5-11歳の新型コロナウイルスワクチンについて (2022年4月6日現在)

5-11歳の新型コロナウイルスワクチン接種についての質問を非常に多くいただくようになりました。
「ワクチンの副反応が心配です」
「みなさんはワクチンを接種すると言っていますか?」
「ワクチンを接種するとかからないんですよね?」などいろいろな質問があります。
一般論として、小児のコロナワクチン接種に関しては日本小児科学会、アメリカ小児科学会を含め世界では推奨となっています。
ですが、価値観は人それぞれですので実際に親御さんが検討していただき接種するかどうかをご家庭毎に判断していただければと思います
現時点での新型コロナウイルスワクチンの論文をいくつか紹介しますので判断の材料にしていただければ幸いです。

まず結論です。

ファイザーワクチンは5-11歳の小児でも安全に接種可能。
しかし、オミクロン株に対しての予防効果はデルタ株に比べると下がる。

になります。

5-11歳のファイザーワクチンの認可が日本で承認された際の研究の記事もあわせて確認いただくと今回の情報との差がよりわかると思います。

以前に12-18歳のワクチンの説明をしました。現在11歳で、もうすぐ12歳になる場合は12歳以上で説明したブログを確認ください。

では説明していきましょう。

ワクチン副反応について

副反応については下記論文1)で詳細に説明されています。

2021年11月3日から12月19日までに5-11歳の小児に約870万回のファイザーワクチンがアメリカで接種されました。ワクチン有害事象報告システム(VAERS)に報告された4249件の報告と、自発的な健康状況調査(v-safe)に登録した42504人が報告した内容の検討です。
VAERSは医療スタッフが報告した副反応について、v-safeは患者が報告した内容になります。
VAERSの4249件の報告のうち97.6%(4149件)が軽症の副反応でした。
重症として報告された100件(2.4%) の中で最も多かったのが発熱(29件)、次に嘔吐(21件)でした。
11件が心筋炎と診断されましたが、全例回復しています。
5歳と6歳の2人の女児が死亡したと報告されています。どちらの症例も複雑な病歴を持ち、複数の慢性疾患があったようです。ワクチンと死亡の関連はないと記載されています。

次にv-safeの報告です。
2回接種後、局所反応が57.5%、全身反応が40.9%に認められました。
局所反応の副反応で1番多かったのは注射部位の痛みで1回目接種後52.7%、2回目接種後55.8%です。
全身反応の副反応で1番多かったのは倦怠感で、1回目20.1%、2回目25.9%です。
発熱は1回目7.9%、2回目13.4%でした。
ちなみに、次の日に学校に行けなかった割合は1回目7.9%、2回目10.9%でした。
これは12-15歳のワクチン接種の副反応より低い結果でした。

この論文から、5-11歳でも安全にワクチンを接種することが出来ることがわかります。
では実際にアメリカでどれくらいの割合の小児が実際にワクチン接種をしたのかを確認してみましょう。

ワクチン接種率について

アメリカ小児科学会のホームページが毎週更新している情報です。
2022年3月30日の時点で米国疾病予防管理センター(CDC)が公表しているデータ2)では、アメリカの5-11歳の小児の34%、960万人が1回の接種を完了し、2回接種は27%、770万人が接種を完了したと報告しています。

着実に増加傾向ではあるものの、接種率が鈍化しているのもわかります。
次にワクチンの有効性についての説明です。

ワクチンの有効性について

もともとファイザーワクチンはデルタ株に対してワクチン有効性が高いこと3)が示されていました。前回のブログで説明した記事内容ではワクチン未接種と比較して90.7%の高い予防効果が示されていました。
しかしオミクロン株では有効性が低下していることが報告4)されました。
この論文では感染予防効果は31%であったと記載されています。下の表の右下に書いてます。


Fowlkes AL, et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2022 Mar 18;71(11):422-428.

詳細を説明します。

2021年7月25日から2022年2月12日の期間に新型コロナウイルスのPCR検査を毎週行い感染の有無を評価しました。
この期間にデルタ株からオミクロン株に流行が推移しています。
5-11歳の子供1052人と12-15歳の青年312人を含む1364人が対象となっています。
2回目のファイザーワクチン接種をうけ14日間経過したワクチン接種者と未接種者を比較してワクチン有効性を決定しています。
この上の表にあるとおり、ワクチン未接種者は336人、オミクロン株に感染した人は137人、ワクチン2回接種は640人、オミクロン株に感染した人は184人です。そしてvaccine effectiveness (VE)ワクチン予防効果は31%でした。12-15歳ではオミクロン株のワクチン予防効果は59%でした。

コロナワクチン未接種の無症状者は44%、ワクチン接種者は37.6%が無症状でした。
ワクチン未接種のコロナ感染者は平均6.9日症状があり、平均1.9日ベット上で安静に過ごしました。
ワクチン接種者は平均1.4日ベット上安静であり平均0.6日少なかったと記載されています。

この論文がでる前に既にワクチン効果についての報告5)が1つあります。
この論文では2021年4月から2022年1月の5-11歳のワクチン効果は46%であると報告しています。
この研究は約70%がオミクロン株感染によるデータです。
そのため100%オミクロン株のデータでワクチン効果が31%であることは大きく間違っていないことがわかります。

まとめ

短期間でのファイザーワクチンの副反応は5-11歳でも安全に投与出来る、アメリカでの接種完了は現時点で約3割、ワクチン効果についてはデルタ株と比較すると低下した、がまとめになります。

