日本でも生後6か月以上のお子さんの新型コロナウイルスワクチンが開始となりました。
親御さんから、我が子にコロナワクチンを接種したほうがよいか多数質問をいただいています。
以前までの記事同様、2022年6月からアメリカが先行してワクチン接種を開始(ファイザーとモデルナ)しているため、効果、副反応のデータが報告されています。
その内容を紹介していきたいと思います。
繰り返しになりますが、この記事をみていただき接種するかをご両親で相談していただき、納得した上で決断していただきたく思っています。
今回の記事で伝えたいことは、
生後6か月以上においても、3回のワクチン接種で予防効果は十分獲得でき、安全性も高い。
になります。日本においては、生後6か月以上に接種するワクチンはファイザーワクチンのみで3μgの投与量です。オミクロン株対応ではありませんのでご注意ください。
この記事の目次
アメリカは2022年6月から生後6か月のワクチン接種が推奨になっている
アメリカのFDA(食品医薬品局)がファイザー、モデルナの新型コロナウイルスワクチンの緊急使用許可を2022年6月17日決定しました。そして6月18日にACIP(予防接種諮問委員会)とCDC(疾病対策予防センター)が生後6か月からのワクチン接種を推奨しました。
アメリカで承認された治験内容の説明が第38回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会資料で使用されています。日本語の資料で確認していきましょう。
ワクチンの有効性について
まず上のグラフの説明です。横軸が2回接種と3回接種であり、縦軸が有効性になります。青いグラフがデルタ株、ピンクがオミクロン株に対してのワクチン有効性です。2回のワクチン接種でデルタ株は有効性を示しているのに対し、オミクロン株では有効性が示されませんでした。そのため、3回目の接種まで検証したところ、オミクロン株でも有効性が示されました。
このことから、生後6か月以上の児は3回のワクチン接種がセットとなりました。
ワクチン接種のスケジュールは1回目から3週間後に2回目、2回目から8週間後に3回目となります。
副反応について
この上の表が副反応でみられた症状になります。ほぼプラセボ群(ワクチンでない食塩水を投与)と変わりません。(プラセボでも熱でてます。)
1歳以下の副反応の1番高頻度であったものは、易刺激性(ちょっとした刺激で泣いてしまったり、機嫌が悪くなったりする)でした。
2歳以上は注射部位の疼痛が高頻度でした。
そして今回の治験参加者で死亡例はありませんでした。
以上の結果から、厚生労働省は2022年10月5日に生後6か月以上のファイザーワクチンが特例承認となりました。
アメリカでのワクチン接種後の副反応の実際
さてここからが本題です。治験の結果ワクチン接種が開始され、実際どうだったのかが報告1)されています。毎度のことですが、日本はアメリカのその後が見れますのでありがたいですね。
以前にも記載しましたが、ワクチン有害事象報告システムのVAERSとV-safeを利用した副反応の振り返りになります。VAERSやV-safeについての詳細は以前の記事をご覧ください。
簡単に説明するとVAERSは医療者がワクチンの副反応を報告し、V-safeは保護者がワクチンの副反応を報告するシステムでした。
生後6か月から4歳バージョンの副反応の結果をみていきましょう。
2022年6月18日から8月21日に接種されたファイザーワクチンとモデルナワクチンのVAERSの報告の内訳が記載されています。ファイザーワクチンの接種890378回に対し深刻でない副反応の報告が486件、うち深刻であった報告が10件でした。心筋炎の報告はありませんでした。
合計496件の内訳です。まず左の表から説明します。
1番多い報告は誤った投与量での接種で全体の18%です。その他3番目が間違った年齢での投与で11%、準備段階での問題で10%、間違ったワクチン接種7%と大部分がヒューマンエラーによるものでした。合計で46%です。(ヒューマンエラーが青文字になっています)
それだけコロナワクチン接種はミスがおきやすいことがわかります。それ以外では、2位の発熱で17%がみられています。
右の表は症状のみが記載されています。1位が発熱17%、2位が発疹で11%、3位が嘔吐で8%となっています。
次にV-safeになります。ファイザーワクチン890378回の接種に対し8541人の小児が登録されました。まず生後6か月から2歳未満の健康上の影響です。
注射部位の反応、全身反応、健康への影響の3つの横軸で構成されています。V-safeの症状の詳細な記載はありませんでしたが、やはり注射部位の発赤等の局所症状が20%弱みられ、発熱や倦怠感等の全身症状は50%前後でみられ、それに伴う食欲減退や疲労が10%前後でみられたことが予想されます。同様に3-5歳の結果が下記になります。
2022年8月までにおいては臨床試験で行われたデータと概ね一致しており、心筋炎のリスクも増加していないと結論しています。
次は直近2022年10月18日に投稿されたドイツの論文を紹介します。
ドイツの副反応についての論文2)
