルス感染での死亡に関してのデータを下記に添付します。世界58カ国のコロナウイルス感染による死亡数を5歳ずつにグループ分けしたものを図にしています。

2021年5月現在、世界の死亡者数270万人に対し、20歳未満は0.3%(約8700人)と報告されています。
この死亡数と割合を見て高いと考えるか、低いと考えるかについては個人で判断が分かれると思います。
ただ、この情報を頭にいれたうえでワクチンのメリットデメリットの説明です。

ワクチンのメリット、デメリットについて

ワクチンのメリットについてです。
直接的なメリットは成人と同じで、コロナウイルス発症予防と重症化の予防です。
成人と比較し小児はコロナウイルス発症頻度が低いことが言われていますが、重症化する可能性はゼロではありません。そのため、発症、重症化を予防することは重要なことです。
そして、間接的なメリットとしては、同居する家族を含めた他人への感染を予防することです。
2021年8月に出たイギリスの論文1)を1つ紹介します。
ファイザーワクチンまたはアストラゼネカのワクチンを1回接種してから3週間後に感染した成人は、ワクチンを接種していない成人よりも、家庭内に感染させる可能性が38〜49%低くなることがわかっています。そのため、家族内だけでなく、学校のクラス内での感染も予防が期待できますでの、休校を含む学校の混乱を減らすことができます。

次にデメリットです。
コロナウイルス感染症によって重篤な状態になる、または死亡のリスクが非常に低いことを考えると、ワクチン接種の副反応(有害事象といいます)がメリットを本当に上回るか個人によって意見がわかれるという問題があります。有害事象についての詳細は次の記事で2本論文を紹介して説明します。

アメリカの報告2)ですが、2021年1月1日から3月31日までの間に主にCOVID-19で入院した204人の12歳から17歳の小児患者のうち、31.4%が集中治療室(ICU)に入院し、 4.9%は人工呼吸器を必要としましたが死亡はありませんでした。週ごとの入院率は青年10万人あたり0.6〜2.1でその入院した方は70%に併存疾患がありました。(やはり入院率がとても低い)
イギリスの報告3)では、小児におけるコロナウイルス感染症の症状は他の呼吸器ウイルス性疾患とほぼ同じであることが示され、8週間を超える持続的な症状もごく少数であり、ほとんど回復しています。

アメリカはコロナワクチンは積極的に推奨していますが、現時点でイギリスは12-15歳のワクチン接種は基礎疾患のある小児のみ推奨とし、基礎疾患のない12歳以上の接種はまだ推奨していません。
イギリスの提言を下記に添付します。

https://www.bmj.com/content/bmj/374/bmj.n2180.full.pdf

アメリカとイギリスを含む世界の状況を見てきました。次は日本です。
日本小児科学会の提言について説明します。

小児科学会のコロナウイルスワクチンに対する提言

小児科学会は2021年6月に小児に対してのワクチン接種について提言をしています。
下記に添付します。

http://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20210903_corona.pdf

小児科学会は、「子どもに関わる業務従事者等へのワクチン接種が重要であると考えます」とした上で、「子どもへのワクチン接種は、先行する成人への接種状況を踏まえて慎重に実施されることが望ましく、また、接種にあたってはメリットとデメリットを本人と養育者が十分に理解していること、接種前・中・後におけるきめ細かな対応を行うことが前提であり、できれば個別接種が望ましいと考えます。」としています。
つまり、日本はワクチン接種することを推奨しています。
ただし、全文を読むと「小児COVID-19が比較的軽症である一方で、国外での小児を対象とした接種経験等では、ワクチン接種後の発熱や接種部位の疼痛等の副反応出現頻度が比較的高いことが報告されています。十分な接種前の説明がないまま副反応が発生することがないようにすることが重要です。」と記載があります。

ここで重要な点は、副反応についてきちんと理解了承された上で接種をしなさいという記載です。

一旦ここで終了します。
次の記事で提言の中に記載されている国外での小児のワクチンの副反応について詳しく説明します。

1) Harris RJ, Hall JA, Zaidi A, Andrews NJ, Dunbar JK, Dabrera G. Effect of Vaccination on Household Transmission of SARS-CoV-2 in England. N Engl J Med. 2021 Aug 19;385(8):759-760. doi: 10.1056/NEJMc2107717. Epub 2021 Jun 23. PMID: 34161702; PMCID: PMC8262621.
2) Havers FP, Whitaker M, Self JL, Chai SJ, Kirley PD, Alden NB, Kawasaki B, Meek J, Yousey-Hindes K, Anderson EJ, Openo KP, Weigel A, Teno K, Monroe ML, Ryan PA, Reeg L, Kohrman A, Lynfield R, Como-Sabetti K, Poblete M, McMullen C, Muse A, Spina N, Bennett NM, Gaitán M, Billing LM, Shiltz J, Sutton M, Abdullah N, Schaffner W, Talbot HK, Crossland M, George A, Patel K, Pham H, Milucky J, Anglin O, Ujamaa D, Hall AJ, Garg S, Taylor CA; COVID-NET Surveillance Team. Hospitalization of Adolescents Aged 12-17 Years with Laboratory-Confirmed COVID-19 – COVID-NET, 14 States, March 1, 2020-April 24, 2021. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2021 Jun 11;70(23):851-857. doi: 10.15585/mmwr.mm7023e1. PMID: 34111061; PMCID: PMC8191866.
3) Molteni E, Sudre CH, Canas LS, Bhopal SS, Hughes RC, Antonelli M, Murray B, Kläser K, Kerfoot E, Chen L, Deng J, Hu C, Selvachandran S, Read K, Capdevila Pujol J, Hammers A, Spector TD, Ourselin S, Steves CJ, Modat M, Absoud M, Duncan EL. Illness duration and symptom profile in symptomatic UK school-aged children tested for SARS-CoV-2. Lancet Child Adolesc Health. 2021 Aug 3:S2352-4642(21)00198-X. doi: 10.1016/S2352-4642(21)00198-X. Epub ahead of print. Erratum in: Lancet Child Adolesc Health. 2021 Aug 31;: PMID: 34358472.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です