ワクチン効果については少し補足します。
よく比較されるインフルエンザのワクチン効果はシーズンによって異なりますが25-50%です。なのでオミクロン株に対して31%のワクチン効果でも中等度の予防効果という評価になります。12-15歳では59%でしたのでオミクロン株でもかなり効果があるという評価です。
もともとデルタ株流行期に作られたmRNAワクチンなので、今までの予防効果が高すぎたのかもしれません。逆に言うと、オミクロン株の特性にあわせてワクチンが作られればまた90%近いワクチン効果が得られる可能性が高いことも予想出来ます。
今回紹介した論文以外にも、直近の2022年3月に掲載されたコロナワクチン全体の効果安全性をまとめた論文6)でも安全で効果があるため積極的に推奨すると記載されています。

今回の記事は以上になります。
ワクチンを接種することも正解だと思いますし、もう少しワクチン接種について考えたいから接種しないという選択も決して間違いではないと思います。その時の状況や年齢、環境により選択は変化します。どちらの判断もご家庭で決定されたのであれば間違ってはいないと思います。
発熱外来が落ち着くであろう、5月過ぎから当院でも5-11歳のワクチン接種が開始できればよいなと考えています。
ブログも時間をみつけて少しずつですが更新していく予定です。斜頭症の研究も進んでおり、生後1か月の斜頭症の重症度から生後6か月の斜頭症の重症度を予測するという論文がアクセプトされました。いずれ紹介しますのでお待ちください。

1) Hause AM, Baggs J, Marquez P, Myers TR, Gee J, Su JR, Zhang B, Thompson D, Shimabukuro TT, Shay DK. COVID-19 Vaccine Safety in Children Aged 5-11 Years – United States, November 3-December 19, 2021. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2021 Dec 31;70(5152):1755-1760. doi: 10.15585/mmwr.mm705152a1. PMID: 34968370; PMCID: PMC8736274.
2) https://www.aap.org/en/pages/2019-novel-coronavirus-covid-19-infections/children-and-covid-19-vaccination-trends/
3) Walter EB, Talaat KR, Sabharwal C, Gurtman A, Lockhart S, Paulsen GC, Barnett ED, Muñoz FM, Maldonado Y, Pahud BA, Domachowske JB, Simões EAF, Sarwar UN, Kitchin N, Cunliffe L, Rojo P, Kuchar E, Rämet M, Munjal I, Perez JL, Frenck RW Jr, Lagkadinou E, Swanson KA, Ma H, Xu X, Koury K, Mather S, Belanger TJ, Cooper D, Türeci Ö, Dormitzer PR, Şahin U, Jansen KU, Gruber WC; C4591007 Clinical Trial Group. Evaluation of the BNT162b2 Covid-19 Vaccine in Children 5 to 11 Years of Age. N Engl J Med. 2022 Jan 6;386(1):35-46. doi: 10.1056/NEJMoa2116298. Epub 2021 Nov 9. PMID: 34752019; PMCID: PMC8609605.
4) Fowlkes AL, Yoon SK, Lutrick K, Gwynn L, Burns J, Grant L, Phillips AL, Ellingson K, Ferraris MV, LeClair LB, Mathenge C, Yoo YM, Thiese MS, Gerald LB, Solle NS, Jeddy Z, Odame-Bamfo L, Mak J, Hegmann KT, Gerald JK, Ochoa JS, Berry M, Rose S, Lamberte JM, Madhivanan P, Pubillones FA, Rai RP, Dunnigan K, Jones JT, Krupp K, Edwards LJ, Bedrick EJ, Sokol BE, Lowe A, McLeland-Wieser H, Jovel KS, Fleary DE, Khan SM, Poe B, Hollister J, Lopez J, Rivers P, Beitel S, Tyner HL, Naleway AL, Olsho LEW, Caban-Martinez AJ, Burgess JL, Thompson MG, Gaglani M. Effectiveness of 2-Dose BNT162b2 (Pfizer BioNTech) mRNA Vaccine in Preventing SARS-CoV-2 Infection Among Children Aged 5-11 Years and Adolescents Aged 12-15 Years – PROTECT Cohort, July 2021-February 2022. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2022 Mar 18;71(11):422-428. doi: 10.15585/mmwr.mm7111e1. PMID: 35298453; PMCID: PMC8942308.
5) Klein NP, Stockwell MS, Demarco M, Gaglani M, Kharbanda AB, Irving SA, Rao S, Grannis SJ, Dascomb K, Murthy K, Rowley EA, Dalton AF, DeSilva MB, Dixon BE, Natarajan K, Stenehjem E, Naleway AL, Lewis N, Ong TC, Patel P, Konatham D, Embi PJ, Reese SE, Han J, Grisel N, Goddard K, Barron MA, Dickerson M, Liao IC, Fadel WF, Yang DH, Arndorfer J, Fireman B, Griggs EP, Valvi NR, Hallowell C, Zerbo O, Reynolds S, Ferdinands J, Wondimu MH, Williams J, Bozio CH, Link-Gelles R, Azziz-Baumgartner E, Schrag SJ, Thompson MG, Verani JR. Effectiveness of COVID-19 Pfizer-BioNTech BNT162b2 mRNA Vaccination in Preventing COVID-19-Associated Emergency Department and Urgent Care Encounters and Hospitalizations Among Nonimmunocompromised Children and Adolescents Aged 5-17 Years – VISION Network, 10 States, April 2021-January 2022. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2022 Mar 4;71(9):352-358. doi: 10.15585/mmwr.mm7109e3. PMID: 35239634; PMCID: PMC8893336.
6) Gao P, Cai S, Liu Q, Du M, Liu J, Liu M. Effectiveness and Safety of SARS-CoV-2 Vaccines among Children and Adolescents: A Systematic Review and Meta-Analysis. Vaccines (Basel). 2022 Mar 10;10(3):421. doi: 10.3390/vaccines10030421. PMID: 35335053; PMCID: PMC8953823.

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