2022年4月14日から5月9日までの調査期間中にファイザーワクチンを接種した児の保護者の自己申告によって集計された調査です。副反応の症状がまとめてあります。
7806人の小児が登録されました。年齢の中央値は3歳、3824人の女児と3977人の男児です。
生後12か月未満が338人でA群、生後12か月から24か月は1272人でB群、生後24か月から60か月が5629人でC群に分類しています。
7102人が2回目、846人が3回目の接種をしています。
7806人の登録者の内、684人が基礎疾患を持っており、気道系190人、心血管系90人、染色体異常166人でした。副反応1回目の結果が下記の表になります。
この研究がスタートした段階では、投与量が確定しておらず、3、5、10μgの3つの投与量で比較がされています。
日本では全例3μgになります。その点にご注意ください。
全体での死亡例はなく、心筋炎の報告もありませんでした。
ワクチン接種後の入院が10人、症状が3か月以上継続した症例は2人でしたが、5μg、10μgの接種量の児であり、3μgの接種量の児は入院、症状の継続はみられませんでした。
この表をみてわかる通り、容量が多いと症状の出現率が高いことがわかります。
筆者はこの結果から3μg投与におけるファイザーワクチンの安全性は高いと述べています。
現時点で新型コロナウイルスについてわかっていること
ファイザーワクチンは、小児で予防効果が高く、安全性が高いことが証明されています。
では、あえて否定的な面もあげて両面からワクチンについて少し検討してみましょう。
新型コロナウイルスに対する抗体が誘導されたことで発熱、咳嗽、咽頭痛などの症状が緩和されるというデータは現時点ではありません3)。
新型コロナウイルスは実際死亡例が出ているため決して軽い病気であると定義をしては絶対にいけませんが、大多数の小児は入院を必要とするような重篤な病態にはならないこともわかっており4)、年々死亡率も低下しています5)。
(ただし、日本のような先進国は小児の死亡例は少ないですが、ブラジルなどの途上国では多くの小児の死亡例6)が報告されています。)
成人で頻度の多い嗅覚味覚障害、疲労感の持続といった後遺症に対し、ワクチン接種をすることで頻度を低下させることが既に報告7)されていますが、小児ではこのような後遺症の頻度自体がもともと低いことがわかっています8)。
日本では2022年夏に第7波がきました、多くの親御さんが、お子さんが原因で感染したと思います。小児は無症候性感染の有病率が高いため、家庭内感染を起こす原因になります。そのため、小児のワクチン接種で妊婦や高齢者など重症化リスクのある方の感染リスクを抑えることは出来ます9)。
こんなところでしょうか。ポジティブな意見もネガティブな意見もあります。そのため、絶対に接種する必要があるでしょうかという質問に対しては、お子さんの基礎疾患の有無やご家庭の環境によって変わると思います。
今回の記事をもとにご両親で相談されて決定した決断が正解だと思います。
まとめ
今回のワクチンに関しての概要を記載しました。最後に各機関のサイトを添付します。
まず、CDCの発表
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/71/wr/mm7126e2.htm
厚生労働省のサイトもあわせて確認いただけると幸いです。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_for_inf-chd.html
治験の詳細な内容を知りたいかたは下記サイトを確認ください。原文が確認出来ます。
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04816643
以上になります。
第8波来ないといいですね。
ですが、もし第8波が来たとしても元気よく発熱外来は継続しますので、氷川台にお住まいのお子さんが受診出来ないということはありません。ご安心くださいね。
1) chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.cdc.gov/vaccines/acip/meetings/downloads/slides-2022-09-01/05-COVID-Shimabukuro-508.pdf
2) Toepfner N, von Meißner WCG, Strumann C, Drinka D, Stuppe D, Jorczyk M, Moor J, Püschel J, Liss M, von Poblotzki E, Berner R, Moor MB, Chao CM. Comparative Safety of the BNT162b2 Messenger RNA COVID-19 Vaccine vs Other Approved Vaccines in Children Younger Than 5 Years. JAMA Netw Open. 2022 Oct 3;5(10):e2237140. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2022.37140. PMID: 36255723.
