以前に青年期(12-17歳)における新型コロナウイルスワクチンの説明をしました。
今回は5-11歳の情報です。
いよいよ小児科がメインでワクチン接種をする年齢となりました。
前にもお話ししましたが、5歳未満もアメリカで治験は進んでいます。
近い将来、5歳未満での接種も開始となるでしょう。
ニューヨークでは2021年12月14日からレストラン利用等での接種証明の義務化も決定しました。
小児のコロナワクチン接種については賛否あると思いますが、親御さんは必ずコロナワクチンの接種の可否、メリット・デメリットを考える必要があります。(コロナワクチンの基本情報は前回のブログで確認ください)
日本でも、2022年2月以降で5-11歳のワクチン接種が開始になる予定で準備が進んでいます。
現時点での内容を確認いただき各家族でどうするのか、相談していただくきっかけにしていただければと思っています。今回の内容のまとめは
・ワクチン間隔は12歳以上と同じ(1回目から3週間後に2回目)。
・ワクチン量は1/3量(10μg、12歳以上は全員30μg)で、予防効果は12歳以上と同等の効果。
・重篤な副反応である心筋炎は5-11歳の方が12-17歳と比べて少ないため、より安全に接種出来る。
になります。1つずつ説明していきましょう。
この記事の目次
はじめに
アメリカのFDA(Food and Drug Administration 食品医薬品局)が2021年10月29日にPfizer-BioNTech COVID-19ワクチン(以後ファイザーワクチン)の緊急使用許可( Emergency Use Authorization EUA)を発行し、2021年11月2日に予防接種諮問委員会(Advisory Committee on Immunization Practices ACIP)の推奨勧告1)が発表されました。これをうけて日本もファイザー社が11月10日に厚労省に承認申請をしています。
2021年12月18日現在、申請は承認されていませんがおそらく2022年のどこかで承認されると思います。そこでファイザー社がFDAに申請した際のもとになる論文2)を確認していきましょう。
第1相試験の内容
2021年3月24日から4月14日まで、5歳から11歳までの48人がファイザーワクチンを接種しました。
10μg、20μg、30μgの各用量毎に4人ずつ接種をおこない、有害事象を確認後追加で12人ずつ接種が行われました。
30μgの用量を接種した4人全員が2回目の接種で発熱したこと、10μg、20μgの2回目の接種7日後の採血で抗体が確認できたことからこの年齢においての投与量が10μgに決定しました。(30μgを接種した追加の12人は2回目は10μgで接種しました)
第2、3相試験の内容
2021年6月7日から6月19日まで、5-11歳の2268人の参加者が登録され、1517人がワクチン、751人が生理食塩水(プラセボ)にランダムに振り分けられました。
2回目のワクチン接種1か月後に採血をおこない抗体がどの程度産生されているかを評価しました。
副反応に関しては、1回目、2回目接種後7日間の記録を保護者が報告しました。また、2回目の接種から1か月までの有害事象は報告されました。52%が男性、79%が白人、6%が黒人、6%がアジア人、21%がヒスパニックまたはラテン系、平均年齢は8.2歳でした。
結果です。1か月後の採血で99.2%が抗体産生が確認され、16-25歳と比較してほぼ同程度の免疫がつきました。
その後のフォロー(2021年10月8日まで)で、ワクチンを打った児は3人、プラセボは16人コロナウイルスに感染しました。全症例で重症化はありません。10μgのワクチンを2回接種した5-11歳の小児においてのワクチン有効性は90.9%となります。(ちなみに16歳以上におけるワクチン有効性は95%であり、どちらも有効性が非常に高い)
ワクチンの副反応について
ワクチン接種者はプラセボに比較して副反応が多く報告されました。下記の図を確認ください。Aが局所反応、Bが全身反応の副反応です。数字は%表記です。色で副反応の重症度が表示されています。
ほとんどの副反応は軽症か中等症であり、症状の持続は1-2日でした。
注射部位の痛みが最も一般的な局所反応であり、ワクチン接種の74%で発生しました。倦怠感と頭痛が全身反応の副反応で多かった症状です。少し見えにくいのですが、色がオレンジになっている重度の倦怠感(0.9%)、頭痛(0.3%)、悪寒(0.1%)、および筋肉痛(0.1%)も報告されています。発熱は、1回目、2回目のワクチン投与後の8.3%で発生しています。
今回のワクチン接種で心筋炎、心膜炎、アナフィラキシーは報告されず、死亡もありませんでした。
まとめ
