明けましておめでとうございます。今年も自分の出来る精一杯の診療でお子さんの健康を守りたいと思っています。
緊急事態宣言が出るかもしれない中、年明け初日の診療でかなりの親御さんから小児のコロナウイルスについて質問がありました。改めて特徴をまとめておきます。
ただし現時点での見解であることに注意ください!!
ウイルス株が変異し今後違う状況になる可能性があります。そうなった場合はまた報告します。
この記事の目次
小児のCOVID-19の割合について
小児の感染者数が少ないことが有名ですが、ここ最近患者数の増加に伴い全体数が増加傾向にあります。
アメリカでは、10月10日の時点で18歳未満は全体の8.8% と報告され1)、日本国内でも12月29日の時点で10歳未満の患者総数は5,250人 (2.3%)、10~19 歳では13,415人 (6.0%) と厚生労働省が報告しています2)。
感染経路について
小児例のほとんどは家族内感染であることがわかってきています。
5月28日までに発表された1,099本の論文のレビューにおいて、小児のCOVID-19の75~100%は家族内感染でした3)。小児科学会が発表した国内の報告でも同様でも、77%の小児症例は家族からの感染となっています4)。
学校や保育所におけるクラスターについて
小児では全体でみると学校や保育所のクラスターが少ないことがわかっています。
アメリカのロードアイランド州で、ソーシャルディスタンスとマスクを職員が着用を徹底した保育所666施設において、COVID-19の発生が起こったのは29施設、二次感染まで起こったのは4施設(全施設の0.6%)のみであったと報告があります 5)。
ヨーロッパでは、9歳の患者が3つの学校やスキー学校で有症状のまま112名に接触したにもかかわらず、誰にも感染させていないという報告もあります 6)。
日本においては、クラスターの発生件数は、7月から10月21日までの期間で1,352箇所で報告7)がありますが、 学校現場でのクラスターは9月3日時点までで小学校で3件、中学校で5件、高等学校で10件、特別支援学校で0件と圧倒的に少ないことがわかります8)。
小児は成人よりも感染しにくい可能性があるという事はいろいろな報告が出されていますが、小児からの成人への感染力が強いかどうかはまだ結論がでていません。
COVID-19に感染した妊婦とその新生児について
6月26日までに発表された77の論文についてのレビューで、COVID-19に感染した妊婦は感染していない妊婦と比べて集中管理が必要となる可能性が高いこと、また早産率が高いことが報告されています。重症化に関わる因子は、高齢、肥満、基礎疾患(妊娠以前からの高血圧や糖尿病)となっています9)。
COVID-19に感染した妊婦から出生した児への感染に関する385文献のうち17文献を分析した報告では、402人の母体から生まれた405人の児のうちの330人に対して早期にPCR検査が行われ、9人が陽性でした。そのうち1人は出生時から症状を有していたため、子宮内感染が考えられましたが、母から子に感染する垂直感染は稀であることがわかってきました10)。
COVID-19罹患妊婦から出生した児101人の児を全員母子同室で直接母乳哺育を行ったが、発症した児はいなかった という報告11)がありますが、母乳で感染するかどうかはまだ結論が出ていません。
次は臨床症状や重症度、治療と続きます。
写真はおなじみの富士山ですが、今年は写真のように雪が積もっていませんね。
この年は暖冬で山中湖に雪が全く降らず、雪まつりに雪がない状態でこの富士山の雪の量です。
綺麗な富士山を早く見に行きたいものです。
1 CDC COVID-19 Data Tracker. https://covid.cdc.gov/covid-data-tracker/#demographics
2 厚生労働省:新型コロナウイルス感染症の国内発生動向(令和2年12月29日18時時点) https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000713230.pdf (2021年1月6日アクセス)
3 Rajmil L: Role of children in the transmission of the COVID-19 pandemic: a rapid scoping review. BMJ Paediatr Open. 2020; 4: e000722. DOI:10.1136/bmjpo-2020-000722.
4 日本小児科学会:COVID-19日本国内における小児症例. https://www.coreregistry.jp/CoreRegistry_COVID19_CRF_Dashboard/Home/DashBoardviewer (2021年1月6日アクセス)
5 Link-Gelles R, DellaGrotta AL, Molina C, et al: Limited secondary transmission of SARS-CoV-2 in child care programs – Rhode Island, June 1 – July 31, 2020. MMWR 2020; 69: 1170-2.
6 Danis K, Epaulard O, Benet T, et al: Cluster of coronavirus disease 2019 (Covid-19) in the French Alps, February 2020. Clin Infect Dis. 2020; 71: 825
7 第12回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード参考資料. https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000688926.pdf (2020年12月16日アクセス)
8 文部科学省:学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル〜「学校の新しい生活様式」〜(2020.9.3 Ver. 4) https://www.mext.go.jp/content/20200903-mxt_kouhou01-000004520_1.pdf (2020年12月16日アクセス)
9 Allotey J, Stallings E, Bonet M, et al: Clinical manifestations, risk factors, and maternal and perinatal outcomes of coronavirus disease 2019 in pregnancy: living systematic review and meta-analysis. BMJ 2020; 370: m3320.
10 Goh XL, Low YF, Ng CH, et al: Incidence of SARS-CoV-2 vertical transmission: a meta-analysis. Arch Dis Child Fetal Neonatal Ed. DOI:10.1136/fetalneonatal-2020-319791
11 Dumitriu D, Emeruwa UN, Hanft E, et al: Outcomes of neonates born to mothers with severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 infection at a large medical center in New York City. JAMA Pediatr. 2020.
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