3) Saxena S, Skirrow H, Wighton K. Vaccinating children aged under 5 years against covid-19. BMJ. 2022 Jul 28;378:o1863. doi: 10.1136/bmj.o1863. PMID: 35902095.
4) Whittaker E, Bamford A, Kenny J, Kaforou M, Jones CE, Shah P, Ramnarayan P, Fraisse A, Miller O, Davies P, Kucera F, Brierley J, McDougall M, Carter M, Tremoulet A, Shimizu C, Herberg J, Burns JC, Lyall H, Levin M; PIMS-TS Study Group and EUCLIDS and PERFORM Consortia. Clinical Characteristics of 58 Children With a Pediatric Inflammatory Multisystem Syndrome Temporally Associated With SARS-CoV-2. JAMA. 2020 Jul 21;324(3):259-269. doi: 10.1001/jama.2020.10369. PMID: 32511692; PMCID: PMC7281356.
5) Cohen JM, Carter MJ, Ronny Cheung C, Ladhani S; Evelina PIMS-TS Study Group. Lower Risk of Multisystem Inflammatory Syndrome in Children (MIS-C) with the Delta and Omicron variants of SARS-CoV-2. Clin Infect Dis. 2022 Jul 5:ciac553. doi: 10.1093/cid/ciac553. Epub ahead of print. PMID: 35788276; PMCID: PMC9278259.
6) https://agencia.fiocruz.br/covid-19-mata-dois-menores-de-5-anos-por-dia-no-brasil
7) Behnood SA, Shafran R, Bennett SD, Zhang AXD, O’Mahoney LL, Stephenson TJ, Ladhani SN, De Stavola BL, Viner RM, Swann OV. Persistent symptoms following SARS-CoV-2 infection amongst children and young people: A meta-analysis of controlled and uncontrolled studies. J Infect. 2022 Feb;84(2):158-170. doi: 10.1016/j.jinf.2021.11.011. Epub 2021 Nov 20. PMID: 34813820; PMCID: PMC8604800.
8) Ouldali N, Bagheri H, Salvo F, Antona D, Pariente A, Leblanc C, Tebacher M, Micallef J, Levy C, Cohen R, Javouhey E, Bader-Meunier B, Ovaert C, Renolleau S, Hentgen V, Kone-Paut I, Deschamps N, De Pontual L, Iriart X, Guen CG, Angoulvant F, Belot A; “French Covid-19 Paediatric Inflammation Consortium”£ and the “French Pharmacovigilance network”*. Hyper inflammatory syndrome following COVID-19 mRNA vaccine in children: A national post-authorization pharmacovigilance study. Lancet Reg Health Eur. 2022 Jun;17:100393. doi: 10.1016/j.lanepe.2022.100393. Epub 2022 Apr 29. Erratum in: Lancet Reg Health Eur. 2022 Oct;21:100468. PMID: 35505833; PMCID: PMC9051933.
9) Chen F, Tian Y, Zhang L, Shi Y. The role of children in household transmission of COVID-19: a systematic review and meta-analysis. Int J Infect Dis. 2022 Sep;122:266-275. doi: 10.1016/j.ijid.2022.05.016. Epub 2022 May 11. PMID: 35562045; PMCID: PMC9091150.
1年経って、情報のアップデートはありますか?
日本小児学会でも、生後6ヶ月から17歳のすべての小児に接種を推奨する、とありますが、この根拠となるようなデータを元に、記事を作成して欲しいです。
1児の父様
コメントありがとうございます。
コロナワクチンについての記事依頼ですね。
論文がありますので記事作成しますね。
ただ、ワクチン全般に言えることですが、絶対に打たないといけない、絶対に打たないほうがいいではありません。
ご家族によっていろいろな考えがあると思います。
その選択の助けになるような記事になればと思います。お待ちください。
能登