論文から5-11歳のワクチンの安全性と有効性が述べられています。これをうけて、アメリカ、カナダでは5歳以上の全ての人にワクチンを接種し、新型コロナウイルスからの予防を推奨しています。
前回のブログで紹介したような大規模なデータでの副反応についての報告や長期間のフォローでの副反応の報告はありません。この情報をもとに各家庭で相談していただければと思います。
私が思ったことを少し書きます。
まず、プラセボでも結構な割合で副反応が報告されていることです。やはりメンタルの影響は大きいなというのを改めて感じました。
現在インフルエンザワクチンを接種しています。暴れてしまい、押さえながら接種する子もいます。
インフルエンザワクチンでは、このような光景は年末あるあるですが、コロナワクチン接種に関してはどうでしょうか。賛否がわかれそうですよね。
私が1番大事にしてほしいのはやはりお子さん自身の考えです。たとえ5歳だとしても自分の考えや意見をある程度言えると思います。
お子さんにとって注射は怖いと思いますが、家庭内できちんと話をして納得して接種の可否を決定してほしいと思っています。
本人が納得した上で、クリニックで大暴れは仕方ないでしょう笑
最後に、第1相試験の結果で治験に参加したお子さんのおかげでワクチン量が決定しています。
たった数行の結果ですが、本当にすごいことです。
そして本日ブログをあげる際にたまたま見つけたニュースを1つ紹介します。
2-5歳でのファイザーワクチンの治験が遅れているというニュースでした。やはり治験の人数が足りないことに加え、思っているよりも免疫がつかないようです。引き続きアメリカでの治験の結果を待ちたいと思います。
こうした誰かの行動で我々の命や幸せが守られていると思うと、治験に参加したご家族には頭があがりません。本当に感謝です。
そして毎日当たり前の生活を支えてくれている妻や子供達、クリニックのスタッフ、受診していただいているすべての方に感謝の気持ちを忘れてはいけないなと改めて感じています。
2022年も明るく健康に暮らしたいですね。
1) Woodworth KR, Moulia D, Collins JP, Hadler SC, Jones JM, Reddy SC, Chamberland M, Campos-Outcalt D, Morgan RL, Brooks O, Talbot HK, Lee GM, Bell BP, Daley MF, Mbaeyi S, Dooling K, Oliver SE. The Advisory Committee on Immunization Practices’ Interim Recommendation for Use of Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccine in Children Aged 5-11 Years – United States, November 2021. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2021 Nov 12;70(45):1579-1583. doi: 10.15585/mmwr.mm7045e1. PMID: 34758012; PMCID: PMC8580204.
2) Walter EB, Talaat KR, Sabharwal C, Gurtman A, Lockhart S, Paulsen GC, Barnett ED, Muñoz FM, Maldonado Y, Pahud BA, Domachowske JB, Simões EAF, Sarwar UN, Kitchin N, Cunliffe L, Rojo P, Kuchar E, Rämet M, Munjal I, Perez JL, Frenck RW Jr, Lagkadinou E, Swanson KA, Ma H, Xu X, Koury K, Mather S, Belanger TJ, Cooper D, Türeci Ö, Dormitzer PR, Şahin U, Jansen KU, Gruber WC; C4591007 Clinical Trial Group. Evaluation of the BNT162b2 Covid-19 Vaccine in Children 5 to 11 Years of Age. N Engl J Med. 2021 Nov 9:NEJMoa2116298. doi: 10.1056/NEJMoa2116298. Epub ahead of print. PMID: 34752019; PMCID: PMC8609605.
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